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【映画】ファンサの嵐!『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(FNaF)』

【※注意】記事後半にネタバレが含まれます。

ウオオォーーー!!! なんだろうこの爽快感。
「超怖かった!」とか、「感動して涙が止まらない!」とか、感情大爆発することはなかったんだけれど、なんとなくモヤモヤ・ボヤボヤとしていたFNaFの世界観のくもりが一気に晴れたような……そう、解像度が上がったような。そんな晴れやかな気分だ。

さて、本記事は映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』の感想を、鑑賞後の興奮状態を忘れないうちに書き留めたものである。(忘れないうちにと言いつつ鑑賞から2週間以上経っており焦っている)

ネタバレが含まれるものについては記事の後半で書くこととする。「ネタバレはされたくないが、(ホラーが苦手等の理由で)楽しめるかどうか心配」というあなたのために、前半部分は映画のネタバレを極限まで削って書いてみたので、よかったら参考にしていただきたい。


FNaFって何?

この記事にたどり着いたあなたは既に『FNaF』という略称を知っているということなので、改めて説明する必要はないかもしれないが、念のため軽く記しておく。

Five Nights at Freddy's(ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ)……通称『FNaF(フナフ)』とは、スコット・カーソン氏が開発したインディーホラーゲームである。個人開発で始まったシリーズだが今や国境を越えて世界中で愛されている。
ピザ屋のバイト」「動物の人形が襲ってくるやつ」と言えばピンとくる方も多いだろうか。

——ひょんなことからピザ屋の夜間警備をすることになった主人公・マイク。警備員室で監視カメラをチェックするだけの簡単なお仕事だ……ただし、ピザ屋のマスコット人形(アニマトロニクス)たちが毎晩店内を徘徊し、警備員室を襲撃しにくることを除けば。
プレイヤーは警備員室にこもり、監視カメラやシャッター、ライト等を駆使して、彼らの侵入を防ぎつつ恐怖の夜を過ごす。果たして、マイクは無事に朝6時を迎えることができるのか?

突然大きな音・声とともに、おぞましい姿の人形が飛び出して驚かせてくる演出、いわゆるジャンプスケアを全面的に採用した作品でもある。


映画のあらすじ(ネタバレなし)

過去に弟を誘拐されたことがトラウマとなり、今も苦しみ続けている主人公・マイク。妹アビーを育てるため必死に仕事を探す中、ピザ屋の夜間警備という仕事を引き受けることになる。

それは監視カメラのモニターを確認するだけの簡単なお仕事……ではなかった。

現在は廃墟と化しているピザ屋だが、かつては機械人形たち(アニマトロニクス)が人気を呼んでいたようだ。
マイクが夜間警備をしている間、もう動かないはずの人形たちの目に光が宿り、店内を徘徊し始めて……


なぜ観に行ったのか?

はじめに断っておくが、私は「FNaFを心の底から愛してやまない古参ファン」というわけではない。ただし「好きな実況者がFNaF新作をやってくれたら嬉しくなる」程度にはFNaFがかなり好きだった。1・2作目とセキュリティブリーチは実況の力を借りて履修した。
好きだから映画も観た。理由はただそれだけである。

ちなみに……FNaFが映画化するということを初めて知ったとき、私も当然興奮したのだが、しかし私には2020年のモンハン映画というトラウマがあり昨今は原作と映像化作品とで内容が乖離し、ファンから批判が飛んだり嘆きの声が上がったりすることも少なくないので、今回も多少の不安があった。

しかし、日本に先駆けて公開された本国アメリカ版の評価は非常に高かった。心配は杞憂であった。日本のファンがわざわざアメリカ版を観に行き「最高!!!」と叫んでいるんだからきっと間違いないだろう、そんなこんなでフォクシーのようにダッシュして飛びついてみたわけである。


「にわか」知識で本当に楽しめたのか?

いやもう、すっごい楽しかった。

原作FNaFの舞台は警備員室という狭い空間だから、「隅から隅まで探索しないと気付けない」ものは少ない。実況動画を視聴するだけでもかなりいろんな要素・小ネタに触れることができる。

本映画はとにかくファンサービスが多かった。まだ日の浅いファンでも気付ける定番の小ネタから、世界観にどっぷり浸かったファンほど唸るような要素までたっぷりだ。
にわかだからと委縮するなかれ、迷ったら飛び込んでみるが吉だ。この映画にはそれだけの価値がある。


怖い?

