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冊子とデジパンは等価なのか?京都橘大学の「大学餡内」から考える、大学案内の届け方と使い方。

オープンキャンパスで高校生の心をつかむために、どの大学もいろいろな工夫をしています。今回、見つけた京都橘大学の取り組みも、そんな工夫のひとつです。取り組みとしてのユニークさもさることながら、大学案内の活用方法を考えるうえでも、とてもいい事例になりそうなので、今回はこちらを紹介していこうと思います。

具体的にどんな取り組みなのかというと、「大学餡内」としてQRコード付きのどら焼きを、オープンキャンパス会場で配る、というもの。このどら焼きのQRコードを読み取ると、大学案内のデジタルパンフにつながるという仕掛けです。

オープンキャンパスは、あちこち移動するのに資料がかさばるので、けっこう体力を使います。それであれば、「大学餡内」のように情報はスマホでチェックし、QRを読み取ったあとのどら焼きはお腹に放り込めば、体力回復にもなるうえ荷物も減るので、一挙両得です。語呂もよく、取り組みとしてインパクもあり、考えようによっては理にかなっています。なかなか完成度の高い取り組みなのかなと感じました。

一方、気になるところもありました。一つは、本施策ではQRコードを読ますわけですが、読み込んだ先が大学案内のデジタルパンフである必要がどこまであるのでしょうか。オープンキャンパス会場でQRを読むということは、おそらくほとんどの人はスマホで読み込みます。私も、リリースにあった画像からスマホでQRを読み込んでみたのですが、スマホだとデジタルパンフの文字が小さくてて、だいぶ拡大しないと読めないんですね。

ここまで企画性のある取り組みをして、QRを読み込ませた先が、文字が小さくて読みにくいというのは、少し残念な気がしました。そうであれば、受験生向けの特設サイトに誘導をかけた方がいいのではないでしょうか。まぁ、そうすると「大学餡内」とはいえなくなるんですけど……。

もう一つは、大学案内の冊子とデジタルパンフでは、載っているものは同じでも、使い方はけっこう違うように思うのです。デジタルパンフは、一人で必要な情報を調べるのに向いています。一方、冊子は、読み手は一人に限定されず、家族や友だちと見ながら話すというシチュエーションもありますし、調べることもできれば、パラパラと全体を斜め読みするという使い方もできます。デジタルパンフに比べると冊子の利用シーンは広く、伝わる情報も多いのです。

であれば、QRを読み込むことと、大学案内(冊子)を入手することが等価であるような表現をするのは、けっこうリスキーなのではないでしょうか。とくに怖いのは、デジタルパンフから得られる情報や体験が、冊子と比べると本当は少ないのに、同じだけのものを得たと、ユーザーが勝手に思い込んでしまうことです。これはオープンキャンパス(対面)とウェブオープンキャンパスの関係でも同じようなことが言えそうです。

大学の立場で考えると、デジタルパンフよりもだんぜん冊子で見てもらったほうが広報効果は高いわけです。今回はそういったなか、あえて逆張りをしています。そこに隠れた面白さがあるのではないでしょうか。

でもそうはいっても、QRコードの読み込み件数は、おそらくそこまで多くはないでしょうし、施策としてもデジタルパンフに誘導することより、話題性重視だと思います。そう考えると、誘導先うんぬんより「大学餡内」と言えることの方が、ずっと大事だったりするのかもしれません。……大学餡内、たしかになんか記憶に残る字面ではありますものね。

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