見出し画像

Huuuu加入は「結婚」だった? 会社の第二フェーズを考える取締役対談

2022年8月。7期目を迎えたHuuuuは、新体制となりました。

長野県による移住促進メディア「SuuHaa」編集長を務める藤原正賢(ふじわら・まさたか)が、2022年5月からHuuuuの取締役に就任。「シシコツコツ」「OYAKI FARM」などの長野事業を担当していきます。

実はHuuuuができる前から、代表の徳谷柿次郎と親交があった藤原。2017年のHuuuu起業後も、さまざまなプロジェクトを一緒になって行ってきました。なぜ、このタイミングで取締役に? そもそも彼って何者なの? これからのHuuuuの課題と、目指す姿は……?

ということで、2019年9月からHuuuuの取締役を務める友光だんごと、新取締役・藤原正賢の二人による対談をお届けします!

僕は「舞台を作る側」でいいかな、と思った

二人が着ているTシャツは秋田の「6JUMBOPINS」のもの。どちらも犬好きで、たまたま色違いを持っていました

だんご 藤原くんが柿次郎さんと出会ったのは、俺よりずっと前だよね?

藤原 そうですね。自分がまだ大学生で、柿次郎さんと上野の居酒屋で「長野プレーヤー飲み会」をやったのが最初だと思います。

だんご 柿次郎さんの第一印象はどうだった?

藤原 前職のバーグハンバーグバーグのイメージが強かったです。ジモコロもスタートしたばかりで、地方を舞台に面白いWEBコンテンツを作れる人って、なかなかいないと思っていて。なので、柿次郎さんが長野移住を決めたと聞いて、そんな人が長野に! と驚きましたね。

だんご 俺は2017年にHuuuuへ入ったんだけど、同じ年に柿次郎さんが長野へ移住して、長野の行政系のイベントにも呼ばれるようになって。そこで絶対、その裏に藤原くんがいるんだよね。

まだ24〜5歳くらいで、行政系の仕事をバンバンやってて、県知事とも繋がってる。一体、何者なんだ!? なにその人脈!? って思ってた。

藤原 そうだったんですか(笑)。

だんご でも、当時から、柿次郎さんと藤原くんっていいタッグだなと思ってた。

藤原 僕もバランスのよさは感じてました。柿次郎さんって「言葉」が強くて「コンテンツ」の人。僕はどちらかというと、「コンテクスト」の人なんですよ。

だんご コンテンツではなく、コンテクスト。つまり文脈重視ってこと?

藤原 そうですね。いろんな調整をして、人を繋いで、成果物までのコンテクストは作れる。でも、いい成果物、つまりコンテンツを作るのは得意じゃない。柿次郎さんはバーグ時代から、めちゃくちゃ強いコンテンツを作れる人だったので。

だから、柿次郎さんと一緒に仕事をするなかで、僕は「舞台」を作る側でいいかなと思ってたんですよ。いくら面白い人でも、地域との関係値がないと、地元の人から「宇宙人...?」みたいになりがちで。特に「柿次郎」って、名前からよくわからないじゃないですか。「柿」のイメージが強すぎて、今でも2人に1人は「柿谷さん」って名前を間違えますし(笑)。だからこそ、地域の文脈や住んでる人の思いとつなぐ役割が必要だと思ってるんです。

だんご (笑)。ちゃんとその人が活きる舞台があって、それを作るためにコンテクストも必要になると。そこに、自分の役割があると思ったんだね。

転機となったSuuHaa編集長就任

だんご 藤原くんは大学時代にBAZUKURIって自分の会社を立ち上げて、行政系の仕事を請け負ってたよね。最初はHuuuuともBAZUKURIとして仕事をやっていたけど、当時はHuuuuへ入ろうとは思ってなかった?

