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もはや新たなSNS?工夫いっぱいの成城大学のInstagramから感じ取る、入試広報の過酷さと面白さ。

私が社会人になりたての頃にFacebookやMixiが世に出はじめたので、高校生だった当時はSNSなんていうものは影も形もありませんでした。それが今や、SNSは高校生の日常にびっしりと根をおろし、情報収集源の中心になっています。大学もこういった状況を無視できるわけもなく、SNSによる情報発信に力を入れるところが多くあります。今回、見つけた成城大学もそんな大学の一つ。でも、ここの活用方法は、他とは少し違うんです。こういう力業も面白いなと思いました。

成城大学の取り組みは、簡単にいってしまうとInstagramをウェブマガジンとして活用するというもの。写真・動画に強いInstagramで、あえて文字情報を伝えようとするわけで、もうこの一文だけですごい力業な感じが伝わってきませんか?

おそらく、情報の伝達手段として文字(読み物)にこだわったのは、しっかり伝えるには文字が不可欠だと判断したから。Instagramを情報発信の場に選んだのは、高校生がよく利用する情報収集源だからでしょう。やりたいこと、利用したい媒体は明確ですが、先ほども書いたようにうまく噛み合ってはいません。

こういった状況を理解したうえで違和感なく情報が伝わるように、成城大のInstagramでは投稿内容がかなり工夫されています。一つは、各投稿の最初の一枚に、「お気に入りのアイテム」、「オススメ勉強法」など、企画内容がわかるようにデザインされた文字を載せており、この投稿で何を伝えようとしているのかがひと目でわかるようにしています。もう一つは、毎回、複数枚投稿なのですが、動画、ビジュアル、文字情報を載せた画像の3つを上手く組み合わせることで、Instagramの世界観を壊さずに、文字情報を伝えられるようにしています。

FireShot Capture 124 - 成城大学(@seijo_admission) • Instagram写真と動画 - www.instagram.com

成城大学のInstagram(https://www.instagram.com/seijo_admission/)

このようなフォーマットを生み出すには、かなり頭を悩ませたのではないでしょうか。実際に見てみると、Instagramというより、ある種、新しいメディアのような完成度になっています。なんというか、SNSプラットフォームを工夫でねじ伏せて、自校のオウンドメディアにしてしまったという感じ。固定概念を取っ払うエネルギーのようなものが伝わってきて、よくわからないロマンを感じました。

とはいえ、いくつか気になるところもあります。Instagramを開けている段階で、そのユーザーは動画や画像を見たいわけで、文字を読みたいわけではありません。そういう人に、文字情報に主眼を置いた情報発信はどこまで刺さるんだろうか、とか。Instagramは情報のストックにほぼ配慮されておらず検索性もないので、手間ひまかけて投稿しても過去投稿を見る機会があまりないんじゃないか、とか。Instagramの仕様が変わると、この施策自体が成立しなくなる可能性もあるんじゃないか、とか。

でも、このアンバランスさやリスクがあるからこそ、成城大学の取り組みは独自性が際立ち、広報活動としても目立つのではないかと思います。大学の入試広報というのは、楽しい情報の渦のなかを日々たゆたっている高校生たちに、自校の情報を何とかして伝える活動です。エンタメ情報の隙間を縫って、さらには他大学よりも先んじて自校の情報を伝えるには、たとえ強引であろうとも、伝えたいことを、伝えたいかたちで、伝えたいところで伝える、というジャイアンのような精神が必要なのかもしれません。そう思うと、このInstagramを使った情報発信には、入試広報の過酷さと面白さが詰まっているともいえ、なんとも味わい深く感じてしまいます。

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