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鳥山明先生が描く(←これ重要)孫悟空とベジータの力関係と距離感・態度の変化についてまとめてみた

そういえば、ふと思い立って『ドラゴンボール超スーパーヒーロー』を見直した時にベジータが「カカロットに勝ったぞ!!」と誇らしげに叫んでいたのを思い出した。
長年の苦労が報われたという感じだったのだが、思えば悟空とベジータの力関係と距離感・態度の変化についてはきちんと書いたことがなかったので、今回取り上げてみることにする。
題材とするのは『ドラゴンボール』の原作漫画と鳥山明先生が直々に監修として携わっている「神と神」「復活の「F」」「ブロリー」「スーパーヒーロー」の映画のみだ。
アニメ版の「Z」「GT」「改」「超」並びにとよたろう先生が描いている漫画版「超」に関しては完全なスピンオフとして扱っているため、今回の考察の対象には含まないものとする。

今や孫悟空とベジータといえばジャンプ漫画のみならずあらゆるバトル漫画・アニメを代表するライバルであるかのようなパブリックイメージがあるだろう。
しかし、原作漫画のサイヤ人編並びに魔人ブウ編、そして「スーパーヒーロー」以外で2人が真っ向勝負で戦って決着をつけたことはない
今回はそんな2人の関係性について鳥山先生のインタビューでの発言なども含め、改めて考えてみたい。


【サイヤ人編】

・開始当初の力関係は明らかにベジータ>>>>>>悟空であり、何なら悟空は弱虫ラディッツにすら雑兵扱いされるレベルで弱かった
・ラディッツが1500、ナッパが4000、ベジータが18000という戦闘力であり、下級戦士とエリート戦士という区分がなされる
・一度死んだ悟空は界王様の元で修行をし、基礎戦闘力を8000まで上げ、界王拳で16000まで上げることが可能になった
・しかし、パワーもスピードもテクニックもベジータが完全に悟空の上を行き、少なくとも空中戦ではベジータに分がある
・体にガタが来るというリスクと引き換えに3倍〜4倍界王拳を使って何とかかめはめ波の打ち合いには競り勝つが、悟空はここで満身創痍になる
・一方でベジータは更に大猿化という余力を残して悟空を圧倒し全身を複雑骨折させたので、個人の実力では完全にベジータの勝利
・悟飯の大猿化・ヤジロベーの尻尾切り・クリリンに託された元気玉などの想定外で何とかベジータを追い込むが、それでもくたばらないベジータ
・結果的には完全な痛み分け(ドロー)であるが、この時はライバルというより憎むべき宿敵であり和解や妥協の余地はなかった

【ナメック星編】

・前半は悟空がナメック星に到着するまで時間がかかるため、ベジータが第三勢力として暗躍するという予想外の展開に
・サイヤ人編で死にかけたベジータは戦闘力が24000まで大幅に上昇し「サイヤ人は死の淵から蘇るたびに強くなる」という性質が明かされる
・キュイ・ドドリア・ザーボンと容赦なくフリーザ軍の側近を撃破していくベジータは完全なダークヒーローだが、決して地球人サイドの味方ではない
・ギニュー特戦隊のグルドを撃破するもリクーム戦で大苦戦、ここで重力トレーニングを済ませた孫悟空が颯爽と登場しリクーム・ジース・バータを撃退
・そんな悟空を見て「まさか、あいつがサイヤ人を超えた超サイヤ人か!?」と驚愕するベジータ、力関係が逆転し孫悟空≧ベジータとなる
・仕留め損なったリクームとバータを撃破したベジータは悟空を「甘い」と詰り、悟空はベジータを「殺すまでしなくてもいいだろ」と嗜める
・フリーザ戦で孫悟空が超サイヤ人に覚醒したことでベジータは大きく力関係において離され、更にフリーザを仕留め損なったために未来トランクスが倒すという展開に
・悟空と未来トランクスの超サイヤ人を目の当たりにしたベジータは300倍の重力トレーニングに励み超サイヤ人を更に越えることが目標になる
・思えばここからベジータが一方的に悟空をライバル視するという歪んだ関係性に

