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人と土地の記憶の中に、アートポイントを灯す

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生きているとは、流れていること

生きているとは、流れていること

体の中を流れる音がきこえますか?ー生きているとは、流れていること。流れているから生きていられる。淀んで堆積しないように、うまく流れるように、心の中も、体の中も、ツルツルに磨いておく。

息が絶えた人はとても静かだ。その人は、自宅で倒れて亡くなり、約3か月たって見つけられた。まるで森の中で苔むし、朽ちていく倒木のように、清々しく土に少しづつかえっていた。「ご遺体」というより、生きていた時間と全く切り

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ハローウィンをアートの祭典にする道ー渋谷が発信する「ハロウィーンを渋谷の誇りに」

ハローウィンをアートの祭典にする道ー渋谷が発信する「ハロウィーンを渋谷の誇りに」

渋谷公園通りをオレンジ色のフラッグ「SHIBUYA PRADE ハロウィーンを渋谷の誇りに」が埋め尽くす。渋谷になじみ深い芸能人、アーティストの直筆と渋谷公園通り商店街振興組合のマーク。多様な目的で多様な価値をもつ人たちが集まるのは渋谷の誇りだ。その集積により、どこにもない、渋谷だけにしかない過ごし方や働き方、楽しみ方のスタイルや文化が常に生み出されていく。

公園通りを歩きフラッグをみる度に「渋

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東京都現代美術館のサウンド・アート・コレクション ➕

東京都現代美術館のサウンド・アート・コレクション ➕

 東京都現代美術館にサウンド・アート・コレクションがあるのをご存知だろうか。「耳と足を合わせたマーク」が屋外に12箇所、屋内に2箇所。道草でもするように、そして深呼吸でもするように耳を澄ますスポットがある。

 美術館に行っても、帰りは何時?次にお茶をして・・などと考えながら、慌ただしく観てしまうことが多い昨今、立ち止まって耳を澄まし、感性を開いて美術館と出会うことを勧めてくれるこの作品は、とても

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植野正治の写真 カメラを向けられて緊張した様子こそ人の自然な姿

植野正治の写真 カメラを向けられて緊張した様子こそ人の自然な姿

2017年3月24日朝8時鳥取空港に着き、鳥取砂丘で時間を過ごした。午後米子に移動して、遠近感がなくなる砂丘や浜辺に人を配した「演出写真*」で、世界的に名が知られている写真家植野正治の写真美術館を訪れた。車で30分弱、鳥取の人たちに敬愛されている大山が、自然が生み出した作品というように美術館のコンコースから真正面に見える。(*動きやしぐさを映画や舞台の俳優のように指示をして、近所の子供たちや知人、

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アーティストの眼

アーティストの眼

中村正人 明るい絶望 ソウル―東京 1989-1994/アーツ千代田3331/2015年11月23日まで

何気なく見過ごしてしまいそうになるソウルと東京の風景たち。この700点近い写真につけられたメッセージは、写真の説明ではなく、シャッターを押す瞬間に横切った中村の世界観である。写真と同格の重みで作品として一体化し、中村正人の眼を強く感じる展覧会となっている。ソウルの町で朝出会った石膏像たちの陰

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「ここはだれの場所?」

「ここはだれの場所?」

東京都現代美術館(〜2015.10.12)「ここはだれの場所?」展。出迎えてくれるのは、ヨーガン・レールが石垣島のプラスチック系漂着物でつくった美しい作品たち。

色や形、用途ごとに分類され、照明作品などは、グローバル化された現代文明をシャープに明るく、切り取っているようにも見える。しかし、壁一面の擦り切れたビーチサンダルたちは、もとの持ち主たちの様々な思い出を抱いてきており、痛々しい。ヨーガン・

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キュッパのびじゅつかん展、いいね!

キュッパのびじゅつかん展、いいね!

