私は決して『ONE PIECE』の原体験世代ではないが、いい加減日本の創作業界は過去の遺産を「リメイク」だの「完全新作」だの「リブート」だのと名前をつけて擦り倒して安売りする悪習をやめろ。
『ドラゴンボール』『美少女戦士セーラームーン』もそうだし、特撮でも『キカイダー』『仮面ライダー』『ウルトラマン』も例外ではないが、既に賞味期限が切れた過去の名作を今更焼き直して何がしたいのか？
単なるスポンサーの金儲け目的でやっているのか、アニメ制作会社の人たちに仕事を与えているのかは知らないが、こういうくだらないことをいつまでもやっているから日本のアニメが海外にイマイチ売り出せないんだよ。
どれだけ世界的な人気を誇るほどのクオリティがあったとしても、数字目的でいたずらに過去の名作や知名度を擦ってよかった試しなんて過去に一度もないというのに、何を考えているのか？

別にリメイクやリブートものに文句を言っているわけではない、やりたければどうぞ好き勝手にやってくださいと言いたいところだが、少なくとも私が知る限りリメイクがオリジンを超えた試しはない。
『ONE PIECE』は確かに原作・アニメ共に話は長いし初期の作画・演出・演技の古めかしさや拙さはあるが、それは決して悪いものばかりではなく作品がリアルタイムで作られている「味」にもなっている。
『ドラゴンボール』程の思い入れや熱量はないし諸手あげて肯定もしないが、そんな私でさえ流石に現在リアルタイムで作られているものと別軸で作られるものに賛同するほど愚かではない。
「今だからこそ可能な表現を突き詰め、ルフィの冒険を懐かしくも新しい感覚でお目にかけたいと考えています」とあるが、今だからこそ可能な表現とはどんな表現のことか？

まさか、『ドラゴンボール超スーパーヒーロー』『THE FIRST SLAM DUNK』のように3DCGを用いたアニメーションに手直しするとかではないだろうな？
或いは原作の既に出来上がった本筋に余計な描写を足したり、或いはその前置きがないと成立しないシーンを削ったりして元の原作を逆に損なうようなことをするか、いずれにしても良い予感はしない。
何度も述べているが作画や映像演出の技術を最新のものにすれば良い訳ではないし、予算がないならないなりに如何に創意工夫して現場の中で作り上げて行くかもまた作品を作る上では大きいのだ。
それに、「先の未来に『ONE PIECE』に触れる世代にもお届けできるよう」と述べているが、そんな余計なことをしなくても『ONE PIECE』は続いていくし未来永劫語り継がれていくだろう。

何が腹立たしいといって、毎回この手の勘違い野郎が「自分たちが過去の名作を素晴らしく現代に作り上げてみせます」などと、さも自分たちこそが『ONE PIECE』の原作者であるかのように豪語していることである。
何なら偽麦わらの一味みたいに、偽物の癖に表面上のルックだけをパクって自分たちが本物に成り代わろうとしていないか？
何を勘違いしているのかはしらないが、あくまでも『ONE PIECE』はまず尾田栄一郎先生の原作漫画があって、それを原作に比較的忠実にアニメ化しているテレビシリーズがあり、その次に映画や歌舞伎が作られていた。
WIT STUDIOというアニメ会社自体が作っているのも『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』『SPY×FAMILY』辺りのような、お世辞にも大手とは言えない10年と少ししか歴史のない制作会社だ。
そんな人たちがよくもまあ集英社・東映アニメーション・尾田栄一郎先生らに許可を得て作ったものだと思うが、一度完結した作品のリメイクならともかく現在進行形で続く名作を別でアニメ化する意味がわからない。

それによく原作側もGOサインを出したものだと思うが、今や『ドラゴンボール』と並ぶビッグどころかヒュージコンテンツに成り果てた『ONE PIECE』のアニメを新作と称してリメイクする意味を分かっているのか？
テレビの編集をぶつ切りにして作画だけを綺麗に整えた劇場版『機動戦士ガンダム』三部作やオリジナルを薄っぺらく希釈した『ドラゴンボール改』みたいなクオリティだったら承知しない。
声優はおそらく完全新作というからには別で据えるのだろうが、既に20年以上も歳を召されているベテラン声優陣の層の厚さや演技力に太刀打ちできるレベルの若手声優なんているわけもなかろう。
だから私は今回の件に関しては期待していないし無視すれば良いのかもしれないが、令和の世にもなって恥じらいもなく二匹目のドジョウ狙いというかコバンザメ商法じみたことをするとは恥を知れ。

本当に日本という国はユダヤの連中が世界で唯一恐れるくらいに優れた遺伝子や技術を持つ国で民度も教育の質も相当に高いものだというのに、芸能関係やクリエーションに関しては未だにクソみたいな時代遅れのシステムが残ったままだ。
そんなだからいつまで経ってもディズニーやピクサーに後れを取るわけだし、良き人材が埋もれていって日の目を見ることなく一部の既得権益のみが跳梁跋扈する旧態依然の状態から解放されないのである。
今や大手がどんどん信頼を失って共同体がその機能の有効性を消失していっているが、だからといってそれに取って代わる有用なシステムや概念がまだ完全に構築されている訳でもない。
この『ONE PIECE』の完全新作リメイクと名乗る擦り倒しが吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知るといったところだが、余程のことがない限り大元の原作漫画やテレビシリーズを超えることはないだろう。

なので私は今回のこれに関しては期待しないが、少なくとも黒歴史となった実写版『デビルマン』『ドラゴンボールEvolution』みたいな原作者および原作ファンの反感を買うような真似はするなとだけ言っておこう。
逆にいえば、今の日本アニメをはじめとする創作業界全体が時代を象徴するロングランの王道の新作を作るだけの体力・気力・熱量・制作体制を失ってしまっているということなのだろうが。
『オトナプリキュア』とやらも私は未見だが、SNSやYouTubeの反応を見る限り結局過去の名作をいたずらに食いつぶす同窓会フィルムを抜け出ないようだし、大人向け・子供向けを問わず日本の創作業界がかつての力を失っているのは一目瞭然だ。
少なくともこんなもので喜ぶような感性を私は全く持ち合わせていない、少しでもさじ加減を間違えれば原作ファンからは非難轟々のリスクがあることを重々承知の上で作る覚悟が必要だろう。

何でもかんでもリメイクリメイクリメイク！本当に金儲けの為なら何しても良いという阿漕な拝金主義が透けて見えるようで本当に嘆かわしい。