怖いシーンもあるがそこまで身構えなくていい」という感じ。たぶんゲームの方がよっぽど怖い。

映倫の区分はG、あくまで一般向けなので誰でも鑑賞可能。私が行ったときには中学生くらいのグループも多数見受けられた。

一応ホラージャンルではあるので、暴力・武器・流血・その他痛々しい描写・おどろおどろしい音楽など、背筋がぞっとするシーンはたしかにある。
原作がジャンプスケアを多用した作品なだけあって、映画の中でも何度かジャンプスケア的シーンはあった。

しかし、ホラーの程度としては地上波のサスペンスドラマと同じくらいだと思う、身構えるほど怖くはない。「怖そうだから観るのやめる」というのがもったいなさすぎるので、FNaF好きなら勇気を出してぜひ観てほしい。

※ちなみに、私はホラーゲームの実況が大好きなので映画も全く怖くなかったが、ホラー系が極度に苦手な方やトラウマがある方、ジャンプスケアが苦手すぎて泣いてしまったりする方は念のため要注意だ。


パンフがすごい

本国も認めたFNaFファン・イシイニキ氏の、とにかく大ボリュームな濃密解説が掲載されている。
原作の世界観も解説しつつ、随所に散らばった小ネタや原作再現ポイントなどを事細かに教えてくれている。
こんなに詳細なFNaF本なんてなかなかないと思う。ファンはもちろん、映画から興味を持った新参のかたも是非手に取ってほしい1冊だ。

FNaFを全く知らない方やハマりたての方なら、「あれってそういう意味だったのか!」と新たな発見ができるだろう。
既にどっぷり浸かっている方は「そうそうアレ!」とニヤニヤが止まらないはずだ。

早くも完売する店舗が出てきているようなので、興味のある方はお早めに。

※映画鑑賞前に読むのはおすすめしない。FNaFファンはもちろん、FNaFを知らない方でも、「世界観を知りたいから」と映画の前に読んでしまうのはもったいない……!


アニマトロニクスがすごい

声を大にして言いたい。アニマトロニクスがかわいい!!
CGを使わず、この映画のためにイチから作ったというのだから驚きだ。「CGじゃない」という事実が可愛らしさと恐ろしさをより高めていて素晴らしかった。マイクを襲いに来る彼らはモーションキャプチャーのスタッフではなくて、本物の機械人形たちなのだ。

ゲームでは基本的に静止した状態で出会うことが多い彼らだが、映画では本物の機械人形が画面の向こうで動いている。まさに「生きている」感じがした。
私は感動のあまり声が出そうになった。マスクの下の顔がどうにもニヤけてしまって大変だった。


前半のまとめ

ネタバレ要素を極力排除したらなんだか薄っぺらい文章になってしまったが、私が言えるのはただ一つ「迷っているなら観たほうがいい」、これに尽きる。

FNaFファンを唸らせる仕掛けをたくさん盛り込みつつ、主人公マイクや妹アビーの心の動きが丁寧に描かれている。
特にマイクに関しては、FNaFを知らない方が鑑賞しても「過去のトラウマと葛藤しつつ必死に妹を育てる主人公」として魅力的に映るだろうし、ファンにとっては「『あの』マイクってこういう人物だったんだ」と、世界観の解像度を上げる一因になると思う。

さあ、今すぐあなたも映画館へGOだ!!



ワンクッション:ここからネタバレが含まれます

これ以降、映画のネタバレを交えた感想が長々と続くのでご注意ください。

※警告※
前述のとおり、私のFNaF知識はゲーム実況を観た程度。考察ブログや解説動画等は、現時点ではまだあまり拝見できていない。
実況も1作目・2作目・SB・Ruin完走、3作目・4作目チラ見という程度で、それ以外の作品に関しては全く触れられていない。

そのため、ここから先の感想・考察に関しては間違っているものや的外れなものも多々含まれる可能性がある。あまり鵜呑みにしすぎず、「そういう見方もあるんだな」程度に楽しんでいただければ幸いである。


ワンクッション用画像。特典ステッカー、スマホケースに挟むのにぴったりサイズで嬉しい










【ストーリー内容について】

★まず邦題がちゃんと『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』なのがいい。『フレディと恐怖の夜』みたいな謎ダサ邦題にならなくてよかった。

物語が「6:00」のアラームで始まったことに感動した。しかもきちんとデジタル時計。
主人公のマイクという人物が、どこの誰とも分からない男性なのではなくれっきとした『FNaF』の主人公なのだということ、そして我々が今観ているのは紛れもなく『FNaF』の映画なんだということが一瞬で分かるシーンだった。