東京都美術館で開催中のキュッパのびじゅつかん展(2015.10.4まで)は、かなり楽しめるオススメ展覧会。そしてどんな説明よりも『博物館人』の気持ちが伝わってくる。

はじめの部屋ではノルウェーの作家オーシル・カンスタ・ヨハンセンの絵本「キュッパのはくぶつかん」が小学校生のかわいい朗読で映像紹介されている。「丸太のキュッパは毎日森に散歩にいって、色々なものを拾いあつめるのが楽しみ。どこの箱も一杯に

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楽しむアーティストたち

2015年5月10日

東京都現代美術館に所蔵されるアーティストたち。彼らのモチベーションの在り所を、常設展の短いアーティストトークの映像から拾ってみた。

こんなことしたらオモシロイ、からスタートして、熱気のこもった制作過程そのものを楽しむアーティストたち。だから目の前にある作品は、言わば熱気の残りの半分。

川俣正。カナダトロントの古い石造建築に挟まれたコロニアル・タヴァーン公園に、かつてここ

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まちづくりとアートプロジェクトの境界

2015年4月22日

水曜日夜10時過ぎから始まる短い番組、NHKスーパープレゼンテーション。オランダ人アーティストHaas&Hahnが、丘の斜面に階段状につくられていった貧民窟ファベーラ(リオデジャネイロ)を、ペンキで塗りながら、住民と街を変えていった様子が語られていた。

撮影の仕事がおわってヴィラ・クルゼイロで飲んでいたとき、目の前の階段状の町全体にペンキで色を塗ったらオモシロいと思ったの

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トーチカ、土地の神様に捧げるダンス

トーチカ、土地の神様に捧げるダンス

2014年7月30日

原点とは、だれにも侵入されず、そこに触れると心針が振れ、その時の感謝の気持ちがよみがえるようなものだと思う。

私の場合は、7月末「PIKA PIKA」との出会いがある。ペンライトパフォーマンスのアーティストのトーチカ(ナガタさん、カズエさん)のアートプロジェクトである。承諾を得る前に押しかけて待ち、帰れなくたったから泊めてもらう、という迷惑極まりない行動で、奈良県大芸術祭

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千住だじゃれ音楽祭「千住の1010人」―現場はプロジェクトの力で刻々と変化する

2014年10月12日

次の日起きてみると、サッカーの試合の大観衆のざわめきをフィールドからみていたような足立市場のエキサイティングな体感が残っていた。

それぞれが思い思いの楽器や瓦とゴルフボールを抱えてパレードする様や、パートリーダーの力強い踊るような指揮に食らえついて音そのものを楽しんでいる様は、今思うとその楽器のチームを応援しているファンたちの中に紛れ込んだような感触もあった。聴衆は演奏

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新里碧:曳舟湯の神たちの引越、谷山恭子:いまココが大切というメッセージ

二人のアーティストと向島を歩くツアー(橋本誠コーディネート)に参加した。

新里さんは墨東まち見世100daysプロジェクト2012の招聘作家。曳舟の駅前再開発ですでに閉じられていた曳舟湯のたたずまいをみたとき、このお風呂屋さんを守ってきた凛とした気配たちを感じたという。その存在を「湯怪」と名付けた。このまま解体されると湯怪たちが棲むところがなくなってしまう。現在営業している向島のお風呂屋さんに棲

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小山田徹、沈黙の時間の共有から生まれる

2014年10月11日

港千尋さんは、アートは共感の力であり、人と人の間、人間と世界の間の関係をつくりだすための特別な力である。そして「根なし草」である一方「モノと情報の境がなくなるほどの超結びつき社会」の中でアートは関係性をつくりだす、と語った。この日のゲスト小山田徹さんは、港さんのこの言葉に呼応するように、関係性を連鎖させていく場つくりについて語った。

「焚き火にはすべてがあり優るものがな

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小布施、町中図書館、Open-garten

2014年7月28日

朝9時半に長野県小布施の駅についた。NASCA古谷誠が設計した町立図書館「まちとしょテラソ」と初代館長花井裕一郎氏と古谷氏が構想した「町中(まちじゅう)図書館」を見たいと思った。

まちとしょテラソは、まるで大きな樹木の木陰で子どもたちが本を読んでいるように見える。まわりの風景を取り込み、一辺が内側にくびれた三角形のプランにドーム状の天井をのせ白くて細いいくつかの樹幹でささ

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