【人造人間編】

・3年間修行に励んだにも関わらず心臓病が理由で19号に苦戦してしまい倒れてしまう孫悟空
・そんな悟空を蹴り飛ばし「カカロットを倒すのはこの俺だ!」とし、3年間の修行の末にベジータは超サイヤ人へ覚醒した
・更にここで唐突に明かされる「ベジータはサイヤ人の王子」設定、悟空が苦戦した19号を圧倒し撃破
・そんなベジータを見てピッコロが「超えたかもしれん、悟空を」と言うが、その後17号と18号の想定外の強さに苦戦しベジータが敗北
・病から立ち直った悟空は「今のベジータに勝てねえならオラにも勝てねえ」と言い、この時の力関係はベジータ≧悟空・未来トランクス
・精神と時の部屋の修行で明暗が別れ、孫親子とベジータ親子で大きな力の差が開き、これが魔人ブウ編までベジータの屈辱として続く
・超ベジータとムキンクスという黒歴史の末にセル完全体に負けたのを孫親子が超え、力関係がサイヤ人編と大きく逆転する
・セルゲームでベジータはついに自分が言っていた「動けないサイヤ人」としてお荷物になり悟飯に謝罪する事態に
・この時のベジータは完全にいいところがなく、悟空の「ああ、ずいぶん上だと思う」発言とベジータの「俺はもう戦わん」発言
・地球の未来は守られたものの、結局孫悟空の死という結末そのものを変えることはできなかった

【魔人ブウ編】

・マジュニア編以来となる天下一武道会で久々に孫悟空が1日限定で復活し、パンチングマシンで孫悟空は186でベジータは容赦なく破壊してしまう
・現代トランクスが孫悟天に勝利した様を見てベジータが悟空に対して「俺の息子の方が血統が良かったらしい」と誇らしげに保護者自慢大会
・その後界王神からの頼みでダーブラ・魔導師バビディによりベジータの奥底にあった悪の心が引き出され魔人ベジータになり、潜在能力を引き出される
・何とか悟空に相手してもらおうとするベジータは天下一武道会で観客を虐殺、ベジータの決意を知った悟空は超サイヤ人2で応戦し、二人の実力は互角
かと思いきや唐突に超サイヤ人3という燃費の悪い形態が出てしまい、完全に悟空>(超えられない壁)>ベジータとなった
・そのことに怒ったベジータは悟空に「ご機嫌を取ったつもりか!」と怒り悟空は何も言い返せないが、状況が状況なので仕方なくベジットに合体
・合体の影響なのか何なのか悪ブウに吸収された悟飯たちを救った悟空とベジータは急速に仲良しこよしになる
・超3悟空とブウの戦いを見たベジータが遂に「カカロット、お前がナンバーワンだ」発言をし、大きな力の差が埋まらないまま原作が終了
・完全版ではベジータの「いつか勝ってみせるからな、カカロット」というコマが追加され、悟空の強さを認めつつも超えることを諦めていない

【神と神】

・超サイヤ人3の孫悟空を歯牙にも掛けず瞬殺する破壊神ビルスが登場、何とベジータにとってはフリーザ以上の畏怖の対象だった
・そんなビルスのご機嫌どりの為か、ファンからも黒歴史呼ばわりされるベジータのビンゴダンスを悟空がなぜかリスペクト
・ブルマを傷つけられた怒りからベジータは「俺のブルマを!」と「すげぇ超サイヤ人」に覚醒し、悟空が手も足も出なかったビルスに一矢報いる
超2の状態で超3を一時的に上回るという力関係の逆転が発生し、ここから原作で大きく水を開けられたベジータの躍進が始まる
・しかし、そんなベジータですらビルスには歯が立たず「せいぜい1割程度」でしかなかったということらしい
・そんなビルスが地球に来た目的は「超サイヤ人ゴッドを見たい」からであり、悟空は神龍に超サイヤ人ゴッドへの覚醒方法を聞く
・正義のサイヤ人5人が手を繋ぎ悟空が一足先に超サイヤ人ゴッドに変身、3では歯が立たなかったビルスと対等に戦えるようになる
・悟空が地球を守るという使命から解放され再び明朗快活な初期の悟空に戻り、この時は悟空の負けで物語が終わった
・力関係としてはまだまだ悟空>(越えられない壁)>ベジータであった模様

