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逃げる花。

明日の朝、起きたら死んでいるんじゃないかと思うことがよくある。
いや、死んでいたら起きないのだから、それも妙な話か。
とにかく、自分はとても、ギリギリのところにいるんじゃないかと思うことが増えた。
どこかで一本、か細い糸がピンと切れてしまったら、途端にすべてが崩れてしまうのではないか。
そんな気がしてくるのだ。

ビュンビュン自転車を漕ぎながら、あっと石にけつまづいた拍子に。
調子よく駆け上がった階段を、つい踏み外した瞬間に。
そんなことを言い出せばきりはないけれど。
「これまでの今」が一転してしまうことなど、毎秒毎秒ごと常に付きまとっている。
当たり前のことが、やけに真実味を帯びて感じる瞬間が増えたように思う。

近くのこと、遠くのこと、知人のこと、見知らぬ誰かのことが、毎日手に取るように目や耳から入ってくる。
知ってよかったこともあれば、知りたくなかったこともある。
本当は、今知るべきことはこれほど多くないような気もする。
頭がお腹いっぱい、そんなところ。

つい数日前、四分咲きだったハクモクレンが、今朝はすっかり若芽に覆われていて。
昨日の雨にやられたのか、今年は短い命の花だった。
雨はいつやってくるかわからない。
花がいつまで見られるかもわからない。

通り過ぎた桜の木が、今度は自分の番だとばかりに咲きかけの枝を差し出してきた。
見逃してはいけない。


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