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人魚のはなし

 海面が静かになった。胴体着陸した飛行船は、あちこちが破砕され、金属片が散らばっている。
 人魚は海面に顔を出した。船が落ちて、中身が生きているのは珍しい。何人かは他の人魚が食べたが、生存者は上手く逃げ、叫んでいる。
 泣いても助けはすぐには来ない。人魚も、人間だった頃がある。地上で吸血鬼になることもあれば、海中で人魚になることもある。
 星空に変わる頃、すすり泣く人間に魚を分けてやった。普通の魚。人魚の肉を食べると人魚になるから。かつて人間であった人魚は、そうして人魚にされたのだ。
 この人間は魚を食べた。そして他の人魚を殴殺して食べた。数日後に他の船がそれを連れ帰った。珍しい人魚として。

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