ゲームは「6:00」で終わるから、これはゲームの外側の話が始まる合図。『FNaF』の映画の始まり方としてパーフェクトである。
時計ひとつでここまで感動したことないぞ。


★主人公マイクがピザ屋の警備をやらざるを得なくなった理由が丁寧に描かれていてよかった。

両親がいないこと、自身も妹も精神が不安定なこと、おばに妹の親権を奪われそうになっていること等々、さまざまな理由が絡み、マイクは「誰にも頼ることができない」状況にさせられていた。気付いたときにはピザ屋の警備を引き受ける以外の道がなくなってしまっていた。

このあたりが時間をかけて丁寧に描かれていたのは、個人的にはかなり好印象である。原作のファンならば、一度は「こんな恐ろしいバイトなんてやめちまえ!」「主人公はどうかしてる!」と考えたことがあるだろうが……マイクはそういうわけにもいかなかったのだ。なぜ主人公がこんな場所でこんな仕事をしているのか、そこが分かっただけでも嬉しい。

映画で登場した設定がゲーム本編に直結するのか、それともパラレルワールド的な存在なのか私にはわからないが、「こういう解釈もできるよね」という方向を公式が示してくれただけでも大きな価値はあったと思う。


★個人的には、主人公マイクを中心とした人間関係が若干複雑で……具体的に言えば、アビーが「娘」でなく「妹」であること・ギャレットも「息子」でなく「弟」であることや、親権を争う相手が「妻」でなく「おば」であることなどが少し分かりにくく、頭の中を必死に整理しながら観ることになった。人の顔と名前を覚えるのが苦手なので余計に戸惑ったのかもしれない

初見時にはちょっと混乱するかもしれないが、振り返ってみれば悪くない設定ではあったかなと、自分の中では一応納得できた。前述のとおりマイクが「誰にも頼ることができない」ことを強調するなら、血の繋がった家族はなるだけ少ないほうがいいだろう。ゲームの中でも、主人公マイクの「娘」「息子」「妻」などの情報は出ていない(と思う)から、急に出したらファンが困惑するのではという懸念ももしかしたらあったかもしれない。
そういう意味ではここも、映画オリジナルの設定を加えたとはいえしっかり原作準拠なのが伝わってくる。嬉しい。


★いきなりマイクが警備員室を出たのがびっくりしたという意見もあった。
個人的には、「警備の仕事」をしに来た者が警備員室を出て見回りするという展開自体には、特に違和感を抱かなかった。ここはむしろ、一晩中警備員室から出ないゲーム版主人公のほうが違和感が大きいのではないだろうか

しかし……ゲームはゲームで、「こういうルールだから」の一言で割り切れてしまうのが強い。ゲームというのは、多少無理があるシステムでも「そういうふうに戦うゲームなので」で解決できてしまうから、実は無理に理由を付ける必要はないんじゃないかと思う。

そこをあえてもう一度深掘りして、「いや、ゲームの都合上はそうだったけど、実際警備の仕事しろって言われたら店内の見回りくらいするんじゃない?」と、ひとつずつ主人公の行動を丁寧に噛み砕いた結果がこの映画なのではないか。
ゲームと映画とで異なる表現があるのは当然だ。細かいところを全部つっついてあれが違うこれが違うと粗探しするよりも、「ああ、これはこういうふうに描かれたんだね!」とその差異を楽しむほうが、私は好きだ。


★マイクが初日から爆睡をかましたことについても様々意見があったが、この時点でのマイクは
・このピザ屋の人形が動き出すなんて知らない
・真面目に警備の仕事をするよりも、夢の中で弟を探すことの方が大事
という状況だったので、個人的には特に違和感なく観られた。「何かしら仕事をしている」という事実さえあれば妹の方の問題はクリアできるので、あとは弟の問題をなんとか解決したかった、だから寝た。それだけである。きっと。

(あるいは、ここで主人公を爆睡させることにより、このあと何が起こるか知っているファンをわざとビビらせていたのかもしれない……?)


