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2019年J1リーグ開幕戦:ガンバ大阪対横浜F・マリノス観戦記

 パナソニックスタジアム吹田の周辺は2月らしく空気が冷たく、風も強かったですが空は晴れていて、冬よりは初春の感じの方が強いくらいでした。
 2019年、J1リーグ第1節、ガンバ大阪の初戦はホームに横浜F・マリノスを迎えて始まりました。

 スタメンでの驚きはボランチの一角に今野泰幸ではなく高宇洋を起用したことです。練習試合では遠藤と矢島でのダブルボランチを試したりしていましたが、いい結果が出なかったこともあり、昨年後半の9連勝の原動力となった遠藤今野のいつものコンビに戻すのかと思っていましたが、遠藤・高の組合せで初戦に臨むことになりました。
 それ以外は、ファビオの代わりにキム・ヨングォンを起用したくらいで驚きのないメンバーでした。

 キックオフ直後、相手のバックパスを拾ったファン・ウィジョがすかさずシュート、ポストに当たったこぼれ球を小野瀬が決めていきなり試合が動きます。
 ガンバに取ってみれば望外の先制点を開始直後に得られましたが、その直後に失点してしまいます。マリノスの得点はオフサイドのはずでしたが判定はゴールでした。しょうがないと言えばしょうがないですし、VARが無い以上はどうしようもありません。そもそも昨年のマリノス戦での決勝点はガンバのオフサイドが見逃されてのものでしたし・・・。

 その後はパスをつないで攻めるマリノスと、守る時間が長いものの効果的に攻めるガンバという、昨秋のゲームと同じような展開になりましたが、ガンバは東口のファインセーブにより守り抜きます。
 ガンバペースで勝ち越し点を奪えそうにもなりましたが決めきれず、そうこうするうちに34分、マリノスの三好が素晴らしいミドルシュートを決めました。この失点自体は自陣深い位置からこぼれ球を高宇洋がクリアを中央にしてしまい、拾った三好が低く抑えたシュートを放った展開でした。高には失点の責任がないわけではありませんが、この失点の少し前くらいからガンバは攻守に緊張感が無いようなミスが続いてボールを何度も失っていましたから、ゴラッソでなくても失点は時間の問題だったでしょう。
 ガンバにとって本当に痛かったのはこの後です。38分に中央で狭い地域をパスで攻め崩されてエジガル・ジュニオにゴールを決められて1−3と突き放されました。ガンバは前半を通じて中央、特に中央左よりの3失点目に突破されたエリアを何度も崩されていましたが、どうしてもその辺は今野と高の違いを意識せざるを得ないような前半でした。

 後半、両チームともに選手交代は無く、マリノスは前半よりも後ろに重心を置いたように慎重にガンバに相対しました。そしてそのマリノスをガンバは攻めきれず、逆にたびたび危険なシーンを作られましたが東口を中心に4失点目は許さないまま時間が経過していきました。ガンバは高に代えて田中達也、小野瀬に代えて渡邊千真を入れるものの得点は奪えず、遠藤が矢島慎也に代わってからの88分にようやく2点目を取りました。田中の右からのクロスをDFとGKがかぶった後ろに流れたボールを藤春が冷静に押し込み1点差にすがります。
 しかしその後、コーナーキックで東口が上がるもののそのまま試合終了。ガンバにとってはまた今年も開幕戦は勝利できませんでした。

 試合自体は勝ち負けはつきものですからしょうがないものの、1点差の試合結果以上にサッカーの内容には両チーム間で大きな差がありました。
 マリノスは攻守に洗練されていて、スペースの使い方やボールの回し方についてガンバとはかなりの差がありました。守備でもハイラインを後半途中までハイラインを保ち続け、ガンバのFW陣を無力化していました。この辺はポステコグルー体制を昨年の残留争いの中でも継続したことが生かされているのだと思います。また、ショートパスだけに頼るのではなく、昨年に比べるとアーリークロスなど縦に速い展開も増えたように思えます。
 一方ガンバの方は攻撃も守備も個の力に頼りすぎかな、という気がします。マリノスに比べると属人的と言えるでしょうか。新加入のキム・ヨングォンと三浦弦太、東口の3人ともアジアカップメンバーだったため、キャンプに遅れて合流しましたからまだ連携が取れていないのかも知れません。昨年までの三浦・ファビオ・東口の3人は2016年からほぼずっとレギュラーでしたから、やりづらいというよりはまだ慣れていないといってもおかしくありません。それに加えて今野ではなく高がボランチでしたから、中盤及び中央の守備にほころびが出るのはある程度予測はつくはずでした。
 肝心のボランチですが、試合後の宮本監督のコメントによると、
https://www.jleague.jp/match/j1/2019/022307/live/#coach
まだ今野のコンディションが100%ではなかったため、高を起用したということでした。しかしこの試合を見る限り、高が下がった後にボランチに入った倉田の方がマシだったと言えるのではないでしょうか。そもそも倉田はレンタル先の千葉でアタッカーにコンバートされるまではアカデミーからずっとボランチでしたし。
 今野がいないところに別の選手をただ当てはめても機能しないことは昨年の時点で分かっていたはずでした。だからこそ守れるボランチをこの冬に補強するのかと思っていましたが、ボランチは矢島をレンタルバックしただけで陣容は変わりませんでした。この後も補強無しで行くのであれば、今野がいない場合のフォーメーションや戦術を練り直す必要があるでしょう。今野の代わりは今野しかいないことは、昨年の9連勝を見れば明らかだと思います。

 試合そのものの感想としては以上ですが、一つ言及せざるを得ない点があります。天候が良く、土曜日で、アウェイ客の多い横浜F・マリノスを相手にした開幕戦なのに、パナソニックスタジアム吹田の入場者数は27,064人でした。キャパシティの68%ほどです。動員策に失敗したのか、昨年の低迷が尾を引いているのか、さらに別の理由があるのか分かりませんが、この観客数には経営陣は危機感を覚えなければ嘘でしょう。
 選手や監督による試合でのミスは次の試合で適切に頑張れば取り戻せます。強化部の補強におけるミスは夏の移籍期間で補うことも可能です。しかし、経営で失敗を犯してしまうとリカバリーするには数年間を要します。この後のガンバは、今シーズンどうこうの問題ではなく、これからの数シーズン(あるいは十数シーズン)を占う経営上の問題解決状況に注目せざるを得ないでしょう。


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