ロマンスの現実逃避6

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この世はすべて愛でできていると思うんだ
君もそう思わないかい?
ホントはみんな誰かを愛し愛されたいだけなのさ。ただ、なにかを慈しむ心を育てたいだけなんだ。

君の後ろを歩いている時、
ぼくはきみのつむじを目でじっと追うことがあるんだけど、その渦に巻き込まれそうになったりする。少ししてから、
君はくるっと振り向いて、「間に合わないよ」っていうんだ。
ああ、いいよ。映画の時間なんか、それより
君のつむじを見ていたいんだ
と思いながらも、ぼくたちは早歩きで映画館へと向かうんだ。

君のとなりで映画をみていると、なんだかぼくたちの人生が、その時間だけ立ち止まっているように感じるんだ。
まっすぐスクリーンをみつめる君の視界にも心の中にも、ぼくは居ないんだね。
それでも不安じゃないのは
同じものを見つめているってこと。
あと20分ほど経てば、ぼくらはまたいつものように向かいあって、なんでもないことを
話しながら楽しい時間を過ごすのだから。

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