★過去(弟)と現在(妹)との間で揺れ動き、結果的に妹を守ることを選んだマイク。拍手必至の感動シーンだ。

「過去に囚われて大事なものを見失いかけるも、現在(未来)に目を向けて、本当に守るべきものの存在に気がつく」というシーンは、ある意味感動ストーリーの王道展開である。ただ、王道というのは、長年万人に愛されて(信じられて)きたからこその「王道」なのである、と私は思う。大袈裟に言えば「王道展開には間違いがない」のである。
実際、「家族愛が素晴らしい」「妹との関係性が丁寧に描かれていてよかった」という感想も目立つので、あのシーンは多くの人の心をがっちり掴んでいるのだ。私は感動を通り過ぎてむしろホッとした。

念のため言っておくが「王道なんてつまんないじゃん」と言っているわけではない。むしろ、「王道すぎてつまらん」という意見がもしあったとき「王道だからこそいいんだよ」と返すために書いている。
インディーゲームの映画化という時点で既に結構難しいことをしているので、たった2時間足らずの映画において「FNaFの世界で」心を掴むには、ああいう王道展開が一番信用できるし、安心するのだ。と私は思う。


【ホラー展開あれこれ】

★ジャンプスケアは思ったより少なかった、しかし確かに存在していた。ああ最高、これぞFNaF! ……いやジャンプスケアで安心するホラーってなんだよ

特にBB(バルーンボーイ)!! 彼の登場と、彼が本作の貴重なジャンプスケアを3回も引き起こしているというのが二重に嬉しかった。


★「扉を開けても、外に出ても、振り返ってもどこにもいない……と思ったらいたぁぁ! うわあああ!!」というような、いると思った場所にはいないのに油断した頃に来るタイプ、すなわちある程度焦らしてから最後にトドメを刺されるタイプの恐怖は、FNaFというゲームの中では難しいのではとも思っていたが、映画化で見事に実現してくれた。
マイクのおばの手先がピザ屋を襲撃した際の、チカ&カップケーキの登場シーンなんかは本当、ひたすら焦らされて手汗がびっしょりになった。最高。


★「原作ファンほどビクビクしてしまうシーン」がうまく取り入れられていたんじゃないかなと思う。元ネタを知っているからこそ、この後何が起こるか想像がつき、原作ファンでない人よりも先に恐怖に気付いてしまう。結果、長い間焦らされたり、実は何も起こらないのに無駄に緊張させられていたりした。

例えばフォクシーのダムダム。あの声がしたということはフォクシーが盗塁しにくるダッシュで襲いに来る合図。原作未履修ならせいぜい「何か起こりそう」程度のところ、原作ファンは「フォクシーが来ちゃう!!」と早々に身構えてしまうのではないか。フォクシー推しの方はダムダムだけで思わず息を呑んだことだろう。

あとはエンドロールで流れた『大きな古時計』のオルゴールも、個人的にはズルいなあ~と(もちろんいい意味で)思った。
いわずもがな、あれはFNaF2のパペット登場のフラグである。パペットの襲撃を回避するには、オルゴールが途切れないようにネジを巻き続けなければならない。つまりオルゴールの音が途切れたら、詰み。
エンドロールのオルゴールは徐々に音がゆっくりになっていく。「早く巻かないと切れちゃう!」「まさかエンドロール中にパペット出てくる!?」と座席で冷や汗をかいていたのは、きっと私だけじゃないはずだ。
……結局出てこなかったんですけどね。一本取られた。


ダクトの使い方と、ミスター・カップケーキの使い方が上手い!
映画冒頭でも使用されたあのダクトは、映画では人間が通れるくらいのサイズであり、人間とかなり体格差のあるアニマトロニクスが通るのは厳しそうだった。そもそも本物の(CGでない)アニマトロニクスに狭い場所を移動させること自体結構難しそう。(フォクシーの廊下ダッシュすらかなり苦労したらしいので)

対してゲーム内では、ダクト内をアニマトロニクスが移動しまくるので、ファンにとって「FNaFのダクト」は「危険なもの」でなくてはならない。「ダクトがある、ここから脱出できるぞ!」なんて安心できるわけがないのだ。

そこでカップケーキの登場である。カップケーキは他アニマトロニクスよりはるかにサイズが小さいので、ダクト内を自由に動き回れる。噛み付いたときの攻撃力も申し分ない。
カップケーキの採用はFNaF4リスペクトからきているのかと思ったが、それだけではなかった。彼も周囲に負けずしっかりホラーを演出してくれたのだ。

チカがカップケーキをダクトに入れ、ボニーとともにゆっくりカメラを振り返るあのシーン……最高にFNaFらしさを感じられてゾッとした。やはりFNaFのダクトはこうでなくては!

