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#47 百鬼堂農園(1) そして僕は途方に暮れる

 やっちまった。

 雑草もなくきれいに整地された20坪の畑に立ち尽くし、思わずつぶやく。広すぎる。先日、市民農園を借りる契約をした。血迷ったとしかいいようがない。

 何人かの同僚が野菜作りに取り組んでおり、楽しげに話しているのを聞いて、なんだかいいな、とは思っていた。そんな折、息子がこの春に家を出た。なんだか寂しくなり、ペットでも飼おうかと検討もした。だけど生き物は手間がかかるし死んだら悲しいし、飽きたからといって途中でほったらかすわけにもいかない。でも何か育てるようなことがしてみたいと思い、あれこれ思い悩んでいた。

 なんとなく検索したところ、家から自転車で5分ほどの場所に、市民農園があることがわかった。案外たくさんあることを初めて知った。野菜なんて自分に育てられるんかなあ。いやいや忙しいし無理でしょ。そんな気分でいた数日後、伊藤礼翁の「ダダダダ菜園記」(ちくま文庫)を、立川のジュンク堂で見つけた。思わず買って読み始めてしまったのがいけなかった。野菜作り、楽しそうだ。

 本を読む手を休め、再度、市民農園について調べると、現在3区画に空きがあり、申し込みと抽選会はわずか2日後だった。

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