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なぜ八神ヒカリのジョグレスパートナーは井ノ上京でなければならなかったのか?大輔に辛辣な態度を取り続けていた理由は?25年後のヒカリの結末についても考察

以前に高石タケルについて考察したので、今度はその相方というか魂の双子的な存在である八神ヒカリについて考察してみましょう。
はっきり言いますが、私の中で八神ヒカリは全12人いるアドベンチャーシリーズのキャラクターの中で「大嫌い」「胡散臭い」「悪女」の三拍子が完璧なまでに揃った存在です。
よくネットでは「最終兵器彼女」だの「撲殺天使ヒカリちゃん」だの「清楚に見せかけて男誑かす(主な被害者は大輔)ビッチ」だの「電波」だの「菩薩」だのと不名誉なあだ名がつけられてます。
かく言う私も以前にやってたホームページで感想を書いた時は宇宙人にしか見えないことから「(地球外)知的生命体H」という何の有り難みもない称号を彼女に与えてやったほどです。

タケルも大概内面描写が希薄で掴みにくいキャラクターでしたが、なんだかんだ「男の子」なので根っこは割とシンプルだし外面的な部分から考察していけば大体のことはわかります。
でもヒカリに関してだけは本当に当時から今まで一切わかりませんし共感も萌えもへったくれもありません、悪い意味でこの世の者とは思えない悍ましい何かが少女の皮を被っているとしか思えないのです。
こんなこと言うとアレですが、マジでタケルとヒカリってアドベンチャーシリーズの中でもトップクラスの「突然変異」じゃないかしら、あの両親からこんなわけのわからんのが生まれたわけですから。
太一とヤマトはまあ何となく「この親にしてこの子あり」というのがわかるし、02組は伊織と賢を除けば大輔と京が物凄く円満な普通の家庭で育っているので健康的だなあと思います。

だけど、タケルとヒカリに関しては過去のトラウマとかそういうのが大きく影響しているとはいえ、それだけであんな訳の分からない突然変異の奇妙な天使コンビが出来上がるでしょうか?
まあ大輔も大輔で大概その2人をバカにできないくらいの電波体質やぶっ飛びっぷりがあるんですが、彼の場合は「まあ大輔だから」で納得できてしまう異様な説得力があります。
しかし、タケルとヒカリはそういう「このキャラだから成立する」という説得力がないので、わざわざこっちから内面をチマチマ読み解いていかねばならんというめんどくさい仕様です。
ということで、今回はヒカリに関する考察ですが、個人的に気になるのは「京がジョグレスパートナーだった理由」「大輔に辛辣な態度を取り続けた理由」「25年後の結末」となります。

※言っておきますが、当方は無印組が大嫌いであることには一切変わりなく、タケル同様彼女を擁護する気は一切ありませんので、その点をご了承の上でご覧ください。


(1)井ノ上京が八神ヒカリのジョグレスパートナーだった理由

まず八神ヒカリを考える上で一番焦点を当てて考えなければならないのは井ノ上京がジョグレスパートナーでなければならなかった理由です。
大輔と賢、タケルと伊織は本質的に「似た者同士」だからわかるのですが、京とヒカリはそれこそ太一とヤマトのような水と油みたいな関係性に見えますし、初期からの関係性の構築もほとんどありません。
例えば大輔と賢の場合、無印のシリーズ構成を担当していた西園悟が書いた8話で大輔がデジモンカイザーの正体を知ったことで伏線が張られ、既に友情のデジメンタルの時には「賢」と連呼していました。
つまり序盤のあの段階で大輔はすでに賢を「倒すべき敵」ではなく「等身大の少年」だと本質的に見抜いていたためにキメラモン戦を経た後、誰よりも真っ先に手を差し伸べて仲間に引き入れようとしたのです。

だからジョグレスのドラマも3組ある中で一番ロマンチックでカッコいいし、そのあとの究極進化を含めて大好きですが、伊織とタケルに関してはまあ「幼稚な正義感を拗らせ暴走させた背伸びした子供」という共通点からわかります。
まあシャッコウモンは土偶天使っつーデザインがクソかっこ悪くて、このデザインを担当したデザイナーはマジで何を考えてんのかと小一時間問い詰めたくなりましたが、その点最も違和感しかないのが京とヒカリです。
未だに何度見直しても京とヒカリについてはそれまでの関係性の構築というか下地となるものが全くないので、ジョグレス進化のあの回だけは異様に浮いて見えてしまいます。
ましてや結構日曜朝の子供向けアニメとしては割とギリギリなキャットファイト要素も入っていたので、間違いなくあそこは少年漫画の友情とは全く異なる文脈が紛れ込んでいるんですよ。

そもそもデジモンシリーズにおいて「2人の女の子がコンビを組んでデジモンを融合進化させる」というバディものの要素自体がここ位しかなく、「テイマーズ」「フロンティア」「セイバーズ」にその要素はありません。
しかし、よくよく見ると京とヒカリの組み合わせは偶然の要素が強かったにせよ「グイグイ引っ張っていく明るく強気な女の子×内気でなかなか自己主張をはっきりさせない(その癖無駄に頑固な)女の子」というコントラストがはっきりしています。
この組み合わせは後の「ふたりはプリキュア」の美墨なぎさ×雪城ほのかやその集大成として作られた「ふたりはプリキュアSplash☆Star」の日向咲×美翔舞などにも見られる要素ではあるのですが、その先駆けかもしれません。
誠に皮肉ではありますが、八神ヒカリって紋章の属性は「光」のくせに本人のキャラクターは何を考えているんだか分からずおとなしめな陰性の強い性格という、極めて屈折したあり方ですよね。

