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むしろペット禁止が規約違反! ~マンション・団地で猫を飼おう計画

にゃーん。

古い集合住宅の"不当なペット禁止ルール"を打破する活動報告の続きです。かたくなりがちな話題なので、冒頭いきなり柔らかくしてみました。今回は、先日理事会に対して「第二弾要求」を提出した報告です。

第二弾要求を提出

前回、2月末にペット禁止ルールの廃止要求を出したあとの「村長」との会談(前回参照)を踏まえて、内容を改めた「第二弾要求」を4月上旬に提出しました。

うちの団地ではどうも月頭の土曜日に理事会が行われているようなので、その直前に提出することで闇に葬らせず理事会で話題にさせることを期待してみました。うまくいったかどうかはわかりませんし、理事全員に緊張感を持ってもらいたいな~程度のことなので、どっちでもいいんですけどね。

第二弾要求の方向性は、「村長のお話をうかがえてよかった」「放し飼いは要求しておらず話がすれ違ったのは残念。でも、こちらの書き方が悪かった」というほぼデマに近いことを書いて低姿勢をなんとか維持しつつ、村長が話していた「懸念」を全否定するものにしました。

どうせ村長はスルーするしかなかった「痛いところ」を理事会に報告していないでしょうから、先日の村長との会談を「密室の会話」で終わらせず改めて理事会にも知らせることも重要です。

前回要求は一度撤回

しつこく同じ内容で再要求を繰り返すとスパム行為だと見做されるかもしれないので、前回の要求は一度撤回することにしました。前回の要求は「ペット禁止協約の廃止」でしたが、今回は「共同利益の維持推進のため、ペット飼育協約の見直しを始めること」を求めます。

会談では「ペットを飼いたいから飼わせてよ」とお願いしていると誤解されたふしもあるので、「一律ペット禁止は規約に反するから改善しろ」に改めたことになります。

「共同利益の維持増進」は、一般的な集合住宅の規約に「目的」として定めており、理事はこれに準じて任務を行なう必要があります。

規約第2条 組合は、団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物を管理するとともにそれらの使用に伴う組合員の共同の利益の維持増進をはかり良好な住環境を確保することを目的とする。

規約「目的」より

この「共同の利益の維持増進」は重要なポイントで、これこそが「秩序」を盾にして私権を制限してペット禁止ルールを許す根拠とされているのです。さらに大元を辿ると、民法一条がその背景にあると考えられます。

(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない

民法一条という"のっけ"から私権制限が許されていたことをご存じだった方はあまり多くないと思います。2020年に香川県で「ゲーム禁止条例」なんて馬鹿げた条例が施行されましたが、「公共の福祉」とか「秩序」といった曖昧な基準で私権を制限をするという、本来ならありえないルールが通ってしまうのはこの民法一条のせいなんですね。なお戦前、明治二十九年制定の大日本帝国ルールです。

もちろん「いきすぎた自由主義」を阻む意味ではこの民法一条は大切なものですが、「公共の福祉」の部分をこじつけて悪用されているのが問題です。際限なく悪用された結果、「みんなのためだ、ガマンしろ」というただの全体主義に行き着くことは言うまでもありません。

ただ、民法一条3項にあるように「許さない」としているのは"権利の濫用"であって、少なくとも公共の場に影響せず、行為そのものが濫用とされない場合にまで適用する根拠があるとは言えません。

むしろこれを逆手に取って、「一律ペット禁止ルールこそが公共の福祉や共同の利益に反する」という視点をもって、要求の意味を表現できないかと考えてみることにしました。

今回の要求では、具体的には以下3点を「共同利益に反する」として指摘し、改善を求めています。

①必要性を超えて一部住民の権利を過剰に侵害している
②資産価値の相対的低下
③訴訟、損害賠償リスクの存在

それぞれ、簡単に説明します。

①必要性を超えて一部住民の権利を過剰に侵害している

①は、秩序維持のための必要性を超えて住民の権利を制限するなら、そのこと自体が共同の利益に反するという指摘。また、これを放置することは、区分所有法(集合団地の規約に法的正当性を与えている)に違反することも指摘しています。以下は第二弾要求からの抜粋です。

現在では、「完全室内飼育」を前提として動物の種類ごとに飼育条件を定めることが現実的な打開策となり得ることが知られ、また動物愛護法改正の影響もあって、実際に数多くの集合住宅(築30年以下で6割以上)においてペット飼育が一部容認されるようになっています。
 古い知識に基づいて一律にペットの飼育を禁止し、秩序維持のための現実的な必要性を超えて住民の権利を制限することには、もはや明確な根拠はありません。
 現在のように、ペット飼育を嫌う一部の住民のために、ペット飼育を望むまた別の一部の住民の権利を全面的に侵害することは、当団地の規約も定める「共同利益」に反する状況と言えます。
 理事には、区分所有法が定める「対立する利害の平衡を図る義務」もありますので、可能な範囲で広く住民の権利が回復されるよう推進することを求めます。

第二弾要求より

②資産価値の相対的低下

②は、一律ペット禁止によって"住宅の資産価値を下げている"という指摘。当たり前ですが、ペット可能物件は人気があって一段お高いですからね。これもそのまま引用します。

 昔とは違い、現在「ペットを飼育できること」は集合住宅でも普通のことになりつつあるため、必要性を超えて「一律飼育不可」とすることは、住宅の価値を相対的に下げる大きな要因にもなっています。
 ペット飼育可/不可による分譲マンションの価格差は、一般に5~10%と言われおり、当団地も「一律ペット禁止」と認識されることで潜在的に100~200万程度の資産価値を減らしていることになります。
 決して無視できる金額ではなく、これは明らかに「共同の利益」を損なう事態ですから、改善へ向けて善処することを求めます。

