見出し画像

なぜ八神太一は外交官を選んだのか徹底考察!デジタルワールドを冒険していなかった場合の彼の将来は?大輔のラーメン屋と何が違うのかも解説

先日の記事で角銅博之さんの記事を引用させていただいたときに、以下の部分を抜粋いたしました。

25年後、大人の太一の職業を外交官、と表記しましたが、一つの国にとらわれてるわけではなく、自由な立場で平和や友好をもたらそうとする人を表すうまい言葉が見つからなかったからです。その活動があまりに多岐にわたって多忙だったため、後輩である大輔よりも結婚や子供を作るのが遅れることになり、最終回の場面では太一の子供がほぼ一番幼いということになってます。

しかしこの発言、よくよく考えたら変です。
どこが変かって「一つの国にとらわれてるわけではなく、自由な立場で平和や友好をもたらそうとする人」という部分であり、外交官は決して「自由な立場で平和や友好をもたらす仕事」ではありません
まあこの辺りは角銅さんをはじめ当時の作り手が政治経済に疎く、政治家や外交官の活動がどういうものなのかを知らなかった、あるいは知った上で敢えてこの表現を使ったという可能性も十分にありそうです。
外交官がどういう仕事かというと、日本の国益を守るべく外国との交渉・文化交流・情報分析・邦人保護活動などをするような仕事であり、私の生まれ故郷の宮崎だと小村寿太郎などが有名ですね。

こう書くといかにも国際的で派手なイメージがありますが、実際の仕事はとんでもなくめんどくさいし地味です、接待もしなきゃいけないし時には不条理や理不尽も味わうことになりわけですから。
しかもあんなにやんちゃで無茶しまくりだったサッカー少年が大人になったら急に人が変わったかのように政治の世界へ行くわけですから、大輔のラーメン屋に負けないぐらい衝撃が大きかったのではないでしょうか。
別に人間世界とデジタルワールドの架け橋になるのであれば何も外交官になる必要はなく、インタープリターや投資家、冒険家といった職業でもいいわけですし、それこそ大輔みたいにチェーン店を持つ実業家もありです。
しかし、そんな中で太一はわざわざ「外交官」という国家権力側になることを選んだわけですから、そこには何か大きな理由や彼なりの意義があってそうしたのだと思われます。

したがって、今回はアニメの太一が何故サッカー少年という体育会系からわざわざ外交官というめんどくさく柵も多そうな政治の世界を選んだのかについて彼の人となりや劇中の描写をもとに考えてみましょう。
ちなみに黒歴史の「Tri.」や「ラスエボ」に関しては「スタッフが勝手な後付け設定を足して台無しにした作品」ということで、これはもうないものとして語ります。
まあ強いていえば太一が早稲田大学政治経済学部へ行ったことはまあ良しとしましょう、ここだけは後付けとしても使える設定ではありますから。
その上でじゃあ何故太一が外交官を選んだのか?もしデジタルワールドを冒険していなかった場合の彼の将来は?大輔のラーメン屋とは何が違うのかも解説していきましょう。


なぜ八神太一は外交官を選んだのか?

まず太一が外交官を選んだ理由についてですが、個人的見解では「強き権力志向とデジタルワールドへの飽くなき執着」に他なりません。
こう書くと何だか物騒な感じがしますが、でも無印から02の太一の描写を見るとかなり過激なタカ派であることは間違いないので、決して誤解を招くような表現でもないと思います。
無印の頃から一貫してそうですけど、漫画の「Vテイマー01」のタイチとアニメの太一で何が大きく違うかというと、「力への執着」と「正義の暴走」なのですよね。
漫画版のタイチはアニメとは違って頭脳派テイマーとして描かれていましたから力に固執することもなく正義感を暴走させることもない、とても小5とは思えない完璧超人として描かれていました。

それに対してアニメの太一は基本的に人の言うことを聞かないワンマンなスタンドプレーの暴君であり、背中に有するカリスマ性と天性のリーダーシップでメンバーをまとめてますけど実はとてつもなく我儘で傲慢です
というかそうじゃなかったら無印の16話で暴走してスカルグレイモンへの暗黒進化なんかさせませんし、ダークマスターズ編でも気落ちしているミミや太一に反発するヤマトへ正論でブン殴ることはしないでしょう。
仲間のことは確かに凄く大事ですし妹のヒカリなんかは目に入れても痛くないほど猫可愛がりしている超ブラコンですけど、でも自分の野望や「これ!」と決めたら絶対に譲らないし対立したら容赦ありません。
しかも合理主義者ですから後半になるにつれてどんどん暴力的かつ冷徹な合理主義者へと変貌していきます、だからこの時点で間違いなく彼は「軍人」であり「戦士」なのですよね。

