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コミュ障ひきこもり男が実在の「女性」と接するようになるまで

今回は結構な長編になってしまったので、章ごとに分けました。各章はある程度の独立性を持っているので、気になるテーマの部分だけを短く読んでいただいて構いません。「いかな駄文も受けて立とう」という奇特な方のみ、通しでお付き合いください(笑)


恐るべき花々

学生時代、異性といえば"恐怖の対象"でした。

話し掛けられれば同性相手でさえ心臓をバクバクさせて「どう切り抜けるか?」と頭から煙を上げていたような私にとって、異性とは尚更手強い相手だった……と素直に白状すれば、大方察していただけるでしょうか。

しかも、「異性相手のコミュニケーションで失敗する」ことは、「同性相手のコミュニケーションで失敗する」以上の痛手を負うということも、経験上わかっておりました。

私の世界観では、女子生徒とは学級というコミュニティの「中枢」であり、企業でいえば「社長」に位置する存在であり、つまり女子生徒に話し掛けられるという事態は、ちょっと先に入った先輩社員の一挙一動もにビクビクしている新人が、不意に廊下で社長とすれ違い、雑談でも振られるといったような大事件だったわけです。そして勿論、上手くいった試しはありませんでした。

そんなわけで、学生時代は「絡まれませんように」とただ一心に祈りながら、私はなるべく己の存在感を消すことに徹しておりました。それが功を成したのか、「アイツ全然喋らないな、ちょっと声かけてみるか」といった好奇の対象から、「なんだあの陰キャ、つまんね」「放っておこうぜ」みたいな失望の対象に移り変わっていくわけですが、当時はそんな変化に深く安堵のため息を漏らしていたものです。ですが、こうして字面で告白してみると何だか物凄く切ない気分になってくるので妙ですね……。

高校時代、男子生徒らが「〇〇さんが可愛い」とか「△△さんと付き合いたい」といった風な女子生徒の噂話で盛り上がっているのをよく遠耳にしていましたが、女子生徒に話し掛けられるだけでも怖かった私にとって、一体どれだけ修行を積めば「〇〇さんが可愛い」なんて豪快に言い放ったり、付き合いたいと思えるのかがわかりませんでした。ただ私一人が知らないだけで、これくらいの年代の人間は皆、精神鍛錬のセミナーみたいなものに通っており、私だけが不利な状況で戦い続けているのではないか?という疑念を本気で抱いていました。

トランプの大富豪で何十回とやっても最下位になり続けて、流石におかしいと思って主催者に改めてルールを確認してみると、「これは初めに、各人が最強カードである"ジョーカー"を一枚だけ所有した状態で始まる、特別な大富豪、名付けて「ディープステート富豪」だ。おや、君だけジョーカーを配られていなかったのかい? なんと……こちら側のミスだった。そんな状態では全く歯が立たなかっただろう。いや、本当にすまなかったね、君……。今後は皆と同じ条件で楽しんでくれ給え」と、私にもジョーカーを渡して貰える日がいつか来るんじゃないかと、そんな前提部分からの大修正が起きるのではないかと、密かに切望さえしていたものです。

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