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【書店さんを元気にする全国出張】東城(広島県)編 5/29

本日の移動距離838.4km 歩数4,815歩

いきなり東城編と書かれても、えっ?どこなの?という方もいらっしゃるかもしれません。でも多くの名だたる書店人さんなら、この地名に聞き覚えがあると思います。そう本日僕が訪れたのは、人口7,000人の山あいの町で書店業を軌道に乗せているウィー東城店さんです。

電車での移動が多いため、移動距離は長く歩数は少ないです。大きな都市への出張と違って、他の書店を回ることもできませんでした。でも僕は以前から、そこに本屋さんが経営を永続させるための秘密があると感じていました。実際、今日はとても価値ある一日になりました。

社長ご本人の筆ではないため全てを書くわけにはいきませんが、その一部をお伝えしたいと思っています。人口減少が続いている町(10年で9,000人から7,000人に減少)で売上を伸ばしているのには、理由があるのです。学ぶべき点が多すぎて僕は身もだえしてしまいました。

鴨ブックス社長の鴨頭嘉人(鴨さん)も、きっと悶えると思います。

この店は、店員さん一人一人がお客様と自然なコミュニケーションをとっていて信頼関係を築いています。何か困ったことがあったらウィー東城に相談してみよう、という商売には欠かせないお客様とお店との絆が中核にあるのです。

接客が目の前で展開されれば、誰しもが本物だとわかるはずです!

私がお店にいる間、入店されたお客様にはまずご挨拶。そしてお得意さまとの間にはすぐに温かい会話が生まれていました。「最近、よう日に焼けとるね」「農作業しとりますから」というような具合に。タバコをカートン買いされるお客様が多くいらっしゃるそうですが、その方々には奥様が喜ぶような景品を差し上げているそうです。夫婦の仲をとりもつ本屋。めっちゃ凄い!

そういうふうにお客様とお付き合いしていったら、評判は山を越えて、隣県からも「なんでも相談に乗ってくれると聞いたで」と車でやってこられるお客様もいらっしゃるのだとか。もしかしたら商圏が日本一広いリアル本屋さんなのかもしれないですね。

でもそれだけで売上が右肩上がりに増えるものではありません。社長が大切にしているのは人材教育。海外研修などを通じて、ウィー東城のDNAを受け継ぐ従業員さんを長い時間と愛情をかけて育ててきたそうです。人的資産の価値がどんどん上がっているのです。

売上が下がっている業界では、なかなか難しいことですよね。

全国的に見れば書籍・雑誌の売上は大きな下降曲線を描いてきました。でもそれはわかっていたことだと社長はおっしゃいます。ずっと業界内にいた僕もそう感じていました。だったら…先手を打って別のことを始めればいい、というのが社長さんの見解。それはごく自然な発想だとおっしゃいます。

もともと広い駐車場があるお店なのですが、数年前から美容院、コインランドリー、精米所、パン屋さん、卵の自動販売機などのビジネスを展開されてきました。それぞれ想定通り、あるいは想定を超える成果を収め、そこにきたお客様が書店に立ち寄ってくださるそうです。きっと逆もあるでしょう。

自ら発想し能動的に動いていれば「売れない。売れない」と嘆きながら、取次からの提案を待つという状況には陥り様がありません。社長には自分の会社を存続させ、従業員に給料を支払わなければいけないのですから。全部、自分にかかっていることを心の底からわかってらっしゃるんでしょうね。

ただ他所と同じく、東城にも近年2軒の大きなドラッグストアができました。でもウィー東城に来ているお客様は簡単には離れていかないな、と僕は感じました。書店受難の時代。個人経営の書店が潰れていく中、本業でも黒を出しつつ昨年はトータルで史上最高の売上をたたきだしたそうです。

お客様や従業員さんの感動秘話をうかがいながら「本屋さんって、こんなに素晴らしいドラマが生まれる舞台装置だったんだ」「本屋さんを絶対になくしてはならない!」とあらためて痛感しました。聞いてるだけで目が汗をかいてしまうようなお話でしたよ!

こんだけ書くと、この社長は自慢ばかりする鼻もちならないやつなんじゃないかと疑われるかもしれませんが、佐藤社長は朗らかでそんな下衆な野心は1ミリもないんです。だからこそ、困難を困難と思わず乗り越えていくことができるんだと思います。

あー、一人でも多くの方に佐藤社長の話をお届けしたい!そう強く思った一日でした。それでは、写真を何枚かご紹介します。

▼ウィー東城店様

▲記事のアイコンにつかったアンケートボックスの中身
お客様の熱い思いがめっちゃ詰まっていました。僕の胸も熱くなりました。ここでは書けませんが、なかには目ん玉が飛び出るくらい高額な景品を書かれたお客様もいたのだとか。都会ではこういうBOXの中は寂しいケースが多いものです。日ごろのお客様との関係性の深さが伝わってきますね!
▲めっちゃ大切!次に読む本がわかるコミック売り場
後でマンガ大賞を獲るような傑作を、いち早く見つけ出すプロフェッショナルがコミック売り場を担当しています。ご覧のようにゴールデンゾーンで、いくつかの作品をポップアップ展開されていました。この店のオススメを信じて、次に読むコミックを決めている若い読者の方も多いそうです。若者が減っていく街でこんな奇跡のような出来事が起きているなんて、信じられますか?まさにアメージング!
▲毎年展開されていて大好評の農業書フェア
コミック売り場では、若者に本屋さんで本を買う習慣を育てていますが、こちらのコーナーには農業や家庭菜園などをされているお客様にあわせた本が並んでいます。どちらも大切なお客様ですね。近隣を車で走っていても、農作業で日焼けされている方々をよくお見掛けしました。ます相手に興味を持つことはコミュニケーションの基本でもありますが、商売の基本でもあるんだなぁとつくづつ感じました。
▲松江の人気四川料理店のコーナー
店舗改修のためしばらく店を閉めるだけで、新聞の記事になってしまうほど人気店とのこと。隣県ですが、その評判は広島の山あいの町にも轟いており、まとめ買いされていくお客様もいらっしゃるそうです。千葉県行徳市の海苔や、タイコウさんという有名な鰹節店の商品も置いてありました。いずれも社長が良さをわかったうえで仕入れて、お客様に薦めるので販売に結びつくそうです。そうやって売ってもらえるなら、提供する側も嬉しいですよね!

(特典)自腹出張グルメwith佐藤社長

▲宿泊は社長のご自宅にお世話になりました
出張グルメ史上、最高に贅沢な紹介になるかもしれません。このお肉は、なんと先日バイデン大統領が食した神石高原牛なんだそうです!それを大自然のなかで炭火で焼いていただきました。社長と奥さんと弟さんの笑顔に囲まれて、もうなんというか「最&幸」な夜でした。鴨ブックスをきっかけに業界全体を書店利益率30%にする夢を絶対かなえるぞ!と思いをあらたにしました。僕も佐藤社長同様に朗らかに下衆な野心など1ミリもなく、思ったことをやっていきたいと思ってます。
▲古民家を改修して作ったご自宅から眺める素敵な夕日
仕事をした後にここに戻ってくることで、オンとオフのスイッチが切り替わるそうです。自律神経のバランスを最良の状態に保つために、そういうのって僕にも必要だと感じました。古民家を買うほどの勇気はありませんが、脳内だけでも切り替えられるスイッチを生活に組み込んでいきたいと思います。たくさん学ばせていただきました。佐藤社長、奥様、弟様、ありがとうございました!



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