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某芸人による性加害報道や、過去の被災地での性被害を聞いて思うこと

8年「も」の時間を経過して

某芸人の性加害疑惑報道が出た昨年末。
この話題を知り合いの男性に振ると出たのは、
「報道が事実なら由々しき事態だけど、何故8年もの間黙っていたのか」
という心からの疑問でした。
私はそれを聞いて心底ガックリしましたが、私はその男性を信頼していましたし、その言葉が心からの疑問であったために、おそらく多くの男性(女性も)そう思っているのでは?と感じました。
だから是非、お話ししたい。
”何故8年の時を超えた今なのか?”
自民党の裏金問題から世間の関心を逸らすため?
それはおそらく偶然でしょう。
時代が変わった?
それは一助になっていると思います。

答えは単純だと思います。
8年後の今、彼女にとって性被害に対する認識が変わる何かのきっかけが、たまたま起こったのだと思います。
黙っているのは良くないと、告発すべきではないか、と感じるきっかけが。
もちろん、告発者本人でなければ真相はわかりません。
では何故私がそう思うのか。
それは実際に私が、そうだったからです。

示談金100万 回収されたパンツの代わりに渡された白いペラペラのパンツ

皆様、初めての性体験はいつですか?
異性に下着の中に手を入れることを許したのは?
当時の恋人の顔が頭によぎりますか?
甘酸っぱい思い出でしょうか。それとも、少し苦い思い出?

私の場合は当時16歳、東急東横線の朝の満員電車の中でした。

下着の上から触られることには慣れていました。
なんせ通学時は毎日のように触られていましたから。
今から15年以上前のことです。
女子高生が満員電車に乗ったら触られて当たり前
そんな時代だったのだと思います。
できるだけ空いている各駅停車を使い、可能な限り座るようにしていました。
しかし始発駅でもなく、かつ特急を利用しても片道1時間半以上かかる中で、満員電車を避けられないことも多々。
東横線に女性専用車が導入されたのは、私が性被害を受けてから数か月後の2005年7月のことです。

慣れていました。
お尻を触られたって減るもんじゃないし。
気持ち悪いな、迷惑だな。
その程度の感覚で、
やられても当然。早起きして各駅停車に乗れない私が悪い
心からそう思っていました。
そんな中、友人が電車の中でわいせつ被害に遭い、100万円で示談にしたという話を聞きました。
え?私たちが体を触られていることって、100万円も支払われるべき犯罪なの?
しばらくして、今までで一番酷い被害に遭いました。
下着の中に手を入れられ、力ずくで指を入れられそうになりました。
待って、処女なのにやめて。
あたりはぎゅうぎゅう満員で逃げられません。
私は必死でお尻に力を入れ続け、終点で「この人痴漢です!」と男の手を掴んで声を上げました。
その場にいた他の男性が犯人を捕まえ、駅員室まで一緒に連れて行ってくれました。(勇敢な彼がいなかったら、私の声は乗り換えに急ぐサラリーマン男性の群れの中で黙殺されるところでした。心から感謝しています)
これが私の初めての性体験です。

知っていましたか?
服の上から触られる「痴漢」は都道府県ごとに決められている迷惑防止条例違反にしかならず、多くの都道府県では、1か月以上6か月以下の懲役または1万円以上50万円以下の罰金で済んでしまいます。
一方、下着の中にまで手を入れた場合刑法の不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)が適用されます。
不同意わいせつ罪には6か月以上10年以下の拘禁刑が科せられます。(当時の強制わいせつ罪は6か月以上10年以下の懲役刑)

【不同意わいせつ罪の定義】
被害者が「同意しない意思を形成、表明、全う」することが難しい状態でわいせつな行為を行う罪が、不同意わいせつ罪です。
暴行や脅迫を用いた場合だけではなく、被害者が行為に同意していない状況でのわいせつ行為が処罰対象となります。
わいせつ行為とは、抱き着く、下着の中を触る、キスをするなどの行為が典型例です。