【復活の「F」】

・経緯は分からないが悟空とベジータがなぜかウイスに弟子入りして稽古をつけてもらうような関係性に
・ベジータのポジションが「悟空のライバル」というよりも「悟空の親友」みたいな距離感の近しさになり、行動を共にすることが増える
・ウイスさんから「ベジータさんは神経を張り詰めすぎて100%の力を発揮できない」「悟空さんはリラックスし過ぎて自信過剰な部分がある」という欠点が指摘される
・復活したゴールデンフリーザが何と悟空が会得した「超サイヤ人ゴッドの力を持った超サイヤ人=超サイヤ人ブルー」と対等になっている
・そしてそんな悟空と違いたった一人で修行のみで超サイヤ人ブルーに覚醒したベジータ、悟空が苦戦したゴールデンフリーザを圧倒して追い詰める
・フリーザに地球を破壊されてしまったのを「自分の油断・甘さがそうさせた」と反省した悟空は今度こそ確実にフリーザを撃破
・結果としては悟空に勝ちを譲った形だが、力の差はなくなりほぼ完全に悟空=ベジータになり、これが「超」以降の力関係の基礎となる

【ブロリー】

・力の大会から数ヶ月後、ベジータは「フリーザを野放しにしておけない」という理由からさらなる強さを渇望し、悟空は過酷の意味を忘れてしまう
・「たったひとりの最終決戦」とは全く異なる「絶対生き延びるんだぞ」と言い放つ優しいバーダックとギネという親子関係が築かれる
・一方ベジータの正式名称が「ベジータ四世」であることが明らかになり、フリーザに星を破壊された時も全く悔しがらずにドライだった
・そんなベジータ四世の親が何と「ブロリーは危険だから」と父親のパラガス共々小惑星バンパに追放し、ブロリーが一方的にベジータを憎む
・数少ない生き残りだった純血サイヤ人のブロリーは素の状態でゴッド・ブルークラスと互角に渡り合う規格外の化け物
・アニメ映画で初登場となるベジータゴッドと悟空ゴッドの戦い方の違いが描きわけられ、ベジータ以外が全員一回ずつ岩盤を経験
・最終的にゴジータブルーでフルパワーブロリーを圧倒するが、力関係はまだ分からず悟空がブロリーと和解する形で終了

【スーパーヒーロー】

・力の大会から数年後、ブロリーが悟空とベジータとの仲間入りを果たし惑星ビルスのもとで力のコントロールの修行に励んでいる
・一方でベジータはイメージトレーニング・瞑想に目覚め、初めて「ジレンを超える」という悟空以外のライバルを超す目標ができた
・ベジータによるとジレンと自分たちに大きな力の差はなく、力を無駄遣いせずテクニックを完璧に極める方向へシフト
・そんなベジータをからかう悟空はどうやら自分がかつてやっていた瞑想・イメトレの重要性を忘れてしまいファンからは認知症呼ばわりされる
・模擬戦は木の上で構えるベジータと低いところで構える悟空という、かつてのサイヤ人編を彷彿させる構図に戻った
・超サイヤ人も気弾も一切使わない真っ向勝負で遂にベジータが悟空に勝利し「カカロットに勝ったぞー!」と大喜び、悟空も満足げな表情
・力関係は再びベジータ>悟空に戻り、長年続いた2人の力関係に1つの終止符が打たれることとなった。

まとめ

こうして見ると、悟空とベジータはライバルキャラでありながら実は原作者の鳥山明先生が決着を明確につけたことは「スーパーヒーロー」まで一度もなかった
修行によって大きな力の差が開いたことはあっても、真っ向勝負でどちらが強いのかに関しては長いことファンの想像に任せていた部分が強いといえるだろう。
魔人ブウ編は途中で中断した上に悟空が超3を隠していたから決着が着かずじまいだったが、それを「スーパーヒーロー」で改めて描いたのにはやはり思うところがあったのだろうか。
思えば来年の「DAIMA」も悟空とベジータを中心に映していたし、鳥山先生にとってももう悟空とベジータは切っても切れない関係性かと思われる。

同じサイヤ人というルーツを持ちながら、紆余曲折の末にようやく理想の関係に近づけてこられたというのが今の悟空とベジータかもしれない。

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