見出し画像

大学広報必見!東洋大「LINK@TOYO」から考える、大学メディアの記事特性を活かしたPVアップのアプローチ。

専門性や独自性のPR、社会に向けた情報発信の意義が高まってきたことで、研究等の情報を伝えるオウンドメディアの運営に力を入れる大学が増えてきています。今回、取り上げるプレスリリースは、そんな大学発オウンドメディアの一つ、東洋大学の「LINK@TOYO」に関わるもの。私が代表を務めるホトゼロでは「ほとんど0円大学」以外にも、複数の大学メディアを運営しているのですが、その経験を踏まえても、今回の「LINK@TOYO」のような取り組みは大学メディアのPV数アップに役立ちそうだと思いました。

大学メディアだからこその2つのアプローチ

まずは「LINK@TOYO」とはどんなメディアなのかについて、簡単に説明しておきましょう。本メディアは「日常生活に溢れる“教養”を学ぶ。」をテーマに、東洋大学の研究者たちの専門性に基づいた記事や、在学生・卒業生による活動を伝える記事を主にあつかっています。東洋大学は、2013年度に紙の「大学案内」を一切やめてデジタルに切り替えるなど、オンラインによる情報発信に早くから力を入れてきました。そういった広報への姿勢があるためか、「LINK@TOYO」も、大学のオウンドメディアのなかでは、かなり力を入れているものの一つです。ちなみに「LINK@TOYO」が立ち上がったときに、本noteでも紹介していますので、こちらもぜひご覧になってください。

で、ここからは今回のリリースについてです。リリースに何が書かれていたのかというと、「LINK@TOYO」の過去の人気記事の続編記事を公開したことと、「MONTHLY KNOWLEDGE」という特集エリアに、2022年度に人気だった記事を掲載したこと、この2つです。この2つがものすごくユニークな手法かというと、そういうわけではないのですが、大学メディアであれば抑えておくべき大事なアプローチだと思うのです。

大学メディアの特性を理解したPVアップのアプローチ

大学メディアの記事の強みを端的に言ってしまうと、マニアックでオリジナリティが強く、情報が劣化しにくいことです。というのも、多くの記事は、研究者をインタビューしてつくられるので、一次情報にあたってつくられるし、研究者の専門性が強く反映されます。しかも、一部の有名研究者をのぞけば、その研究者(や研究)をクローズアップした記事がいくつもネット上にあがっているわけではありません。
 
さらに、研究者たちの語りは、学問的なバックグラウンドがあったうえでされるので、社会の流行り廃りの影響をそこまで強く受けないんですね。なかには、研究者の専門性と時事問題をかけ合わせたような記事もあります。でも、そういった記事も切り口としては、その時々で話題になっていることではありますが、主題は研究者の専門性なので、取り上げた話題が過去のものになったとしても、記事の価値はそこまでは損なわれないように思います。たとえば、「タピオカミルクティーから見る、台湾と日本の貿易史」みたいな記事があったとします。この記事は、おそらくタピオカミルクティーが流行らなくなっても、読みたい人は一定数いると思うんです。一方、「いま人気のインスタ映えするタピオカミルクティー屋さん ベストファイブ!」みたいな記事は、タピオカブームが去ったら、記事としての価値はほぼなくなってしまうのではないでしょうか。
 
こういった特性のある大学メディアの記事は、何かの拍子にPVが跳ねることもあるのですが、いま社会が注目していることをストレートに取り上げている記事ではないので、検索にバンバン引っかかってPVがあがっていくという状況にはなかなかなりません。とはいえ、ハマる人にはハマるし、時間がたっても面白さはそこまで劣化しないので、過去記事を定期的に掘り起こして特定の需要をもつ人たちの目につきやすくしてあげることが大事です。
 
今回の「LINK@TOYO」の「MONTHLY KNOWLEDGE」への2022年度の人気記事掲載は、まさにそういったアプローチなように思いました。まあ、「MONTHLY KNOWLEDGE」という企画自体が、記事の掘り起こしが目的なので、今回の、というわけではないのかもしれません。でも、「MONTHLY」と期間をあえて区切って、定期的に記事を掘り起こしするのは、大学メディアの記事特性とマッチしたアプローチだといえます。

2パターンにわかれる、大学メディアの人気記事 

 リリースに載っていたもう一つのトピック、人気記事の続編記事の作成もナイスなアプローチです。大学メディアの人気記事は、過去記事がたまたま時事ネタにぶっ刺さってPVが跳ね上がるというのと、純粋に記事として面白いものが長い期間をかけてじわじわとPVをかせぐという2パターンがあるように思います。今回の「LINK@TOYO」で続編がつくられた記事は「明晰夢」をテーマにしており、読んだ印象としては後者になりそうです。
 
前者、後者、どちらのパターンであれ、人気記事を狙ってつくるのは、かなり困難です。もう少し詳しくいうなら、いつも狙っているけど、人気記事になるのはごく一部で、思いもよらないものが人気記事になることが多い、という感じです。しかし、前者は時事性があるので、続編をつくっても、できたときにはすでにタイミングを失している…となりがちですが、後者は時期関係なくPVを稼いでくれているので、続編をつくって人気をさらに後押しするというのが、比較的やりやすいという違いがあります。おそらく、新しく人気記事を模索しながらつくるより、人気記事の続編をつくる方が、PVアップという意味合いだけでいうとコスパはいいように思います。
 
もちろん、毎回、同じことをしていると、記事テーマや登場する研究者がかぶってしまって、何のためにメディアを運営しているのかわからなくなってしまいます。やるとしても、1年に1~2回ぐらいというのが現実的なような気がします。
 
インターネット検索すると星の数ほどオウンドメディアが見つかり、運営側としては、茫洋とした気持ちになることがままあります。とはいえ、闇雲にオウンドメディアを流行らすための手法を試せばいいかというとそういうわけではなく、大学メディア、さらにいうと自大学のメディアにあった形で露出を高めていかなくては、意味がないどころか、ネガティブキャンペーンになることさえあります。今回の東洋大学の取り組みは、大学メディアらしい手法でサイトのテコ入れをしており、他の大学メディアでも参考になりそうなアプローチでした。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?