【不同意わいせつ罪に問われる行為】
被害者が抵抗できない状況でわいせつ行為を行うと、不同意わいせつ罪に問われます。
具体的なケースは不同意性交等罪と同じく、以下の3つとなります。被害者が抵抗できない状況でのわいせつ行為
相手が誤信している状況でのわいせつ行為
16歳未満の人とのわいせつ行為

アトム法律事務所HPより

警察署にパトカーで移動した私は、事情聴取をされることとなります。
警察署につくとまず、パンツを脱ぐように言われます。
証拠品として提出する必要があるからです。
相手の手の甲にパンツの繊維が付いていれば、パンツの中に手を入れた証拠になるからです。
わいせつ行為から解放された直後に、また男性にパンツを脱ぐように言われるのは、証拠保全のため必要なことだと理解はしていても、正直言ってものすごく屈辱的でした。
通された冷たいトイレ。渡されたペラペラの白いパンツ。びっくりするくらいペラペラで、その場凌ぎのものでした。こんなんじゃ帰りまた痴漢されるじゃん。。。
その後、事件の再現をさせられます
男性警察官の中に立たされ、犯人役も男性警察官。
嫌な思い出がフラッシュバック、どころではありません。
でも私は何故か興奮状態。痴漢バスターか?と思う鼻息の粗さで警察官に状況を説明します。
「怖かったね」「よく声を上げたね」
そんな優しい言葉は一度も耳にした記憶はありません。
女性警察官に対応された覚えもありません。

彼らは事件の証拠を押さえるのが仕事。
私の気持ちなんて別に、どうでもいいんです。

テレビで見た取調室の中に4~5時間はいたと思います。
警察官からは何故その男が犯人だとわかったのかをしつこく聞かれました
証拠がなければならないからです。
私はだんだん疲れてきました。
嫌なことされたのに、何で指をどこまで入れられたかとか、おじさんにまた告白しなきゃいけないの?
この尋問に耐えて100万円の示談金を手にした友人のことを心から尊敬しました。
ようやく解放されて、渋谷の街に放り出されて、脇から風の通り抜けそうなペラペラのパンツで、私はそこで初めて、悲しいと思いました。

セカンドレイプ

某芸人の性加害疑惑について、被害女性を責めるような発言はセカンドレイプに当たるという発言がX(旧Twitter)上で飛び交いました。

セカンドレイプ(性的二次被害)について
レイプなどの性犯罪・性暴力の被害者が、その後の経過において、更なる心理的社会的ダメージを受けることをセカンドレイプ(性的二次被害)といいます。
事情聴取する警察官、刑事裁判で尋問をする検察官や弁護士の他、診察をした医師や病院関係者、マスコミ報道、など、様々なものがあります。

東京中央法務オフィスHPより

私が被害を受けたのは15年以上前のことですので、当時はセカンドレイプという概念はまだなかったと思います。
ただ、今になって考えてみれば、男性警察官を犯人役に行う被害者本人による事件の再現や、ストレートな言葉を用いた男性による取り調べは、自分のされた卑猥なことを自分の体や口で男性に告白するという、まさにもう一度性の対象として消費されているような、裸のまま沢山の男性たちの前に吊るし上げられているような気分でした。
そういえばこんなことを言われた記憶もあります。
「裁判になればまた自分の口で、自分のされたことを証言しなきゃいけないんだよ」
逆にこんなことも言われました。
「今回の犯人には前科があって、執行猶予中だから、あなたが訴えれば実刑にすることができる」
嗚呼、とにかく逃げられないんだな。
わいせつ被害を受けて、
犯人を捕まえる(もしくは警察に被害を訴える)勇気 × 捕まえられる確率(高確率で逃げられる)× 証拠が認められる確率 × 本人が嫌な思いをしてでも起訴したいと思う割合
全てを掛け合わせてやっと出てきた件数が、日本の性犯罪の件数として発表されている。
泣き寝入りしてしまったほうが、ずっとずっと、楽なんです。

性加害が簡単に許される国、日本

コロナ前、ハロウィーンで人がごった返す渋谷のスクランブル交差点で、通りすがりに女性たちの体を触る男たちがいたとニュースになったのを覚えています。
それをハロウィーンに便乗した悪ノリ、として片づけてしまう国、ニッポン。
若い女性は体を触られても、笑いごとで済まされてしまう国、ニッポン。
思い返せば、そんなことはいくつもありました。

