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従業員サーベイが「大変」なのはなぜか?

こんにちは。HRMOS WorkTech研究所の友部です。
今回は従業員サーベイ(アンケート)の話です。組織の課題発見や従業員の方々のコンディションを把握するに当たり、従業員の方々にアンケートで直接聞くというのは非常に有効な手段です。私も人事で何回も関わったことがありますが、時々こう感じてしまうことがあります。

従業員サーベイは大変。

人事で従業員サーベイに関わって、「こりゃ大変だ」、と感じたことがある方もいらっしゃるでしょう。何が大変のか列挙してみます。

  • サーベイの設問設計が大変。

  • 経営や従業員の方々へのコミュニケーションが大変。

  • 従業員の方々が回答してくれなくて大変。

  • 結局会社が何も変わらなくて大変。

これらの辛さに耐えきれず、せっかく一生懸命作ったサーベイを辞めてしまったり、そもそもサーベイを始めることが出来なかったりする人事の方もいらっしゃるかもしれません。

今回は「なぜ従業員サーベイが大変なのか」というところを解きほぐしていきつつ、けれども人事におけるデータ活用の観点ではサーベイって非常に有効な手段ですよ、というお話をしたいと思います。

なぜ従業員サーベイが大変なのか

サーベイの設問設計が大変。

従業員サーベイを実施するにあたってまず最初に考えるのは、設問設計。アンケート形式なので、従業員の方々にどのような質問をするか、を考える必要があります。

悩むポイントとしては、

  • そもそも何を聞いたらいいのか見当がつかない。

  • 潜在的な課題を知りたいけどどう聞いたらいいかわからない。

  • 顕在化している課題については聞かなくていいのか。

  • 網羅的にいろいろ聞きたい。けれど抜け漏れありそう。

  • 設問数がどれくらいが適当だかわからない。

・・・などがあるかと思います。

また、設問の内容だけではなく使用する文言にも悩むポイントがあります。一つの単語でも、人によって解釈が変わってしまう。わかりやすい例だと「経営」と書いてあったら、それは誰のことを指すのか人によってイメージが異なります。「所属部署」と聞くとそれは「課」のことを指しているのか「部」のことを指しているのかわかりづらい。そういった細かい表現にも気を遣わなければならないので大変です。

経営や従業員の方々へのコミュニケーションが大変。

なんとか頑張ってサーベイの設問設計ができたものの、経営に提案するとダメ出しをもらってしまう。人事と経営では見えているものが違うので、課題感がずれるというのはよくあることだと思います。そこのすり合わせに苦労します。

また、従業員の方々への説明も大変です。「なぜサーベイをやるのか」「なぜこの設問なのか」など多くの質問が飛んできます。質問が来る分には興味を持ってくれているのでまだよいかもしれません。従業員の方々がサーベイに全く興味を示すことなく、無反応であることが一番大変です。

従業員の皆さんが回答してくれなくて大変。

さて、経営にも従業員の方々にもサーベイの必要性や内容について説明することができました。サーベイの準備も整い、アンケート回収を開始します。しかし、従業員の皆さんがなかなか回答してくれないとなると大変です。

回答率100%を目指す、というのは非常に難易度が高いと思います。サーベイに「回答しない」というのも意思表示の一つですので、そこを無理に答えさせても分析には使えないものになってしまいます。とはいえ、回答率が50%を切るような状態では、正確に会社や組織の課題、従業員のコンディションを分析することはできません。きめ細かくリマインド(回答催促)して、マネージャーの方々にも協力いただいて、なんとか従業員の方々からアンケートを回収していく・・・大変です。

分析しても課題がわからなくて大変。

従業員の方々からアンケートを回収できました。早速データを集計してみたものの、どうやって分析するか、ここから課題を見つけ出すか、がよくわからない。回答結果の悪い低い項目が問題のようにも見えるけど、そもそもこれって会社として重視している項目じゃないので、課題として深堀りするべきかよくわからない。

また、会社全体で見るだけでなく、色々な軸でセグメントを切って分析してみたいとは思うものの、そのデータをアンケート結果に紐付けることができていなかったり。本来であれば、組織単位で集計したり、入社年や在籍年数、職種などいろんな軸で分析してみたかったが、きちんとデータが整備されておらず、どこに課題があるのか深堀りができないので大変。