しかしそんな彼の活躍も3年後には紋章の喪失とデジモンカイザーの台頭によって無力化させられ、しかもそれに代わって台頭したのがよりにもよって「奇跡の輝き」である我らが本宮大輔君だったのです。
「02」の太一は基本的にいいところがありません、パートナーのアグモンはデジモンカイザーによって再び暗黒進化させられ、更には大輔たちに「喧嘩しなきゃ友達にもなれない」と言いながら実際はそれが通用しませんでした。
皮肉にも喧嘩した大輔とタケルは親友になれず、喧嘩しなくても大輔と賢が親友になってしまい、しかも大輔は39話で太一から離れて自分の価値観で行動するようになり、「ディア逆」では最大最強だったオメガモンの両腕すら捥がれました。
大輔に自分が欲しかったものも全部奪われて心が折れてしまった彼の悲痛な表情といったら最高ですよ私からしたら……だって散々デジタルワールドで無益な殺生を行って正論でぶん殴り続けてきた因果応報ですから。

そうして大輔に全部を持って行かれた彼に残されたものは「正義の暴走」と「力への執着」であり、そこで普通ならデジタルワールドとつながることを諦められたはずなのに、それが出来なかったのでしょう。
戦うための「暴力」としてのパートナーデジモンであるアグモンとの活躍が見込めなくなった彼は戦いの場を「政治」に見出し、「暴力」以上にこの世を支配する「権力」に目をつけたのだと思われます。
政治の世界なら権力を使ってまだデジタルワールドと交渉ができるし戦える、太一にとって最前線に出る尖兵からもっと強力な「国家権力」に気づけたことはありがたかったのかもしれません。
そこに彼自身の持つ「正義の暴走」が大筋の部分で合致したから、わざわざ苦手だったはずの勉強に取り組んで外交官になることでデジタルワールドの体制側であるゲンナイ・イグドラシル・ホメオスタシスと同じ側に回ったのです。

言うなればデジタルワールドを妄信的に愛するもデジタルワールドからは塩対応を食い続け愛されなかった闇深いリーダーの異常な執着が見て取れます。
自然体でデジタルワールドからも人からもデジモンからも愛されていて自然に自分以上の奇跡を起こせてしまう大輔とはこういうところからも違っていたのですね。

デジタルワールドを冒険していなかった場合の彼の将来は?

こうして見ると、実は12人のテイマーの中で八神太一こそ一番デジタルワールドの冒険によってその価値観ごと人生を狂わされてしまった被害者であったのかもしれません。
もしもデジタルワールドで冒険していなかったら、アグモンに出会っていなかったら、太一の人生はもっと真っ当で穏やかなものだったであろうことが容易に想像されます。
それこそ運動神経は抜群でしたから、デジタルワールドに行ってなかったら彼の将来はそのままストレートにプロサッカーへ転向して一流のアスリートになっていたでしょう。
もしくは父親の進と同じようにサラリーマンか、あるいは大輔のラーメン屋と同じように起業家として独立して自分独自のビジネスを打ち立てるかのどれかです。

そもそも外交官という政治の世界へ行っている時点でまずまともではないんですよね、だって大人の柵や忖度だらけの大変な世界ですからね政治って。
今の岸田首相を見ればわかるけど、政治の世界って芸能界と同じでいろんな縛りが発生するし、何かスキャンダルや汚職事件でも起こそうものならすぐにすっぱ抜かれます。
しかも政略結婚だとかそういうのもあるでしょうし、何より上級国民とも関わることになりますから、まあまず堅気の一般人と同じような生活は望めないでしょう。
だから外交官として大成するまでの間、かつての仲間たちとの縁すら切り離して政治の世界で立ち向かって矢面に立つ彼の背中はとんでもなく孤独なはずです。

選ばれし子供の中である意味一番闇が深いのが八神太一でしょう、それこそ高石タケルや妹の八神ヒカリ以上に物凄く深い闇を抱えて生きているのではないでしょうか。
あの大きな目にどれだけの苦労と絶望と挫折を抱えて生きてきたかなんて想像すらしたくないですね、彼の裏なんて知ってしまったら絶対に関わりたくない人ですから。
だからさき姫さんが「彼は見合い婚ではないか」というのもわかる気がします、ただでさえ女心がわからない上に政治の世界なんて汚い大人の権力闘争が蔓延っていますしね。
逆にいえば、そんな世界に足を踏み入れて抜け出せなくなるくらいにまで彼の価値観はデジタルワールドによってある意味歪められてしまったと言っても過言ではありません。

