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低体重児と就学について考える

先日、Voicyで低体重児のお母さんからコメントをいただき、10年前に書いたメールマガジンを思い出しました。この10年、私が児童虐待や困難に直面している子供たちの問題に取り組んできた原点はここにあります。改めて皆さんに読んでいただきたいと思い、以下で再掲します。


2012年12月21日、娘は637グラムの超低体重児でこの世に生を受けました。

担当医からは「1週間を乗り切れば大丈夫ではないか」と言われ、一日一日、指を折りながら過ごしました。被災地、特に福島を照らすような明るい子になってもらいたいという思いを込めて、「燈(あかり)」と名付けました。

燈はNICU(新生児集中管理室)の中で1週間を乗り切りました。これで大丈夫と家族で喜んだのですが、次の日に容態が急変し、息を引き取りました。燈の死後、父として何かをなさなければと強く感じ、いくつかのテーマに取り組んできました。

児童養護施設の問題をライフワークに

第一に児童養護施設の問題です。せっかくこの世に生を受けたにもかかわらず、親の愛を受けることのできない子どもたちが、わが国には4万人もいます。しかし、わが国ではそうした子供を社会で育む環境が整っていません。

娘の一周忌にあたる2013年の冬、クリスマス会で訪れたつくば愛児園の園長さんは、私にこう話してくれました。

「親の迎えを待ち続けている子どもは、いつの日か、もう親は迎えには来てくれないと諦める。自分を守るためには諦めるしかない。そういう子は、生きる上での希望や期待も諦めてしまうことがある」

児童養護施設の問題を国会質問で取り上げ、仲間と共に議員連盟を立ち上げました。これからもライフワークとして取り組んで行きたいと思っています。

低体重児の就学問題

第二に低体重児の問題です。医学の進歩で低体重児が育つ環境は随分と改善されましたが、予定日よりも大幅に早く生まれる子どもは様々な課題を抱えています。

2013年11月1日に、衆議院文部科学委員会で低体重児の就学について質問をしました。

2,500グラム未満で生まれてきた新生児を、母子保健法(第18条)では「低出生体重児」と位置づけ、保護者は市町村に届け出なければならなりません。私自身もその届出を行いました。

厚生労働省の「人口動態統計」によると、2012年には全体で9.6%(99,311人、双子以上の場合を含む)が低体重児で生まれています。その中でも、特に1,500グラム以下が0.8%(7,985人)、1,000グラム未満が0.3%(3,199人)となっています。娘がお世話になった病院にも、本当に多くの小さい赤ちゃんが入院していました。

娘のように、4月に生まれる予定の子供が12月に生まれた場合、1学年前の生まれになります。そうなると、発育の状況も本来であれば次の学年に該当しながらも、学校教育上は1年前の学年に入学しなければならないということで、特に小学校低学年ではかなりのハンデを背負うことになります。

制度としては、学校教育法第18条によって、「病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者」については、「(就学の)義務を猶予又は免除することができる」とされています。しかし質問当時の文部科学省のウェブサイトによると、病弱であるとか発育不完全については1年ずらせるものの、「特別支援学校における教育に耐えることができない程度」「より具体的には、治療又は生命・健康の維持のため療養に専念することを必要とし、教育を受けることが困難又は不可能な者を対象」とするという条件が付けられていました。

これは、本当は1年後の学年に入るはずだったけれども、まだ小学校に入るまでには体が十分に成長していないという子供たちには該当しないことになります。落ちついて焦らずに子供の教育をしたいという親は多いと思いますので、各市町村の教育委員会が柔軟に対応できるようにすることはできないかというのが、質問の趣旨でした。

私が下村文科大臣に、「お忙しいと思いますが、大臣御自身として少し調べていただいて、柔軟にできるところがあれば前向きに考えていただきたい」とお願いしたところ、下村大臣も「よく調べて、実態に合わせて判断をしていきたい」と答えてくれました。

その後、年の瀬も押し迫った時に、うれしい知らせが届きました。12月19日に、文部科学省が、都道府県教育委員会に対して「就学義務の猶予又は免除に関する留意点について」と題する事務連絡を行い、「近年増加傾向にある低出生体重児等への対応においても、『その他やむを得ない事由』に該当し、小学校及び特別支援学校への就学を猶予・免除することが適当と判断される場合もありますので、各市町村教育委員会におかれては保護者の意向を尊重しつつ、一人一人の児童生徒の状況に応じた就学事務の適切な遂行をお願いいたします」との方針が示されました。

文部科学省の事務連絡(内容は発出当時のもの)

これで、低体重の子どもたちが、発育の状況に合わせて教育を受けられるようになったのではないかと思います。親が余分なストレスを感じずに子育てをすることができるメリットもあります。まずは、第一歩を踏み出すことができました。


ここまでが10年前に私が書いたメールマガジンなのですが、この事務連絡が市町村の教育委員会などに行き届いていない可能性があります。保護者の皆さんには「子どもの最善の利益のために」積極的に活用していただきたいと思います。


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