・小学校高学年の頃、向かいから歩いてきた男性に通りすがりに胸を掴まれたこと
・中学生の頃、下校途中に知らない男に後ろから抱き着かれたこと
・高校生の頃、下校途中に知らない男に付け回されたこと
・高校生の頃、毎日のように電車内で体を触られたこと
・コピーを取っている時に通りすがりにお尻を触られたこと
・お酌係として夜中まで飲み会の接待をさせられたこと
・渋谷の街を歩いている時に、カラオケに連れ込まれてしゃぶらされたこと
・人気のない歩道橋のエレベーターの中で露出狂に遭って握らされたこと
・家に押し掛けてきた男性に玄関で無理やりキスをされたこと
・利害関係のある男性にホテルに連れていかれ、断り切れずに事に及ばれたこと

当たり前のように受け流してきたけれど、よく考えたら全部、おかしいよね(笑)

突然の目覚め

さて、ここで話を戻します。
何故、8年「も」経ってから告白したのだろう?

仕方のないこと、ありふれたこととして受け流してきた私が目覚めたのも、つい最近のことです。
性なんて、汚らわしいもの、うざったいもの、そう思ってきた私の心を徐々に溶かしてくれたのは、これまで私と愛をもってお付き合いしてくださった男性たちです。
そして二人の娘が生まれ、長女が小学生になり単独で行動するようになった今、私の中で、この慣習は続けてはいけない、と目が覚めました。
私が我慢するのはいいけど、娘たちが知らない男どもの手で捏ね繰り回されると思ったら、内臓をぐちゃぐちゃに掴まれるくらい、悲しくなったのです。
どうにかしなきゃいけない。
世論の変化もそうです。
以前より女性の人権が守られるようになってきました。
SNSの発達で、匿名で意見を言えるようになりました。
この問題に限らず、多くの一般人が、自分の感覚で、言葉で、これっておかしくない?と思っていたことを、言えるようになりました

某芸人の件について、接触後の女性からの好意的な連絡内容から、女性も望んでいたのでは?という議論がなされています。
仮に女性にとって望まない性的行為があったとして、その後に送る好意的な連絡を私は理解できます。
従順に振る舞う以外に、どうすることができたでしょうか?
酷く傷つき混乱した人間に、相手と戦うエネルギーなどありません。
とにかくその場を収め、円満に去る
考えるのはそれだけです。
私にはわかります。
自分の心にさえ、望んだものであるかのように言い聞かせます。
そうでないと、壊れてしまう
自分の身に突然、抵抗する間もなく起こった危機を、客観的なものとして見て、社会的な是非を判断するには、何年もの時がかかります
一生蓋を開けられない人もいます。
例えば災害です。
振り返り、こうすればよかった、これは課題だ、と考えられるようになるまでは、何年もの月日がかかると思います。
今になって、ではなく、今になったから、言えるのです。
まずは自分が壊れないように記憶に蓋をして、目の前の生活に集中する。
その蓋を一生とらなくても良いのだけれど、例えば私が娘の未来を思って声を上げようと思ったのと同じように、彼女にも、その蓋を開け、盾と矛をもって戦おうと決めたきっかけがあったのでしょう

性的な行為について、本当に相手が同意しているか、確認するのはものすごく難しいことです。
でも本来、性行為はストレス発散や快楽のためにあるものではなく、深い愛情の先にあるものですよね。
信頼関係の浅い人間と、そう簡単に性的な行為ができるわけがないと、誰もが認識する必要があると思います。
「いや」とか「だめ」といった言葉が否定にならない日本文化。
はっきりと拒否することを是としない日本。
特に女性はおしとやかに、否定的なことは相手の気分を害さぬよう遠回しに伝えることが良しとされてきました。
でも、はっきりNOと言うべきだし、言っていいと思うし、言ったことで責められない文化に変わるべきだと思います。
一方にとって性被害であっても、一方にとっては同意を得たと本気で捉えられていることもあります。
真相はわからないですが、もしかしてもしかすると、今回の報道もそういった認識の際が双方の間にあったのかもしれません。
私が利害関係のある人間との性的関係を断り切れなかった時も、相手は私が同意していると、心から思っていたかもしれません。
私は仕事柄、外国籍の方と接する機会が多いのですが、新入社員の頃はよくお客様に「NOなの?YESなの?」と聞かれました。
日本的なコミュニケーションは、バックグラウンドの共通認識がないと、非常に伝わりにくいものです。
もちろんそれぞれの国の文化にもよりますが、YESかNOかをはっきりすることは良いこと、とされている国が多くあります。
特に国土が広く方言や文化の違いが激しい国では、簡単な言葉ではっきりと意志を伝えることが求められます。
女性の声が押し殺されてきた時代背景があるということは社会が認識したうえで、私たち女性もこれからはっきりと、意見を述べていくべきだと思っています。