私が太一に対してカリスマリーダーとして祭り上げられれば上げられるほどにかえって引いてしまうのはそういう理由によるものです、触らぬ神に祟りなしというじゃないですか。
太一って間違いなくクラスの人気者の「THE」であり、俗にいう「出来ラッシャー(優等生を嘲っていう言葉)」なんでしょうけど、彼に苦手意識を持っている人も一定数いると思います。
実際に私も小中学時代に太一みたいなタイプを知っていましたけど、人気者だった反面「あいつウザいよね」というような声をよくクラスメートの端っこにいるやつから聞かされていましたから。
それもあって太一に対して好感を持てないのもありますが、話を戻して太一って間違いなくクラスの人気者だったタイプがそのまま政治の世界で成り上がったという感じなんですね。

それこそ「テニスの王子様」でいうなら幸村精市とか近いかもしれません、小さい頃はわんぱくなガキ大将だった合理主義者が挫折と絶望と苦労と闇の深さを知ってしまったというのが似てます。

大輔のラーメン屋と何が違うのか?

さて、最後に大輔のラーメン屋との大きな違いですが、まず大きな違いは大輔は太一と違ってデジタルワールドの冒険がなくてもラーメン屋を目指したであろうということです。
大輔って良くも悪くも「奇跡の輝き」でありながら、決して自分自身がデジタルワールドから降りかかってくる使命の重さとかそういうのに「呑まれない」タイプなんですよね。
だから視聴者も安心して見られるし、デジタルワールドでも人間世界でもどこにいようと「本宮大輔」というエターナルヒーローでいられるわけじゃないですか。
八神太一みたいにデジタルワールドになると人が変わるみたいな感じではなく、デジタルワールド側の理屈や理念に無自覚に逆らった生き方ができて、しかもそれが愛嬌として許されるのが大輔なんですよ。

太一にはこの生き方は許されません、太一はとにかく矢面に立って戦い続けるというある種のカルマを抱えて生きなければいけませんから、生まれた時からリーダーでいなければならないのです。
そしてそのリーダー像が通用せずに民衆の期待を裏切ってしまうと「ディア逆」がそうであるように世間の人たちから応援されずに磔の刑に処せられてしまいます
一方で大輔はちゃんと「民衆」の側に寄り添える人であり、民衆から支持されるからこそディアボロモンとの戦いの時にもたくさんの子供たちから自然に応援されるんですよ。
だから子供たちがわーっと群がってきたり多分世間のサラリーマン受けが良かったりするのも大輔でしょうね、気軽にラーメン通じて近い距離で喋ってくれそうだから。

一方で太一はカリスマ性が強すぎて近寄りがたいというか憧れられるけど同時に敬遠もされるから、「何この人怖い」って子供なんかは思ってしまうのかもしれません。
そこの「親近感」も大きな違いというか、大輔って本人もすごくコミュ力高くて本質見抜く天才で奇跡の輝きなのに、同時に「怖さ」を全く与えないのも特徴的です。
ファンは太一と大輔を比較した時に太一のカリスマ性やリーダーシップばかりを盛り上げがちですが、逆にいえば大輔のような人徳や共感性は太一には一切ないでしょう。
仲間たちも太一だと遠慮していえないことがあるけど、大輔だと遠慮なくいえてしまうというようなところがあるでしょうから、それが職業柄にも出ている気がします。

なんか書けば書くほど、擦れば擦るほど私の中の太一像が世間の思っている以上に深い闇を抱えた、外交官とデジタルワールド以外のことは全て切り捨てた孤独な人の印象が強くなります。
逆に大輔はどれだけ稼いで偉くなったとしても気がつけば身近に寄り添ってくれそうな、どこまでも慈悲深く優しいエターナルヒーローの印象が強まっていくばかりです。
散々屋台ラーメンで酒飲みながらヤマト共々仕事の愚痴を大輔に語った挙句「はいはい、いい加減にしてください。じゃないとうち出禁にしますよ」つって手玉に取られていたら理想です。

我が家の太一さんというか無印組は全員大輔に出禁マウント取られて頭が上がらないという設定になっていますから。
12人の中で「食」と同時に「資金」も提供している株主が大輔なので、大輔から見限られたら一巻の終わり、というのが25年後の12人のマイ基本設定。
だから社長出勤みたいに最後に遅れてやって来ても許されるのだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?