上記のチカのシーンがお辞儀に見えちゃったのは内緒だ


【ファンサあれこれ】

★ここまでで既に「BB」「ダムダム」「オルゴール」「ダクト」など、さまざまな原作準拠小ネタ要素に触れてきたが……映画を観た方ならお気づきだと思うが映画FNaFの小ネタの量はこんなもんではない

・一瞬映る“IT'S ME”
・OPムービーが本編幕間のミニゲームを模したドット映像。かつ、この映像の中で誘拐事件が語られ、犯人も既に登場している
・警備員室に扇風機、ジュース、ポスター
・監視カメラに映る人形の角度や配置が完璧
・ゴールデンフレディやスプリングボニーの登場

などなどなど……これでもほんの一部なのだから驚きだ。パンフのイシイニキ氏のページやSNSでの口コミを見ても、本っっっ当にたくさんの小ネタが仕込まれているのだと分かる。

そして、これらの小ネタが評価された理由は、数の多さももちろんだが、登場した場所がゲームと同じ(ことが多い)というのも大きいと思う。扇風機が警備員室ではなくアビーの部屋にあったらどうだっただろうか? ポスターがショッピングモールに飾られていたら? 監視カメラが1ヶ所しか設置されていなかったら? それはFNaFのふりをした別物になっていただろう。

あれだけの数の小ネタを、分かりやすい場所・タイミングで登場させることにより、ファンは「これゲームで見たやつだ!」と気付きやすい。だから「これはFNaFなんだ」と安心できるし、嬉しいし、物探しゲームをしているみたいで楽しい。
誰かが「原作者が作った二次創作」みたいなことをどこかで言っていた。まさにその通りだと思う。原作を知り尽くした原作者本人だからこそ、ファンが喜ぶポイントもよくわかっていて、映画もそのとおりに作ってくれた。本記事のタイトルにもなっているが本作はまさに「ファンサの嵐」なのである


★BBについて少し補足。ここから先は私の想像がかなり入るのでご注意。

本作のBBは、動くアニマトロニクスではなくただの人形として登場する。登場の仕方がやたらファンキー(?)だが一旦触れないでおく。

ゲーム版BBはシリーズ2作目で初登場。主にダクトを利用して接近してくる。
彼は主人公を直接襲撃することはない。しかし、一度警備員室に入ると最後まで退室してくれない上、厄介な妨害をいくつも繰り出してくる。
簡単に言うとBBが警備員室に侵入したら詰みである。そのまま死を待つのみだ。

ここで、BBの侵入を防ぐときに必要なのが、FNaF2を象徴するアイテム・フレディの頭である。プレイヤーは、フレディの頭を被り着ぐるみのフリをすることで、各種アニマトロニクスの襲撃から身を守ることができる。

……では映画の話に戻ろう。劇中でBBを見つけたマイクはどうしていただろうか。そう、BBの向きをわざわざ後ろ向きに変えていたのである。

ゲームと映画、両者には『BBから目を逸らす』という点が共通しているのではなかろうか。要は、なんらかの方法でBBに「なぁんだ、人間なんかいない、気のせいだ」と思わせる、あるいはそういうテイにする必要があるのではないか……と思う。(前述した「私の妄想がかなり入る」とはこの点についてである)
FNaF2では、フレディの頭を被って人形のフリをすることにより「気のせい」状態にできた。同じ方法でBB以外のアニマトロニクスも対処可能だ。しかし、映画ではフレディの頭を被るわけにもいかない(物理的に不可能だし、そんな対処法をマイクは知らない)から、こちらが何がするのではなくBB側を動かすことによって、「気のせい」状態を恣意的に作り出す必要があったのではないか……なーんて。
考えすぎかもしれないが。

もしあそこで、マイクが「可愛い人形だな」とBB人形を警備員室のデスクに飾っていたら……どうなっていたんだろうか。


★「ヴァネッサ」の存在について。
映画に登場した、金髪ポニーテールの女性警察官ヴァネッサ。彼女はマイクに協力的な姿勢を見せながらも、本作の黒幕の娘であることが作中で判明している。「父に逆らえなかった」と言いつつ最後は死ぬ気で父に抵抗するなど、彼女なりの悩み、迷い、葛藤がうかがえる。