藤原 うーん……。初期のHuuuuは柿次郎さんの一人会社で、フリーランスや周りの仲のいい人たちがゆるく所属するギルド体制だったじゃないですか。なので、僕もHuuuuの名刺を頂いて、2回、ジモコロの記事も書いたんですよ。

だんご 「オーナーシップ論」と、そのあとに「おむすび」だね。

藤原 ライターとしてのHuuuuとの関わり方も試したんですけど、結果として、自分の中でライターは「やらない」って選択をしましたね

だんご ライターがしっくりこなかった?

藤原 頑張ればできるかもしれないけど、自分が最大限、価値を発揮できるのはライター以外の関わり方だと思いました。なので、Huuuuとの関わり方でいうと、『SuuHaa』ががかなり大きい転換だったと思ってます。

長野県・信濃毎日新聞とHuuuuがタッグを組んでスタートしたWEBメディア「SuuHaa」https://suu-haa.jp/

だんご SuuHaaは2020年スタートだけど、柿次郎さんは移住してから「いつか長野県のメディアができたらいいよね」って話を妄想半分でよくしていて。藤原くん的にも、ずっと温めてたアイデアなの?

藤原 長野に「いいWEBメディア」が欲しいという思いはずっとありました。ただ、その思い以上に「時は来た!」という感覚が近かったです。

だんご 時は来た???

藤原 長野のメディアをやろうって話は、ずっと柿次郎さんとしていて。ただ、普通にやっても面白くないし、どうしようかなと思ってた頃に、長野県が移住の情報発信サイトを新設するという公募があって。そこに、デジタル化を進めている地元の新聞社と一緒に出ることにしたんです。

だんご なるほど。

藤原 地元新聞社のブランドとHuuuuのジモコロ等でのWEBメディア運営実績が評価されて、受託することができて、「SuuHaa」が生まれたんです。ただ、最初は自分が編集長になるとは思っていなくて。本当は、一緒に組んでいる地元新聞社から編集長が出るのが一番いいのかなと思ってたんですよ。

だんご それはどうして?

藤原 ちゃんと続くメディアをつくっていくためには、内部の巻き込みが重要だと思っていて。社外の人が主体性を持つより、社内で主体性を持って一緒にやってくれる人がいたらいいなって。ただ、新聞社としても、過去にWEBメディアをやった事例があんまりなくて....…。結果的に、僕がやるしかないか、と。

だんご 藤原くん自身、それまで編集経験はなかったわけだけど、不安はなかった?

藤原 ありましたよ。編集長と聞くと、柿次郎さんみたいなバンバン企画を考えるのが得意な人のイメージがありますし。ただ、それまでも編集者って立場ではなかったですが、ライターさんに記事をお願いすることは多かったので、なんとかなるかなと。

だんご なるほど。SuuHaaの座組みって面白いなと思っていて。だいたいのメディアは、基本的に編集者が進行・調整と原稿の編集と両方やるけど、SuuHaaはそこが分かれていて、藤原くんが進行・調整を担当して、記事の編集と担当を分けている。意外と、そういう形ってないんだよね。編集者からすると、編集に集中できるから、SuuHaaの編集を担当したときもすごくやりやすかった。

だから、藤原くんは編集者だけど、よりプロデューサー的な立ち位置なんじゃないか、と思ってる。

Huuuu加入は「結婚」に近かった?

だんご SuuHaa編集長になった時点で、がっつりHuuuuと関わっていこうと思った。ここまできたらやってくしかないって感じだった?

藤原 というより、行政との仕事をずっとやってきた中で、SuuHaaみたいなアウトプットは自分の力じゃ出せないなって気がついたんですよ。行政の場合、「住民全体に受け入れられるもの」をつくる必要があることは徐々に理解してきていて......!

