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天井が決まっているベンチャー、決まっていないベンチャー

新しい業態にしろ古くからある業態にしろ、ITを駆使した新興のベンチャー企業が赤字覚悟で低価格でのサービス・商品を提供することで、市場のシェアをいち早く確保してライバルを潰そうとする企業は多いですが、これは新規参入がたやすい業態だとあまり意味がないはずです。また、ユーザーが同種のサービスを複数利用するのが簡単な業態の場合もダメでしょう。
例えば、携帯電話事業について考えてみると、新規参入は非常に困難です。全国的なアンテナ整備、アンテナと基地局の間の通信網の整備など、純粋な新規参入
しようとすると設備投資に気が遠くなるほどの経費が必要となります。楽天が今回新たに参入しますが、楽天ほどの規模がある企業ですら、一部報道ではインフラ整備にかける費用が少ないのではないか、という見解があるほどです。

また、携帯電話・モバイル回線に関してはほとんどのユーザーは一つの契約回線しか利用していません。

一方、UberやLiftのようなライドシェアサービスや、UberEatsなどの料理宅配サービスとか、AirB&Bのような空き部屋利用サービスのような事業ですと、新規参入はそれほど困難ではありません。システムを作成する必要がありますが、すでに先行しているサービスがあればそれを真似て作成出来ますし、内部のアルゴリズムに複雑さがなければ時間とお金をかければ誰でも出来るでしょう。

そういったサービスでは飲食店や部屋を提供する人が当然ながら必要です。しかし独占は出来ません。同じようなウェブサービスに同時に登録することが出来ますし、ユーザー側も複数の似たようなウェブサービスの中から検索するなどして最も自分が欲しいものを見つけることが出来ます。そこに新規参入を阻む壁はありません。そのような事業でシェア拡大のために出血大サービスをしてしまうと、損失を取り戻せないまま値下げ競争のレッドオーシャンを漂った挙句、撤退や破綻という結末もありえます。

そして厄介なことに、大金を投下できる大企業が争いに勝つとは限りません。ライドシェアサービスでは各国ごとに強い事業者がいたりします。アメリカ発のサービスというだけでは、地元の細かなニーズや効果的な訴求が出来ず、撤退や事業譲渡で手仕舞いするケースがすでに結構出てきています。勝ち組を見極めるのが難しい現状です。 UberもLiftも資本投下を増やしてシェアを確保するために上場して当座の資金を調達していますが、現時点で赤字の事業が消耗戦を勝ち残ったとしても、その後にまた、小規模でも利益度外視で挑んでくる事業者が際限なく現れるのではないでしょうか。

収入や年収、生涯収入は本人の努力以前に選んだ業界によってほぼ決まる、という話がありますが、ベンチャー企業にもその業態によって成長が決まるという法則があるかもしれません。新規参入が容易かどうかと、ユーザーを独占できるかどうかというところに肝があるのだと思います。


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