さて、この名前、この見た目、どこかで見たような……そう、FNaFセキュリティブリーチ(以下SB)だ。
SBにもヴァネッサという名の金髪ポニーテールの女性が登場する。しかも職業は警備員。ピザプレックスに迷い込んだ子どもを探している警備員、という字面だけ見れば一見害はなさそうだが、彼女のもう一つの姿はSBの黒幕「ヴァ二―」。主人公たちの行く手を阻むヴィランである。
……と思いきや、実は「ヴァ二―」の人格は「ヴァネッサ」とは別物だという。『本来ヴァネッサは人を襲ったりなどしない普通の(良心を持った)警備員で、ヴァ二―は洗脳によって生み出された別人格である』という説が有力である。

何が言いたいか。ヴァネッサは敵であり敵ではない。その場その場で立場がころころと変わるのだ。
味方になりたいけど父に逆らえない映画ヴァネッサ。別人格でひどい目に合わせた罪滅ぼしをしたいSB~Ruinヴァネッサ。
映画の舞台がFNaF1作目であるのに対し、SBはずいぶん近未来的な話なので、このふたりの「ヴァネッサ」が同一人物なのかどうかはわからない。ただ私は、同一人物かどうかは最重要事項ではなくて、「『ヴァネッサ』という人物」の存在そのものが大事なのではないかと思った。

ヴァネッサの父である「彼」が物語の黒幕だという点は映画でもゲームでも共通している。「ヴァネッサ」という存在は、黒幕に最も近い立場でありながら、良心の呵責に苦しんでおり、ヴィランになりきれないヴィラン……なのではないか。
もしはじめから父に協力するつもりだったなら、わざわざ警察官や警備員のような仕事は選ばなかっただろう。彼に協力はしたくない、逆らいたい意志はあるが大事な一歩がなかなか踏み出せない。あるいは彼の洗脳により従わざるを得なくなっている。そういう意味では、彼女も「彼」の被害者のひとりなのかもしれない。


★エンディングでファンメイドの曲が使われるという神対応っぷり……!
通常、なにかしらの「原作」「元ネタ」「古いバージョン」をリメイクする・あるいは続編を制作する場合は、楽曲も原作のアレンジバージョンが使われることが多い。前作のメインテーマに使われた曲のフレーズを一部流用するとか、楽譜はそのままに使う楽器の種類を変えるとか。
FNaFはそのまんま来た。すごい。

ちなみに……申し訳ないが、私はこの曲を1~2回聞いた程度で、正直流れてきても「なんか聴いたことあるかも?」程度にしか感じなかった。ああ本当もったいない、聴いておけばよかった……今では毎日聴くほどハマっている。

今から見に行く方にはぜひこの曲を聴いてから行ってくれと伝えたいが、しかしあからさまに伝えると「そう言われるってことは流れるんだな?」とネタバレになりかねないので悩ましいところだ。サブリミナル的に流してやりたい。
本当、エンドロールまでずっと感情が忙しい映画だ
















まとめ(ネタバレなし)

はじめに出てきた感想は「ありがとう」だった。

FNaFは好きだ。間違いなく好きだ。でもにわかだ。人形が襲いかかってくることくらいしか知らない。主人公の名前は? 電話の男はなんて言ってる? 黒幕はどんな奴? 実は6夜目以降もあるんだぜ? そんなの全く知らなかった。

でも、PVを観て「FNaFだ!」とすぐわかった。それがまず嬉しかった。

本映画はまさにファンサービスの嵐、FNaFファン向けの映画であるが、同時にFNaF世界への入り口でもある
この映画が「よくわからなかった」なら、パンフを読んだり、ゲームを実際に遊んだり、実況動画を観たり、攻略・考察サイトを覗いたりするとよい。本映画に出ていた要素はだいたいゲームと繋がっているので、ゲームの知識を付けることで同時に映画の理解も深まる。気付けばそこはFNaF沼だ。
私もまさにそんな感じだった。元々知っていて自力で気付けた要素も多いが、あとからパンフやSNSで知った部分も多く、映画を観る前よりも観た後の方がよりFNaF沼にハマってしまっていた

物語そのものももちろんよかったが、「この映画が存在すること」が何よりも嬉しい……だから感動や衝撃よりも感謝の気持ちが勝っている。ありがとうFNaF!



余談1

ユニバーサルなんだよね……? USJに来てくれないかなあ……
ホラーナイトとの相性が良すぎると思う。FNaFのホラーメイズで遊んだり、フレディたちと一緒にゾンビデダンスを踊ったり、FNaF仕様のピザを食べたり……グッズもたくさん欲しい……お願いします……アッもちろん常設でも大歓迎です……お願いします……なにとぞ……

余談2

気が付いたらボニー推しになっていました。ありがとうFNaF(?)

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