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【医師論文まとめ】ショック! 父親の飲酒が子どもに及ぼす恐ろしい影響

背景

最近の研究から、父親の生活習慣が、精子を通じて子どもの発生や発達に影響を与えることが明らかになってきました。特にアルコール摂取量の多い父親から生まれた子どもは、胎児アルコール症候群(FASD)に似た症状を示すことが分かっています。しかし、父親がアルコール摂取を控えた後、どの程度の期間が経過すれば精子内のエピゲノムが回復するのか詳細はわかっていませんでした。

方法

研究者はマウスを用いて以下の実験を行いました。成熟した雄マウスに10週間にわたり、6%または10%のアルコールを自由飲料水として与え続けました(活動飲酒群)。別のグループは10週間のアルコール摂取後、4週間アルコールを止めてから解剖しました(禁酒群)。活動飲酒群と禁酒群のマウスから精子と精巣上体の各部位を採取し、精子内非コードRNAやミトコンドリアDNA量の変化を定量PCRなどで解析しました。また、RNAシークエンシングにより精巣上体各部の遺伝子発現パターンも調べました。

結果

活動飲酒群では、精巣ではなくむしろ精巣上体でミトコンドリア関連遺伝子の発現変化が見られ、部位特異的にミトコンドリアDNA量の変化もありました。一方、禁酒後4週間経っても、精巣上体の一部と精子内の非コードRNAにはアルコール暴露の影響が部分的に残存していました。特に酸化ストレス応答に関わるmiR-196aが顕著に増加していました。

論点

結果から、アルコールが精巣上体のミトコンドリア機能を撹乱し、ストレス応答を誘導していることが示唆されます。禁酒後もこれらの影響の一部が残るため、父親のアルコール摂取が精子を通じて子どもの発生に長期的な影響を及ぼす可能性があります。

結論

父親のアルコール摂取が子どもの発生に悪影響を及ぼす可能性があることから、男性も飲酒に関して教育を受ける必要があります。完全な回復にはより長期の禁酒が必要と考えられ、miR-196a等のバイオマーカーが父親のアルコール摂取の影響を評価するのに有用であると期待できます。今後、禁酒期間を延長した追試や、子どもの表現型への影響を確認することも重要だと思われます。

所感

これまで母親の飲酒に注意を向けてきましたが、父親の飲酒習慣も無視できない問題であることが明らかになりました。特に、アルコール依存症の父親から生まれた子どもたちは、FASDのリスクが高いと考えられます。

精子や精巣上体のミトコンドリアへの影響は長期にわたって残存するようです。子どもを望む数カ月前から禁酒を始めることをおすすめしたいと思います。また、miR-196aなどのバイオマーカーを確認することで、回復状況をモニターできるかもしれません。

子どもを安心して産み育てられる環境を整えるためにも、男性への飲酒に関する教育は欠かせません。親の飲酒が子どもの健康を左右することを、社会全体で認識する必要があると感じました。

文献

Roach, Alexis N et al. “Alterations in sperm RNAs persist after alcohol cessation and correlate with epididymal mitochondrial dysfunction.” Andrology, 10.1111/andr.13566. 3 Dec. 2023, doi:10.1111/andr.13566

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/andr.13566

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