女性は道具じゃない

被災地での性被害に触れられないまま、終盤まできてしまいました。
2024年の元旦に発生した令和6年能登半島地震
X(旧Twitter)上等で、避難所や一時帰宅の際の性被害に注意するよう呼びかけがされています。
これは阪神淡路大震災や、東日本大震災での被害者が続々と声を上げていることにより、ようやく取り上げられるようになってきた問題です。
一人でトイレに行ったところを男に押し入られことに及ばれた、
小学生だったので意味が分からなかったが、若い女性が複数のおじさんに囲まれて泣いていた、
誰かが助けてくれた、という話も目にする一方、
若いから仕方ない、と見て見ぬふりをされた(されていた)という発言も目にしました。

また、某芸人の性加害疑惑報道から、一昔前のお笑い番組の映像もX上にあげられていました。
女性に無理やりキスをしたり、体を触ったり、卑猥なことを言わせたり
暴力的な笑いの取り方は男女どちらもあった時代として、
こんなののどこが面白いの?と思い、お笑い番組が好きではなかった幼少期を思い出します。
そんなことをする芸人は酷い、と批判する前に、ちょっと考えてみてください。
なんで彼らはこんなことをしているのか?
それは、需要があるからです。
お茶の間でリモコンを握った男性陣が、
女性に無理やりキスをしたり、体を触ったり、卑猥なことを言わせる番組を、求めていたからでは?

女性はモノじゃないんです。
いじって面白がるものでもないし、ストレス発散のための道具でもありません。
生きています。
あなたと同じ人間です
意にそぐわないことをされたり、させられたりしたら、悲しいし、腹が立つし、嫌だと思いませんか?

私たち女性って、実はものすごく弱い立場にあるのだと、ここ最近痛感します。
もしも、倫理も何もない世界に、この身一つで立たされたなら、男性陣には力では絶対に敵わないのです。
犯されまくるしかありません。

誰だって、人間は、他人の思い通りにならない

誰だって、性被害に遭う可能性はあります。
オジサンは可能性がかなり低いかもしれないけれど、ジャニーズの問題があったように、男性でも被害に遭う可能性はあります。
もしもあなたの大切な人が被害に遭ったら?
あなたの彼女、奥さん、娘、息子、兄弟姉妹、姪っ子、甥っ子、友人、好きなアイドル、芸能人etc…
あなたの大切なものを守るため、人権について、もう一度考えてほしい
性被害のみならず、いじめや監禁、労働の問題も同じです。

誰だって、人間は、他人の思い通りにならない
衝動で、触っていいとか、犯していいとか、そんなわけがないのです。
面倒くさいかもしれないけれど、人と付き合うって、そういうことだと思います。

ここ数日の様々な出来事を見て、
私の中で溜め込んでいた取り留めのない憤りが、ようやく形をもってエネルギーに変わりつつあります。
それもこれも、個人が意見を発信する土壌が、インターネットやSNSの発達によってできてきたから、そして同じように勇気をもって発信する仲間がいてくれるからだと思っています。

決して誰かを責めたいわけじゃない。
過去を否定したいわけでもない。
でも、よりよい未来に向かって進んでいくために、もっと色々なことを話そうよ。
私はそのような思いでこの投稿を書きました。
これからも娘たちの未来をよくするための一助になるのなら、私は発信を続けていきたいと思っています。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

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