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【シリーズ企画】「右」から見える世界、「左」から見える世界(2)憲法と日本の"伝統・文化"
シリーズ企画第2弾で、今回のお題は「憲法と伝統・文化」です。
現在の憲法に批判的な立場(これをここでは「右」としておきます。実際はそう単純には割り切れないのですが)から、「現行憲法は、日本の伝統や文化がまったく反映されていない」「アメリカから輸入したものだ」「日本の国柄を反映させろ」などという批判がされることがあります。
これについて「右」と「左」でどう見方が違うか、イラストで示してみましょう。
1 「右」から見える世界
まあ、こんな感じで日本国憲法に対して攻勢がかけられているというイメージでしょうか。
評価はどうあれ、日本国憲法が敗戦後に連合国による占領下で、GHQの作成した草案を叩き台にして制定されたこと自体は事実です。
そして内容面では、アメリカ憲法の影響をかなり受けていることも知られているところでしょう。
( ただし占領下の憲法の制定については、本noteの次の記事もご参照ください。
このことから、ある種の「右派」の立場から「日本国憲法には、日本の伝統や文化が反映されていない」という批判の声があるのは事実ですが、これは、そもそも「憲法は、国の伝統や文化を反映しなければならない」という考え方が前提になっていますので、この前提で違う立場に立つならば、当然、結論も違ってくることになります。
一方、この「右派」とは逆の立場に立った場合には、どう見えてくるのでしょうか。
2 「左」から見える世界
あまり説明する必要もないでしょうが、逆の立場から見てみると、こんな感じでしょう。憲法は、伝統や文化を守るものではなく、個人を守るものという考え方が根本の前提として存在しています。
こちらの立場から言えば、日本国憲法に「日本の伝統・文化」が反映されていないとしても、だからといって別に何も困るいわれはないどころか、むしろ望ましいとさえ言えるわけです。
憲法は伝統や文化を反映するのではなく、逆に、「伝統」とか「文化」と称するものによって個人の尊厳や基本的人権が侵害されるのを防ぐことこそが、重要な役割だと考えられるからです。
一方、「伝統」や「文化」が個人の尊厳や基本的人権を侵害しないのであれば、憲法が関知しないところで、個々人が自由に文化的な活動をやってくれれば良いということになります。(もちろん国や公的機関が文化に助成をしたりするのは別に問題ありません。個人に不利益を及ぼすわけではないからです。)
・・以上、この「右」「左」の対比をイラストで示したのは、どちらが良いかという話以前の段階で、「どこが噛み合っていないのか」をまず直観的にわかってもらうことが目的なのですが、イメージとしては把握していただけたのではないかと思います。
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