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「青春ブタ野郎はナイチンゲールの夢を見ない」を読んで

私は、ライトノベルの青春ブタ野郎シリーズが大好きであります。青春ブタ野郎シリーズは11巻刊行されており、アニメ化・映画化もされた人気シリーズです。

このシリーズの特徴は2つです。まず「思春期症候群」がキーワードだということ。この作品で言う「思春期症候群」とは、思春期の「不安定な精神状態によって引き起こされるとネットで噂の不思議現象」のことです。既刊で登場した思春期症候群の例では、人目を気にせず過ごしたいと願っている人気女優が透明人間化する事象や、お姉ちゃんみたいになりたいと思っている妹がお姉ちゃんと入れ替わる事象が起こりました。

そして、もう一つの特徴は各巻ごとに「思春期症候群」を発症するキャラクターが変わり、メインの担当ヒロインやタイトルが変わるということです。基本的に物語は中学時代に思春期症候群を発症したある主人公・梓川咲太を中心に進みますが、人気女優回ではタイトルは「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」となりバニーガール先輩にあたるキャラにスポットライトが当たりますし、妹回(実は作品内に妹は2人出てくるのでまぎらわしい表現)ではタイトルが「青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない」となりシスコンアイドルにあたるキャラにスポットライトが当たります。

ここで面白いのが、毎回スポットライトが当たるキャラはその巻で始めて登場するわけではなく、それより前の巻から登場していて各担当ヒロインへの愛着が湧いた状態から読み始められることであり、各担当回が終わった後も物語に登場するところです。

さて、今回は12月発売の新刊「青春ブタ野郎はナイチンゲールの夢を見ない」を遅ればせながら読みました。

※以下、ネタバレを含むあらすじ

主人公・梓川咲太は中学時代のクラスメイト・赤城郁実と大学で再開する。郁実は当時から真面目で責任感の強い生徒で、大学に入学した今も人を助けるために看護師を目指し、ボランティア活動に取り組んでいた。そんな彼女は、SNSに「#夢見る」と共に夢を書きこむと正夢になるという都市伝説が現実に起こっていることに気づき、悪夢が現実となることを阻止する活動を行っていた。あまりにも熱心なことから咲太が、郁実はなぜ人助けに執着しているのかを尋ねると、郁実は「出来のいい梓川君がいるから叶わない」ことを理由として挙げます。実は郁実は、咲太が中学時代に思春期症候群を発症した時に、他のクラスメイトと同様にオカルト話だろうと信じてあげられなかったこと、咲太に何もできなかったことをずっと後悔していた。そして、「正義の味方」になりたいと切望していた。

先述の通り、この「青春ブタ野郎シリーズ」には様々なヒロインが登場します。そして、そのヒロインたちは思春期ならではの悩みを抱えています。そして今回のヒロイン・赤城郁実は中学時代の後悔を経て正義の味方になりたいともがいています。

これまで10人前後のヒロインとその悩みを見てきましたが、郁実の悩みが一番共感しました。過去の後悔や罪悪感を、それ以降の行動で清算していこうという考えって出てきますよね。常に善くありたいと思うけれど、過去に感じた罪の意識を思い出しては、精算できるようなことではないと悟ったり。それでも善くあり続けることでしか、気持ちは晴れないみたいな。

後半の郁実が当時を悔いて、今をもがいていることを吐露するシーンは、痛々しいほど切実で、読み終わった後も心がギューッと締め付けられたような思いでした。

実はこのレビューは、作中の大事な要素を飛ばして書いています。他の巻とつながりのある要素で、そこを語るのは難しいと感じたからです。
だから、ぜひ読んでみてください。このシリーズを勧めるときにいつも言うのですが、タイトルで食わず嫌いせず読んでほしい作品です。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

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