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素人がSPAC(特別買収目的会社)を批判してみる

アメリカの株式市場ではSPACが大流行りです。特別買収目的会社のことですが、「何かの企業」を買収することを目的として資金を集めて上場してさらに資金を集めてそのお金で未上場の将来有望な企業を買収するための会社です。

そもそも将来有望な企業自体が独力で上場した方が良いんじゃないの?と思ってしまいますが、上場に当たっては審査が厳しく時間もかかりますし、必ずしも上場で資金調達が上手くいくとも限りません。SPACに買収される場合は、上場企業が買収するので審査も未上場から上場するときほど厳しくなく、またある程度の資金調達が確実に出来ます。

買収された企業が存続会社として残りますので、実質的にはIPOの抜け道みたいなものです。元々は似たような仕組み(ブラインドプール)で裏口上場した企業の被害が80年代に続出したために認められていませんでしたが、90年代に投資家保護や不正防止の仕組みを整えたことで認められるようになりました。

投資家保護といってもIPOとはやはり差がありますので、その分の危険性は存在します。SPACに限らず新規上場企業の株価が上下しがちですが、投資家が自己責任の下でSPACに投資する分には問題ないというのが規制当局の見方なんでしょう。一応、アメリカ証券取引委員会(SEC)はSPACに関して何度も警告を出していますけれど。

ただ、リーマン・ショックにしろドッドコムバブル崩壊にしろ、相場の熱狂下では許されていた資金調達手法やザル審査のIPOも、いざ熱狂が冷めて大暴落を迎えてしまうと、
「あれは異常だった」
「許されないことだ」
「なぜあんなことが認められていたのか」
とか後知恵であれやこれや非難が巻き起こるものです。危険な債券をまとめたらトリプルA格付けになったサブプライムローンとか、何もしていないドッドコム企業の株価が暴騰していたこととか、時代が変わっても人間は変わらないものだと認識させられます。

SPACやローン担保証券(CLO)もそのうち非難の対象になるでしょう。欧米から日本の株式市場や企業のコンプライアンスやガバナンスに対してしばしば苦言を呈されますが、痛い目にあったアメリカがまた同じようなネタで相場が盛り上がっているのを見ると日本と大差ないじゃないか、と言いたくなってしまいます。

日本は隠れて不正をするけれど、アメリカは堂々と不正をしていると言えます。そう言えば、アメリカ政治ではロビー活動という公に認められた賄賂も存在します。公な賄賂というのもおかしな言葉ですが、圧力団体や営利団体が議員に資金を提供して自分たちに有利な法律を作ってもらう(あるいは規制を外してもらう)ということを、アメリカでは衆人環視の元で行い、日本では密室の料亭で密かに行います。

悪いことだと分かっているから隠れてやる日本と、全てを金で解決する資本主義の権化のアメリカとどっちがマシなんでしょうね。どっちもダメだといったらそれで話が終わりますのでそれは無しにしましょう。

ただ、アメリカのCLOやSPACには日本の機関投資家も多額の投資をぶち込んでいますので、いざ破裂したときには日本経済にも大きな悪影響が出てしまいます。例え日本がマシだったとしてもアメリカのやらかしのダメージが日本も到達するのが確実なので、アメリカのことをとても見下している場合ではないですね。

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