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昆虫採集時の恐怖体験

歌田 年「紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人」

2018年の「このミステリーがすごい!大賞」の大賞受賞作らしい。普段ミステリ本を含む小説はめったに読まないのだが、本厚木駅前の有隣堂書店で、「厚木市内の地名が出てくる名作」みたいな厚木市民の心を鷲掴みにするポップが付いていたので、気になって読んでみた。ミステリとしてのストーリーもよくできてるし、意外な方向にテンポよく話が展開して、なかなか面白かった。

で、この本には本当に厚木市内の地名が実名で出てくる。東京農大、小鮎川、松蓮寺行きのバス、三家入口のバス停、等。物語の中盤で、死体発見現場となる場所があるのだが、この部分を読んで、自分がその場所付近で以前体験した意味不明な恐怖体験を思い出した。別に、この小説のストーリーとは何も関係ないのだが。

虫にハマり初めて間もない2017年秋のこと。当時、地上徘徊性甲虫であるゴミムシ類の採集に熱中していて、ゴミムシ類は夜行性のため、夜に河川敷や近所の畑等によく出かけていた。森林性のゴミムシが採りたくて、自宅近くにそれなりの規模の森はないものかと航空写真を眺めていたら、ゴルフ場と水田に挟まれた斜面に森が続いている場所を発見。森自体は私有地なので立ち入るわけにはいかないが、水田脇の農道から林縁を探るくらいは良いだろうと思い、夜中に自転車で出かけてみた。現地に着いて地面をライトで照らすと、秋繁殖種のゴミムシ類が多数ワラワラと動き回っている状態。これは良い場所を見つけた!自転車で来れば運動にもなるし、一石二鳥ではないか!繰り返し来ることにしよう、などと考えたのだが、2回目で事件が起きた。

夜中12時頃、現地で地面をライトで照らしてゴミムシを探していると、100 mほど先の農道に1台のバイク走ってきて、路上で停車したのが見えた。そのバイクはなぜかエンジンもライトも消して、乗ってる人はバイクから降りるわけでもなく、そのまま動かない。こっちはライトを持って作業しているので、バイクの方からは、少なくともここに誰かがいて何かをやっているのは見える状況。何やら遠巻きに監視されてるような気がしたが、そのまま採集を続けていると、数分後、今度は1台の軽トラが猛スピードで同じ農道を走ってきた。てっきりそのまま田んぼの中を走り抜けるのかと思ったら、何とその軽トラは途中で左折して、自分がいる場所の目の前までピンポイントで来て停車したので、ゾッとしてしまった。

軽トラのヘッドライトで、自分がいる場所が煌々と照らされている状態。

こんな夜中にこんな場所にわざわざ来るということは、今ここにいる自分に何か用があるということ。ここで慌てて立ち去ると返って怪しまれるので、内心恐怖に怯えながらも平然を装って、道具をさっさと片づけて自転車に跨ってしれっとその場を去ることにした。が、去るにしても、道が1本しかないので、エンジンを掛けたまま停車している軽トラの運転席側の隙間を通り抜けないといけない。とてもじゃないが運転席にいる人の顔を見るほどの余裕はない。すれ違いざまに絶対何か言われると思ったが、なぜか何も言われない。軽トラを通り過ぎた後、今度は、エンジンを止めて停車している謎バイクの脇を通らないといけない。こっちもすれ違いは恐怖だったが、やはり、何も言われない。

現場から何百メートルか離れた橋の上まで来て、少し余裕ができたので、さっきの軽トラとバイクを、今度は自分が遠巻きに眺めてみた。軽トラはいつの間にかエンジンを止めて消灯。バイクは依然動かず。しばらく、遠くの暗闇を目を凝らして眺めていたが、軽トラもバイクもいつまで経ってもそこに停車したままで、誰かが降りて何かを始める気配がなかったので、その場を立ち去った。

一体何だったんだあれは??

今思い出しても、一体何だったのか意味不明すぎる体験。しかも、あの場所は、ミステリ作家氏に死体発見現場を想起させるような、何かがあるようである。

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