第二弾要求より

資産価値の5~10%が100~200万円というのはうちの団地の中でもお高い方に合わせた金額ですけどね。

③訴訟、損害賠償リスクの存在

③は「訴訟になりますよ」という警告ですが、さすがにぼくが「訴えるぞ!」と脅すわけではありません。しかし、誰が訴えるおそれはありますから、訴訟費用や賠償請求を組合の予算で負担することになれば真っ向から「共同の利益」に反します。これも引用します。

 権利を侵害する一律ペット禁止では「争点」が生じるため、住民から訴訟提起され、場合によっては損害賠償責任を負うリスクが組合側に生じるおそれがあります。実際に全国で数多くのペット飼育関連訴訟が起きており、このリスクを放置することは、組合の共同利益に反します

第二弾要求より

これは正直ピンと来ないだろうと思っています。とはいえ「気にしなくていい」と言いきるのは難しいことなので加えておきました。

具体的施策の提案

前述のように、第二弾要求ではペット禁止協約の直接的な廃止要求を撤回し、上記3点の「共同利益に反する」指摘を踏まえて「協約の見直しを始めること」を要求しています。さすがに協約を真正面から改正するのはかなりの困難があるのと、逆にルールの穴を塞ぐ方向に行かれたくないため、ただちに協約そのものに手をつけないように考えなおしました。

ただ逆に、理事会側がルールの穴を塞ごうと専有住居内の飼育禁止を禁止するような協約の改悪をしようとした場合、それを阻止するのは比較的容易だとも考えられます。今回指摘した「②資産価値の相対的低下」を住民に周知するだけで改悪議案の否決に必要な"議決数の1/4"を確保できるのではないかと考えられるためです。ペットに関心のない人たちも、"金目"には無関心ではいられないでしょうからね。

なので「専有住居内のペット飼育を禁止する」議案を否決させることで「専有住居内のペット飼育は禁じられていない」と確定させる手は、奥の手としてはありかもしれません。このプロセスを経ると訴訟をするならかなり有利になると思われますが、とはいえ保護動物の譲渡を決める側の保健所や動物保護施設が「この規約はペット飼育を禁止していはいない」と見なしてくれることはないでしょう。

こうやって目が曇りそうになるのが訴訟を前提にすることの怖さなんですよね。司法というある種の仮想社会ではなく、保健所や保護施設という実社会に対して説得力を持たねばならず、むしろそちらの方が難しいわけです。ですから、やはりどうにかして「ペットOK」を明文化させることを考えないといけません。

そこで第二弾要求では、具体的な改善策として、「協約内で定められた理事会の"承認"権限に基づいて動物の種類ごとの飼育条件を定めること」を提案しています。「禁止されていることを承認するなんてありなの?」と思うでしょうけど、実は"あり"なんです。

この手の集合団地の規約や協約には「禁止事項」の次あたりに「承認事項」が定められているので、これを利用できないと考えたのです。

実際、うちの団地では禁止事項として「住宅を他の用途に使用すること」を掲げる一方で、続く承認事項には「住宅を他の用途(定期的に開く各種教室を含む。)に併用すること」が挙げられています。理事会の承認を得ることで「住宅を他の用途に使用すること」を可能にしているわけで、いくら禁止事項を定めても、理事会は承認事項にできることを示しています。

特に「完全室内飼育」なら、ちょうど"住宅の用途"に関することですから「住宅の他の用途」として承認事項で扱うことは不可能ではないはずです。

あまり良いやり方ではありませんが、ペット飼育者同士がいっせいに理事に立候補・就任して理事会で議決する手もありえます。もちろん、あまり独裁的に行なうのは良くありませんし、次期理事会に取り消されるでしょうからオススメはしません。とはいえ理事会に対して「法や規約に則って判断する必要がある」とプレッシャーをかけ続けることはどちらにしても意味があります。

村長の懸念は全否定

第二弾要求の主軸は3点の「共同利益に反する」指摘ですが、そのほかに、末尾に村長の懸念全否定集を兼ねた飼育条件の具体例をつけました。実は東京都衛生局が公開している「集合住宅における動物飼養モデル規程」というものがあるので、これに準拠することを前提にするとしてあります。

具体的には「自己の居室又は指定された場所以外で、動物の毛や羽の手入れ、ケージの清掃等を行わないこと」とか「動物の毛や羽の手入れ、ケージの清掃等を行う場合は、必ず窓を閉めるなどして、毛や羽等の飛散を防止すること」といった、ペットを飼育するうえで必要な周辺への配慮などが具体的に書かれています。

ところで会談の際、村長の奥様がピアノを演奏される方だということを聞きました。村長家では窓を二重窓にしているほか、部屋に防音設備を施しており、それを近隣に伝えることで奥様は堂々とピアノを演奏されているそうです。

だったらペットの騒音問題もそれでいいだろ! としか思いませんから「村長ご夫妻の姿勢を見習うべき」として飼育条件に「騒音設備の導入」を加えたりしています。

まさかダメなんて言わないですよね?

この先の見込みと予定

さてさて、それなりに鋭いところを突いたつもりの第二弾要求ですが、これですんなりと「ではペット飼育可能にしましょう!」と話が前に進むとは思っていません。

ただ、断られるにしてもそのロジックを知れば今後につながりますし、前回会談のように有耶無耶にされるのは困るので、今回は「書面で回答を」と求めています。

回答や、何らかの動きがあったらまた報告します。

(つづく)


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