時かけ

時をかけるおじさん 19 / どうせ忘れるじゃん問題



最近の話。ついつい、しょうがないような気もするけれどしょうがないで済ませてはいけないかもな、と思っている問題がある。


それは、

日々の父の行動について、


「どうせ忘れるじゃん」


と思っているということです。私が。


例えば、いつもリビングでテレビを見ている父。私は外から帰ってきて、翌日返さねばいけないのにまだ見ていなかった映画のDVDがあったので、「ちょっと映画みていい?」と聞くと、『ゴースト血管』についての特集を見ていた父が、「今大事なもの見てるからだめ」と言った。


例えばそういう瞬間である。私がそう思ってしまうのは。


私は不機嫌になりとにかくご飯を食べてさっさと自分の部屋に戻ろうと思っているのだが、チャンネル争いなど覚えていない父は容赦なく『ゴースト血管』について話しかけてくる。私はイライラする。ご飯を食べて部屋を出て行く。


まあ私もしょうもないといえばしょうもないが、

どうしてもそう思ってしまうのである。


(実際その翌々日あたりにも父は同じテンションで『ゴースト血管』の再放送を見ていた)


母が、点滴治療の薬変更などの都合があって、数日間入院することになった。

父は心配そうに色々と口を出すが、手を出すわけがない父に母は苛立つだけなので、

一人で準備をし病院へ出かけて行った。

父はポツンと見送るが、数分後には忘れている。


私も「今日夜少し遅いから」と言い残して外出しようとしたころ、

「そうなんだ。お母さんも今日遅いんだっけ?」というので、

「うん、そうだよ」という。


そのときに私の頭の中ではあの言葉がよぎっている。


この場合は一応、まあ余計な不安を抱かせてもしょうがないからという気持ちもあるけれど。


父は最近よく、「母を最近見かけないな」という。

母は今朝入院したばかりだからその日も含めてもちろん毎日顔は合わせている。

けれど母が自室にいってしまったり、目の前にいないと気づくと、父の中で「母はいない=入院か?」という思考回路になるらしい。だからよく不安げに、「お母さんいないのかな」とたずねてまわる。


まあかわいそうな行為ではあるけれど、結局毎日寛大に見守って不安を取り除いてあげられるかというと…私にはかなりできない。母ももちろん難しい。


どうせ忘れるじゃん問題は、認知症のかた周辺の人間ほど付きまとう問題だと思う。これは解消法はあるんでしょうか?

文 / ほうこ

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