良くも悪くも「こんな感じでつくれば、誰も文句は出てこないんじゃないか」ってコンテンツは、つくれると思ってます。ただ「移住」というテーマの場合は、住民の理解以上に、首都圏の若年層に届くことが重要になる。特にWEBメディアなんて、読み切れないほど存在するじゃないですか。そうなると、自分だけの力では及ばないんです。

今回のSuuHaaを起ち上げるプロセスで、強いコンセプトがあって、かつ記事の内容やデザイン含めた世界観がしっかりしたものは、これまでの延長線上ではやれないなあって思いました。だからこそ、Huuuuと一緒に仕事をする意味もあるなと。

だんご なるほど。両者がタッグを組むからこそ、作ることのできるものがあるって思ったってことだね。

藤原 取締役になる前の2021年にはじまった、「シシコツコツ」や「OYAKI FARM」もそうですよね。どちらも継続的なプロジェクトとしてHuuuuに引っ張ってきていたこともあって、今後の関わり方は考えてたんです。

長野県が主催するDX人材の誘致・育成イベント「シシコツコツ」。長野県で活躍する人の精神性を「孜孜忽忽(世間を気にせずに、ひたすらに取り組むこと)」に重ね合わせ、デジタル活用を目的ではなく、手段として活用する取り組みを発信するオンラインイベントを実施
長野県の老舗おやき屋さん「いろは堂」の新たな工場兼店舗の建設プロジェクト「OYAKI FARM」。工場兼ショップではなく、「これから100年に向けたおやき文化の発信拠点」として、広報をはじめ、施設の体験価値の向上に向けた取り組みを行った

だんご その頃からメディアだけじゃなくて、広い意味での「編集」に関する仕事を、藤原くんが持ってきてくれるようになったと思っていて。それが、「次のHuuuuのムーブメント」に繋がってるとも思う。

メディアをやって、イベントをやって、場作りもして……「いよいよ長野事業はじまったな!」みたいな感覚があった。

藤原 自然とHuuuuとして取り組んでいきたい案件も増えていって、どこかで関係性を整理しないとずるずるいくな、と……。

だんご ……なんか、長く付き合ってるカップルの結婚話みたいに聞こえてきた。

藤原 そうですか?(笑)

だんご だってカップルに例えると、もう何年も付き合って、一緒に住んでるような状態じゃない。でも、ずっと藤原くんの側が「いやぁ……」って濁してる、みたいな。実際、Huuuuには何年も前から誘ってたわけだし……。

藤原 まあ、腹を括ったという意味では近いものがあるかもしれません。単に気持ちの話だけじゃなく、仕事の面でフィットする形が見つかったってことですね。

Huuuuとの仕事でいえば、クライアントから求められているのが合格点の「80点」だとして、SuuHaaは「120点を出そう!」と意識してたんです。特に行政や地方企業だと、仕様や要望を満たすことって、「本当に欲しい姿」ではない場合が多くて。

だから、プロジェクトを始めるときに、「何のためにやるんでしたっけ?」という、目的や意図のすり合わせを丁寧にやっています。非合理的かもしれないですが、「地元の人たちが見えてないけど、本当は欲しい取り組み」をどんどんつくっていきたいんです。

生き残っていくために覚悟を決めた

だんご 藤原くん的に、根っこは「長野のことをやりたい」って気持ちがある?

藤原 やりたいというより……。選択肢を絞って、決めることからしか、何もはじまらないんですよ。

自分も大学3〜4年生の時期に、東京で就職しようか本気で迷って...。起業していたものの、スケールできる事業のアイデアがあるわけではなくて。ただ、長野で関わっているプロジェクトもいくつかあって、ありがたいことに仕事になっているものもありました。周りには、大学時代のプロジェクトをそのまま仕事にしている人って少数派で、東京の大企業に就職していく同級生も多くて。

だんご なるほど。

藤原 そこに良し悪しはないですし、東京で就職しつつ、長野に関わり続ける選択肢もありました。いろいろな選択肢がある中で、何か決めないと、前に進めないなと...。そこで思ったのが「長野でやれるだけやってみよう」ということだったんです。

だんご 「長野」に絞ってやっていこうと。どんどん縛りを増やして行ったんだね。

藤原 親や大学時代に関わってきた人には、「せっかく東京へ出たんだから、東京で就職してグローバルな仕事やってほしい」みたいなことも言われました。でも、いろんなプロジェクトに関わる中で、まだまだ長野というローカルにも面白いことが沢山あるんじゃないかと思って。それで、覚悟を決めたんです。

だんご 「書くことが得意だからライター」とか、なにか一つのスキルが突出している人の方が道は決めやすいけど、藤原くんって、全体の能力がめっちゃ高いと思う。なんでもできちゃうから、道が多すぎて悩んじゃう。そこを定めた結果が「長野」だったんだ。

だんご 「長野」に絞ったことは、自分としてずっと肯定できてるの?

