マザコンの現実逃避「あなたに叱られるわたし」

怒るかあさん

それを見てうなだれるわたし

何が一番かなしいのか

それはあなたの笑顔を壊した

悪魔の存在をみたこと

あなたの眉は、まるで兵士のように険しく、

男体山のように急斜面で、

そしてあなたの口は不自然に曲がっている

あなたの目はまるであすこのお山のように

三角だ

ただ黒い洞穴しか見えない


ああ、どうか

このわたくしのゆるぎないかあさんへの

愛の大きさにより、わたしの罪をゆるせ

かあさんの、怒りに満ちた黒い感情を

解きほぐし、

この深く、真っ白いかあさんへの愛の存在に

気付かせよ


かあさま怒らないで。どうか、

あの湖に咲く花々が風に吹かれたときに

かしげる首のようになめらかな声で

わたしを呼んで、

あなたがお三時にこさえてくれる

フレンチトーストのように甘い微笑みを

わたしにかけてよ。

どうか、お鍋にそっと野菜をいれるそなたの

やわらかな手つきのようにわたしを抱きしめて

おくれよ。

そして涙に濡れたわたくしのほほに

キスをして、貴女に対する失望と愛と憎しみ

を拭い去ってよ。


野うさぎよ。

おまへの軽やかに飛び跳ねる陽気さは

今のかあさんにはまるでない。

陸ガメよ。

おまへののっそり緩やかに構える余裕なぞ、

母さんにはまるでない。

もしも許しをくれるなら、

わたしはもう二度とこのような獣たちと

かあさんを比較したりしないだろう。

けれども今はそうせざるを得ない

あなたの怒りのロウソクの火が消えるまでは。

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