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【医師論文まとめ】手術ではこれを使えば合併症が減る!?CEZよりABPC/SBTが術後を救う!?

背景

食道癌の手術では、術後合併症のリスクが高いため、抗菌薬の予防投与が重要である。しかしながら、食道癌手術における標準的な抗菌薬予防法は確立されておらず、第一選択薬としてセファゾリン(CEZ)が用いられることが多い。CEZは術野感染の代表的な起因菌である好気性細菌に対しては有効だが、口腔内常在菌の嫌気性菌には効果が乏しい。一方、アンピシリン/スルバクタム(ABPC/SBT)は、CEZに加えて嫌気性菌にも有効であるため、口腔内細菌を起因とする術後合併症予防に適していると考えられる。しかし、CEZとABPC/SBTの有効性を直接比較したエビデンスはない。

方法

2010年7月から2019年3月までの全国診療データベースを用いて、食道癌で開腹手術を受けた患者17,772人を対象とした。16,077人がCEZ、1,695人がABPC/SBTを予防投与されていた。両群の背景因子の違いを調整するため、オーバーラッププロペンシティスコア法を用いた。主要評価項目は術後縫合不全(SSI)、アナストモーシス不全、呼吸不全の発生率とした。プロペンシティスコアマッチングと機器変数法による感度分析も行った。

結果

ABPC/SBT群は、CEZ群と比較してSSI(オッズ比0.51)、アナストモーシス不全(0.51)、呼吸不全(0.66)が有意に減少した。また、呼吸器合併症、在院日数、医療費の減少も認めた。C. difficile 腸炎や非感染性合併症に差はなかった。感度分析でも同様の結果であった。

考察

ABPC/SBTはCEZに比べ、嫌気性菌に対する効果が優れることから、口腔内細菌による術後合併症を抑制した可能性がある。食道癌手術における抗菌薬選択のエビデンスとなる知見である。

結論

食道癌手術における抗菌薬予防には、CEZよりもABPC/SBTが有効と考えられる。今後、無作為化比較試験による高いエビデンス構築が望まれる。

まとめ

食道癌手術での抗菌薬予防にアンピシリン系のアンピシリン/スルバクタムを使うと、定番のセファゾリンと比較して術後合併症が有意に改善。手術部位感染や縫合不全、呼吸不全が減少し、入院期間の短縮にもつながる可能性が示唆された。

所感

CEZが定番の抗菌薬ですが、ABPC/SBTは嫌気性菌もカバーできるため、手術部位や吻合部の感染予防に理にかなっていると思います。

ただし検証は後ろ向き研究であることに注意が必要です。今回の知見は薬選択の参考にはなりますが、無作為化比較試験でのエビデンス構築が望まれます。個々の症例における嚥下機能や口腔ケアの状況も考慮する必要があるでしょう。

文献

Hirano, Yuki et al. “Antimicrobial Prophylaxis with Ampicillin-sulbactam Compared with Cefazolin for Esophagectomy: Nationwide Inpatient Database Study in Japan.” Annals of surgery, 10.1097/SLA.0000000000006182. 15 Dec. 2023, doi:10.1097/SLA.0000000000006182

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