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「晩酌の流儀」、ナレーションに言葉のセンスが光る。

テレビ東京で放送されていたテレビドラマ「晩酌の流儀」。栗山千明さん演じる伊澤美幸が、「晩酌を最高に美味しくする方法」をひたすら追求するドラマである。

テレビ東京はこれまでも「孤独のグルメ」「昼のセント酒」「サ道」など、物語性を無視したワンテーマ・ドラマを作り続けてきた。「晩酌の流儀」のテーマは、タイトルの通り「晩酌」である。

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ドラマ冒頭に流れる栗山千明さんのナレーション。言葉のセンスを感じたので、noteで紹介したい。

1日の最後に飲むお酒を、どうしたら最高に美味しく飲めるのか。このドラマは、それをひたすら追求するひとりの女性の物語。ドラマを見終わった後、あなたもきっと、お酒を飲み始める。

テレビドラマ「晩酌の流儀」より

さて、どうだろう。

多くの方は、きっとスッと流してしまうだろう。だが僕は、ここに脚本家や演出陣のこだわりを感じた。

ポイントは最後の文章。「ドラマを見終わった後、あなたもきっと、お酒を飲み始める」の部分だ。

「きっと」という言葉がある。「きっと」を用いる文章は、「きっと〜だろう」という形で構成されるのがほとんどだ。「きっと晴れる」というように断定に近い表現もあるが、これは願望を示す表現なので、正確な意味での断定ではない。

あなたもきっと、お酒を飲み始める。

おそらく、「あなたもきっと、お酒を飲み始めるだろう」でも良かったはずだ。だけどそこに若干の違和感を抱き、「〜だろう」をカットしたのだ。

あなたもきっと、お酒を飲み始める。

推定でなく、断定にする。予言のように、視聴者の脳裏にインパクトを残すことができる。(ドラマでも実際、栗山千明さんが美味しそうに晩酌を楽しんでいる)

教科書通りの表現ではない。だけど、たった3文字を削ることで、言葉の印象は全く変わってくるという好例だろう。

あなたもきっと、お酒を飲み始める。

作品の成否とはきっと、言葉の細部にも宿る。

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ちなみに番組のウェブサイトの「イントロ」では、「ドラマを見終わった後、あなたもきっとお酒が飲みたくなるはず…!」という表現になっています。まだ鑑賞していない視聴者向けに、文字だけでドラマのことを紹介しなければならないため、文末を分かりやすいものに変えているのだと思います。

こういった違いも含め、なかなか言葉とは興味深いものですね。

#テレビ東京
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#栗山千明
#松本拓 (原案・企画・プロデューサー)

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