【DTMクラシック】フンメルとゲーテのある一日 モーツァルト「フィガロの結婚」による幻想曲,Op.124

【DTMクラシック】フンメル/モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」の主題による幻想曲,Op.124

1833年のフンメル晩年の作品ですが、どちらかというと軽いサロンミュージックになっています。

作曲時の情景を想像力を膨らませて妄想・・・

当時のフンメルはワイマールの楽長職にあり、やや人気に陰りが見え始めてはいたもののヨーロッパに知らない者はいないほどの有名人でした。
ワイマールにはゲーテとともにフンメルを訪ねてくる文化人で溢れ、その中にはツェルターに連れられてきていたメンデルスゾーン姉弟がいたり、画家のドラクロアやシェリングと言った哲学者まで、文化芸術の街としてにぎわっていたころです。
ゲーテ家ではたびたび食事会やパーティが開かれ、フンメルはそこで演奏し、彼の息子もまたゲーテの孫たちの遊び友達でした。
ある日、多くの人が集まっていた日にゲーテはフンメルに「何か弾いてくれないかね、ヨハン」と言いました。
フンメルは「いいですよ。どんなのがお望みですか」
ゲーテ「そうだな、モーツァルトのアリアを主題にした何かを聞きたいな」とリクエストしました。
フンメルはピアノ前に座り、葉巻をふかしながらちょっと考えて、早速弾き始めました。
それはモーツァルトのフィガロの結婚の有名なアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」をテーマにしてた即興演奏でした。
技巧的な短めの序奏を経て、明るく跳ねるようなアリアのテーマが展開されていきます。それは次から次へと煌びやかに奏でられ、転調を繰り返していきます。
集まっていた来賓は驚き、その技術に感嘆し、いかにも簡単そうに弾いているかのように見えるフンメルの即興演奏に酔いしれました。

という感じでしょうか。実際はどうだったのかはわかりませんが、即興の名手であり、ゲーテ家には頻繁に出入りし文化人たちと交流を持っていたフンメルのワイマールでの生活を考えると案外当たっているかもしれません。

大曲に見られるような重厚さや深刻さはなく、6分程度の楽しい音楽です。

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