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11年前の記憶

11年前、私は小学生だった。

あの頃はピアノ教室に通っていて、毎週金曜日がレッスン日だったから、金曜日というのは非常に覚えている。あの時間、私はピアノ教室に向かう前に手慣らしに一曲弾いていた。突然ぐぉーっとした長い揺れ。小さな揺れだったが、今までに経験したことのないものだった。
その後母と相談した上でピアノ教室に向かったが、椅子に座っている間も居心地の悪い揺れは続いた。

その時先生は何も言わなかった。今思うと幼い私に配慮していたのだろう。この揺れの恐ろしさを知ったのは家に帰ってからであった。

帰宅してドラえもんとクレヨンしんちゃんのアニメを観ながら夕食を食べるというのが金曜日の日課であった。しかしこの日は放送されなかった。

テレビの電源を入れると街を飲み込む津波の映像が延々と流れていた。家が、車が、瓦礫の山となって黒々とした濁流が街を飲み込む。津波が押し寄せる中、必死に車を走らせて逃げている人の姿もあった。CMはA◯以外のスポンサーは全て自粛し、あのコーラスを何度も聴いた。母は絶句し、私はまじまじと画面を観ていた。これは本当に起きている出来事なのか信じられなかった。

それが私の当時の記憶である。


亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

ことり