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長野県辰野町で出会った、誰かのふるさと。

コロナ禍で、自由に旅ができなくなった。

そのことで失ってしまう機会のことを、僕は随分と過小評価していたかもしれない。長野県辰野町で開催されている企画展「その一泊から、見えるもの。誰かのふるさと展」で感じたことだ。

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旅の目的は、人それぞれだ。

言わずもがなだけど、改めて「なんで人は旅をするんだっけ?」という問いを考えると色々なことが見えてくる。

ハワイでリラックスするも良し、パリで美術館巡りをするも良し、北海道でグルメ三昧するのも最高だ。でもこれらは全て、自分の町でできることだ。もちろんパリにしかない絵画はある。だけどアートの本質は、作品だけにあるわけじゃなく、自分の街で「アートを体験する」だけなら十分可能だと僕は思っている。

では、旅をしないと気付けないことはなんだろうか。「気付けない」ことって、実はひとつもない。旅をすることで自分が住んでいる町の素晴らしさを再確認できるが、旅をしなくたって素晴らしさを見出すことはできる。

でも、旅をしないと「気付きづらい」のは確かだと思う。

旅先で触れた「もの・こと」の味わい、人々の雰囲気、流れている時間の感覚──。日常生活を送っている中で、時間感覚の機微は感じづらい。それは日常と非日常の差分を経ることによって、「気付く」ことができるのではないだろうか。

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企画展では、7つのゲストハウスが紹介されている。

ひょんなことからひとりで立ち上げた宿もあれば、夫婦の積年の夢を叶える形で始まった宿もある。

運営のあり方はそれぞれだけど、宿を訪ねる人々との関係性はどれも温かい。ホストとお客さんによる物語が、毎日、新しくひとつひとつ生まれている。そうした一期一会の存在を、確かな実感として見出すことができるのだ。

都内のギャラリーでなく、長野県辰野町という、人口18,000人の小さな町で開催されていたことに意味・意義がある。

お客さんは旅をする。ホストは宿を運営する。

泊まることによって、誰かのふるさとが身近になる。そんな旅と宿の交差は、日常と非日常の交換でもある。お客さんは受け取るだけでなく、受け渡す何かもあるはずで。それは、旅をすること / 宿を運営することでしか味わえない価値だ。

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企画展は、◯と編集社とairbnb japanによる共催。辰野美術館で、11/27(日)まで開催されている。足を運ぶ機会がない方もいるだろうが、オンライン美術館ツアープランなども組まれている。(辰野町の空気に触れていただくのが一番だと思いつつ)

ぜひ以下のMotion Galleryのクラウドファンディングページをご覧いただき、企画の意図などを感じてもらえたらと思う。

あなたにとって大切な旅とは、誰かのふるさとにアクセスすることなのかもしれない。

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