あのころの人

10年代に音楽系のクソ会社でバンド関係の仕事をしていたので、その頃の邦ロックがいまだに好きです。ジャンルで言うならロキノン系か。バンド関係は詳しい人が星の数ほどいてどうこう言えるほど詳しくはないし、イヤな記憶と隣接しているのであまり語る言葉も持っていないのですが。

ちょうどあの頃のバンドって、配信に行くか円盤を出すかの過渡期で、いまほど気軽に配信できる感じではなく、疎い奴はどんどん淘汰されて、けっこうシビアな感じだったと(いまになって)思います。個人でもネットで作品を発表して年齢や経験なんか関係なく死ぬほど売れる奴が出てくる中、デジタルとかちょっとわかんないな、という奴は本当にあれよあれよと言う間に消えてしまいました。

それで気がついたんですけど、『淘汰された側』の音って、もうほとんど聴く手段がない。いいバンドいっぱいあったのに、メジャーには一応行ったのに、10年代半ばあたりで解散したり休止したりあるいは死んだりして、そこから先を残す力がなくて、わたしみたいな半端な音楽好きの記憶の片隅だけにうっすら残ってるみたいなバンド、めちゃくちゃあります。

わたしもわたしで何者かになろうとしていろんなことに手を出して、演劇とかパフォーマンスとか映像とかをやってみたり、作家やモデルや役者、芸人の卵とかとつるんだりして、本当にまーまー迷走していました。

そういう人たち、いま何してるんだろうか。生きていれば30代後半から40代前半ぐらいの人たちだと思うんですけど。

で、なんとなくとある知り合いを本名フルネームで検索したら、某企業の営業部長として顔出しで転職サイトのインタビューを受けていました。かなり珍しい名前だし、顔も……、記憶の中より歳は取っていましたけど、自分が知っているその人に間違いはなくて、仕事に対してとても前向きで優しいことを言っていて、そんなことあるんだ、と思うと同時に、なんだかじわじわと心が温かくなって、がんばれよ〜〜!!って思いました。いや、わたしに言われるまでもなくがんばった結果がそれなんだとは思うんですけど。

年の瀬になると年度末に向けての転職や退職の話がよく出てきて、よく『あのころのあの人たち』に思いを馳せてしまいます。

彼とわたしの人生はおそらく二度と交わりませんし、誰もが望む道で生きていけるわけはないけど、違う道で頑張っている人のことを知れてよかったです。

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