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ハゲタカは走る水牛を襲わない

コロナ禍で勝ち組負け組は企業としてはっきり分かれることになりますが、アメリカも日本も株式市場はひたすら値上がりし続けています。

どこかで天井が来て急落し、あれはバブルだったと振り返ることになりそうですが、それがいつ来るのかは誰にも分かりません。株価が上がり続けている理由の一つは、他の投資先が期待できない状況だからです。債権にしろ不動産にしろ、あるいは原油や農作物などはコロナ禍が解決しない限りは動きが鈍いままでしょう。

ともかく、現実の経済を反映していない株価はそのうち調整局面を迎えます。いつの日かバブルが弾けたときに、逆に本来の企業価値よりも低い株価になってしまう企業もたくさん出てくるでしょう。

所有する技術・設備・資金・資産・ブランドなどが株価に正当に反映されていれば良いのですが、急激に株式市場が動いた時やバブル崩壊後には当該企業の経営自体は問題ないのに、投資家が株式市場から逃げ出して安すぎる場面が出てきます。

日本にとっては80年代後半の不動産・株式バブルの崩壊後に訪れた状況ですが、無茶な財テク・不動産・多角化をしていなかった企業はなんとかなったとしても、そういう無茶をしていた企業は悪くて倒産、良くても事業の撤退・切り売りなど避けられませんでした。

そういった企業は当然株価も低迷しますし、継続性も危険な状況に陥りますが、そこで出てきたのが通称ハゲタカファンドです。

ハゲタカだろうとなんだろうと、ファンドである以上は安く買って高く売るのが当たり前ですが、ハゲタカファンドが嫌われたのはそれまでの日本の企業文化には存在していなかった手法からでした。

ただ、そもそもそのような状況に陥ったことの方が問題だったので、政府の規制や金融界の姿勢によっては防げるはずのケースも多かったでしょう。

ハゲタカと言われる鳥は本来はいませんが、そういった屍肉を漁る動物は腐肉食動物と言われます。とすると、ハゲタカファンドに狙われる企業は腐っていると言うようなものですが、まさにそのように現実の腐肉食動物は活発に動いている動物は狙いません。ハゲタカは生きている水牛を襲いません。

同じようにハゲタカファンドも健全な企業や手を打てば立て直せる企業には手を出しません。買収するのに費用がかかりすぎるからです。

また、腐食性動物は生態系における食物連鎖の重要な役割を果たしています。ファンドだって同じことで、ハゲタカファンドは本当は価値があるのに不当に低いものに目を付けて、強引な手法で企業価値を上げて売り抜けます。

腐っているか腐りかけているか、大きな問題があってそのままでは持続できない企業がターゲットになるわけで、倫理的な面はともかくマクロ的な経済から見ればそういう企業を市場から退場か復活させた方が健全でしょう。ハゲタカファンドには存在する理由はあります。

狙われた企業全てがそのようなゾンビ企業だったとは思いませんが、また今回のコロナ禍で政策的な融資によって生き延びる企業は増えるでしょう。90年代・00年代に比べると日本の政府・金融界の対策も進んでいるでしょうから、ハゲタカファンドがブルーオーシャンを謳歌するような事態にはならないはずですが、ゾンビ化した企業を外資に頼らずに健全化出来るかどうかが日本経済の今後の10年を左右するのではないでしょうか。

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