結局会社が何も変わらなくて大変。

アンケートからなんとか課題を見つけることができても、そこから次のアクションに動けないことがあります。課題に対してアクションを起こそうと思っても、そのためのリソースが用意されていないために何も出来なかったり、課題について経営やマネージャーにフィードバックしたものの納得感が醸成できず動いてもらえなかったり。

また従業員目線で見ても、サーベイに回答した結果が何も見えないことがあります。そもそも課題に対するアクションがなければ何も変化がありませんし、集計結果に関するフィードバックがなければ回答に答えた意味も感じることができません。

アクションがなければ、結局会社も組織も何も変わりません。せっかく頑張ってサーベイを実施したのに、なんのためにやったかわからないと、辛くなってしまいます。

けれども従業員サーベイは人事にとって強い武器

ここまでサーベイがどう大変なのか、について書き並べてみました。いくつか心当りのある方もいらっしゃると思います。

こんな大変な従業員サーベイは無理してやらなくていいのでは、と思ってしまうかもしれませんが、それは非常にもったいないと思っています。なぜなら、従業員サーベイは人事にとって強い武器になる、と考えているからです。そこには大きく3つの理由があります。

1. 従業員の体感に基づくデータを収集できる

人事データといってもいろいろありますが、日常の人事業務で扱っているデータには「どう感じているか」というような感覚的なデータは少ないです。例えば、従業員の名前や所属部署などの情報はフィーリングで入力するものではなく、誰か見ても同じ理解ができるようなデータとして蓄積されるべきでしょう。

一方で従業員サーベイは、従業員が「どう感じているか」を直接的に集める形になります。実際に会社で発生している事象はどうあれ、それを見た従業員自身の体感に基づくデータとなるわけです。

これは人事やマネジメントラインからは見えない側面なので、従業員の状態を理解する上で重要な情報となります。また、設問の設計によっては従業員の期待値もわかるので、それに合わせた人事施策の設計もできるでしょう。従業員の期待については以下のnoteで書かせていただきました。

2. データが収集しやすい

従業員サーベイは多くの場合アンケート形式で実施されると思います。これまでの人生で、一度もアンケートに答えたことがない、という方はほぼいないでしょう。ですので、アンケートフォームを渡されれば従業員の皆さんは答えることができ、その結果をデータとしてどんどん蓄積することができます。

また、アンケートを集める仕組みとしてアンケートツールも利用できるものがたくさんあります。少しだけ使い方など調べれば実施できるツールもあるので、従業員サーベイを実施するハードルも低いと思います。

3. 人事における分析に必要な要素を揃えることができる

以前のnote "人事における「データ活用」を阻む 3つの壁" で以下のように書かせていただきました。

私は分析というものは、「あるべき姿」と「現状」のギャップから「課題」を見つけ出し、施策を実施し効果を測定しながら解決すること、とビジネスにおいては位置づけていますが、この「現状」の可視化や効果測定に用いるKPIに必要なのがデータです。

人事における「データ活用」を阻む 3つの壁

人事におけるデータ分析で難しいポイントは、「あるべき姿を決める」「現状を知る」「施策の効果測定を行う」ですが、サーベイが正しく設計できるとこれらのポイントをクリアすることができます。

  • あるべき姿を決める、アンケートの設問設計をより明確にできる、人財として、組織として、何を重視するか、を設問にすればよい

  • 現状を知る、アンケートに答えてもらうことにより、従業員がどう感じているか、定量的に把握することができる、特に、「あるべき姿」として設計した設問の回答状況により、課題を浮き彫りにすることができる

  • 効果測定、サーベイ実施→課題抽出→施策実行→サーベイ実施というサイクルで、実施した施策の効果をサーベイにより確認できる

逆にこれらを意識しないと、有効なサーベイを実行するのは難しいと思います。

前半で書いたなぜ大変なのか、を解決するために、これは重要なポイントとなります。サーベイのスタート地点を明確にすることで、サーベイの設問設計がしっかりでき、目的が明確になれば経営や従業へのコミュニケーションもスムーズになる。分析の軸も目的に合わせて実行できる。課題が明確になるので、それに付随するアクションを実施できる。という流れで、有効なサーベイが実施できます。

サーベイを効果的に実行するためのポイントはまだまだあります。有効なサーベイのやり方の詳細についてはこのnoteでまた書きたいと思います。

というわけで、今回はサーベイは大変なだけではなく、きちんと目的を定義できれば、非常に強い武器になる、という話でした。
今後も、人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、引き続きお気軽にお申し付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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