藤原 決めたら、肯定していくしかないんですよ。じゃなきゃ進めない。悩んだときは、もし自分が東京に残って大企業に入ったとして、今の僕みたいに長野でメディア作ったり、おやき屋と新しいプロジェクトをやったりしてる同世代がいたら、めっちゃ嫉妬するだろうな……って思うようにしています。

だんご 鏡のように自分自身をパラレルワールドにおいて、今の自分を見つめなおしてたんだ。彼からみた自分は羨望の的のはずだ! って。

藤原 他と比較できないところにもっていく、みたいな考え方をしてますね。たとえば、東京の人がみんなランニングして体力をつけて生き残っていくんだとしたら、俺は太極拳をやる!! みたいな。

だんご (笑)。

藤原 どこかにきっと、太極拳をやってることを面白がってくれる人がいるはずだって。でも、まさかこんなに行政や老舗企業と仕事をしているとは思ってませんでした(笑)。

だんご 戦略的マイノリティだね。面白い!

一体、これから何を「取り締まる」?

藤原 最近、だんごさんは柿次郎さんから口癖のように「取り締まれ!」って言われてるじゃないですか。あの「取り締まる」ってなんなんでしょうね?

だんご (笑)。いろいろあると思うけど、まずは他のメンバーと一対一でコミュニケーションするのが一番大事じゃないかと思ってる。雑談とかじゃなくて、ちゃんと腰を据えて「今何悩んでる?」みたいな話をすること

一人一人が、いい感じにやっていけるような交通整理をすることが俺の「取り締まる」なんじゃないかな。

藤原 柿次郎さんがそれをやる時間はもう取れないし、だんごさんがやるべきことかもしれませんね。

だんご 藤原くんも取締役だけど、これから何を取り締まる?

藤原 僕は、東京チームと長野チームのコミュニケーションをもっと増やしていけたらいいなと思ってて。いいチームをつくる上で、それぞれの能力とかスキルを掛け合わせていくことが理想だなって思うんです。今のHuuuuは足し算になってる。

だんご 足し算と掛け算か。

藤原 それぞれが独立しても大丈夫なくらい、個々がちゃんと強く立ってるのが一番だと思います。でも、その個性を掛け算できたら、もっと良いものが作れるかもしれないし、より大きい仕事が受けられるかもしれない。

だんご 今までは「ライター・編集」みたいな色しかなかったから、「俺がライターで日向くんが編集ね」みたいな組み方しかなかったけど、そこに「書く以外」の役割である藤原くんが入ってくると、さらに変わってくるかもね。そうやって掛け算していった先に、こういう世界を実現したい、みたいな野望はあるの?

藤原 そこはそんなにないんですよね……。結局「今」の時間軸で見ちゃっているので。

だんご いま、Huuuuの持ってるものを最大化したい?

藤原 それはあります! Huuuuに対してだけじゃなくて、Huuuuが関わることで価値を最大化できる対象が、きっとたくさんいるはずですし。

だんご 今ある価値を最大限発揮できるように手助けする、は俺もやりたいことだな。もっと記事以外のアウトプットを増やしていくことも大事だね。

藤原くんって軸が長野にできることで、これまで以上に長野メンバーが連携していけそうだから、そこにもすごく期待してる。

藤原 長野に、いろんなプレーヤーが集まってきてますしね。きっと、これから長野はどんどん面白くなる。いい風を掴んでいってる感じがします。

だんご ほんとにそう思う。これからよろしくお願いします!

構成:風音
写真:藤原 慶
編集:友光だんご


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?