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大学PRだけが受験生広報ではない?仕事への興味を育み、受験生を開拓する、北海道医療大学の中高生向け講座。

受験生向けの広報戦略に関わるなかで、大学が受験生に届けられるものは何か、ということをたまに考えたりします。ほとんどの場合、自大学にかかわる情報を、時には簡単に、時には深く、時には楽しげに、伝えることになるのですが、これって同じような情報の焼き直しでしかなくて、広報物をつくっている側もけっこう息切れを感じてしまうんですね。今回、見つけた北海道医療大学の取り組みは、この息切れから脱出する手立てになりそうかも?と思ったのでご紹介するようにします。

プレスリリースで取り上げられているのは、「病院ではたらく相談のしごと体験講座」という医療ソーシャルワーカーの業務内容を紹介する対面&オンラインのイベントです。同大学にある看護福祉学部 福祉マネジメント学科の学生たちの進路の一つである、医療ソーシャルワーカーという業種について、中学生・高校生に伝えることがこのイベントの趣旨なようです。

このイベントには面白いところがいくつかあって、一つは、見たままなのですが、大学のPRを主目的としていないところ。もう一つは、対象が中学生・高校生、保護者、中学・高校教諭となっており、受験生だけをターゲットにしていないというか、メインターゲットは、おそらく受験を考える前段階の人たち。そういう人たちに、医療ソーシャルワーカーの魅力を伝えることで、北海道医療大学の志願者にもなりうる、医療ソーシャルワーカーに興味を持つ人たちを増やそうとしているようです。

受験生獲得は、極端かつ意地悪な表現をすると、生えてきた芽(受験生)をいかにして刈り取るかの活動になります。でも、すでに生えた芽は、でかいやつ(偏差値の高い大学)から順に鎌を振るうので、頑張ったところで、でかいやつより多く刈り取るというのは至難の業です。今より多くの芽を刈り取りたいなら、でかいやつと同じタイミングで勝負をかけても駄目なんだと思うのです。

じゃあどうやって先に接点を持つかなのですが、これってパラドックスというか、他より先に自大学をアピールしたからといって振り向いてもらえるわけじゃないんですよね。だって、この段階では、その大学の先にある業種や学問に興味があるわけではないので、当然その大学にも興味がわいていないからです。だからまず、黙々と芽が出るように土壌を耕し、耕しているからこそ芽が出たときに他よりも先に気づくことができ、アプローチも早くかけられる。加えて、芽を出させてくれた(その業種・学問に興味をもつきっかけを与えてくれた)という気持ちも抱いてもらえる。気長なアプローチなようにも感じますが、でかいやつと正面から競うより建設的だし、その学問領域全体にとってもプラスな活動になるので、とても良いように思います。北海道医療大学の取り組みは、まさにこれなのではないでしょうか。

あともう一つ、北海道医療大学の取り組みには面白いところがあります。後援に「北海道医療大学看護福祉学部臨床福祉学科同窓会」という同窓会組織が入っていることです。今回のイベントでは、参加者たちが、大学と卒業生とのつながりを感じとれる場にもなるのかな、と感じました。

卒業生と大学とのつながりが強いと、当然、卒業生が大学をサポートするだけでなく、大学が卒業生をサポートする場面も出てくるように思います。ここらへんの関わり合いを上手く表現できると、他大学との差別化になるし、大きな魅力として映ると思うんですね。だって、大学4年間を支援してくれる大学より、進学したら(卒業しても)ずっと支援してくれる大学の方がいいですもの。さらにいうと、北海道医療大学のように専門職を育成する大学は、卒業生の職種が同じになりがちだし、専門職は常に学び続けないといけないので、よりこのようなつながりが大事になるように思います。

今回の北海道医療大学の取り組みは、従来の入試広報の視点から考えるとまどろっこしいアプローチにはなります。でも、こういう従来の枠から外れたアプローチだからこそ、獲得できる受験生はいるはずです。急がば回れというか、正攻法でのアプローチはもちろん大事ですが、常に余力を持ってこういう絡め手を育てていくということは大事なんだと思います。面白い取り組みなので、ぜひ今後も長く続けてほしいです。

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