ただ、だからこそヒカリには京が必要だったのではないでしょうか、大輔だったら「異性」というのもあるために超えられないでどこか気を遣ってしまう一線を同性だからこそあっさり超えていけるのが京だったのです。
京自身は明るさが時に方向性を見失って大輔とは洒落にならないくらいのやらかしも多い暴走機関車ですが、そのウザ過ぎるくらいの明るさこそが逆にヒカリの潜在意識の解放をある種可能にしたのだと思えます。
兄の太一にも兄と似たタケルにも、そして後述する大輔にも心を開けず頑なだったヒカリにとって京は「魂の双子」でも「本質が似た者同士」でもない「正反対の存在」だったのではないでしょうか。
大輔が超えられなかった一線を破ってヒカリの心の中に入っていって閉じられた潜在意識を解放するきっかけを与えて彼女が独り立ちするための最初のきっかけを与えた存在が京だったからジョグレスパートナーになったのです。

賢に関してはいわゆる「同病相憐む」みたいな感覚が強いので、タケルや伊織みたいに反対はしないものの、かといって大輔のようにグイグイと行けないというめんどくさい関係です。
そう考えると京も大輔共々厄介な問題児をデジタルワールドから押し付けられた被害者だよなあ、つかあれか、「02」は実質「3年B組金八先生」の小学生版みたいなもんか。
面倒見のいい明るい系が湿度高くてめんどくさい問題児をメンタルケアして引っ張り上げるみたいな(笑)

(2)大輔に辛辣な態度を取り続けていた理由

そんな極めて屈折した紋章とは正反対の陰性の強い性格をしている八神ヒカリですが、大輔ファンとしてはやはりヒカリが彼に辛辣な態度を取り続けていた理由を考察することは避けられません。
特に序盤は本当に「デジモンカイザーになる予定だった」ということを考慮に入れた上でも大輔に対する辛辣な態度が本当に虫が好かないのですが、ではこれは「02」だからなのかというそうではないと思います。
そもそもヒカリは無印の初登場の21話からこの世のものとは思えない不気味さと胡散臭さを醸し出していたので、私は思わず「(地球外)知的生命体H」と名付けたのですが、それは決して間違いではありませんでした。
ずっと兄の太一にベッタリ付いていった、もはやブラコンというレベルを超えて近親相姦の領域にでも突入しそうな気持ち悪い関係性に加えて、レディデビモン戦で見せた好戦的な態度と倒した後の満面の笑みが最高にキモいのです。

タケル同様「02」の性格の悪さは元々無印の頃から持っていたものが肥大化してああなっただけであり、私としては全く驚きではありませんでしたが、まあそれでも大輔への辛辣な暴言に人も無げな振る舞いの数々は許せません。
じゃあ問題はなぜ大輔にそんな態度を取り続けていたのかというと、色々考えられますが一番は「憧れであると同時に苦手」だったんじゃないでしょうか、何故かって彼女は大輔に兄・太一の面影を重ねていたからです。
現に第1話でヒカリは太一からゴーグルを譲り受けた大輔を見て「似合う」と言ってましたが、彼女が大輔を褒めたのはここ以外だと終盤のデーモン戦とベリアルヴァンデモン戦のみであとは基本的に塩対応しかしていません。
おそらく大輔が勇気のデジメンタルとゴーグルを継承して「仲間」になった時に大輔に対する見る目や意識が変わったのだと思います、それがなかったら恐らくは「同級生」「普通のクラスメート」でいられたことでしょう。

でも話が進めば進むほど大輔の姉との不仲であったり兄・太一とは違う部分だったりが際立つように見えてしまい、「違うそうじゃない。私の理想ではない」という思いが優ってしまい、大輔を素直に直視できなくなったと思われます。
その癖タケル同様他人の心情は全く理解できず、「ストレート過ぎるのよ、大輔くんは。そんないきなり迫られたって、すぐに答えは出せないんじゃないの?」なんてタケル同様にブーメランなセリフを言ってしまうのです。
最初に聞いたときは「お前がいうな」でしたが、同時にこれは表面化していない「潜在意識レベルでの大輔に対する憧れ」があって、それが思わず口を衝いて出る形となってしまったのかもしれません。
それはずっと自分の前を行き背中に有するカリスマ性と力強いリーダーシップで仲間を引っ張ってきた兄とは全く異質の大輔にしか持ち得ない「強さ」であり、だから終盤のデーモン戦ではそれを「大輔くんの心の光」と素直に言語化しています。

そしてベリアルヴァンデモン戦では遂に京共々「最後まで諦めない、絶対に負けないって信じる大輔くんのまっすぐな心がなかったら……!」「そんな大輔の熱い心がなかったら……きっと、これだけの力は生まれなかったわ!」と素直に賞賛したのです。
ヒカリにとっての大輔はだから兄の太一とは全く性質の異なる「想い」の強さ、それがヤマトから継承した「友情」とキメラモン戦・ウォレスとの出会い・タイチとゼロマルとの共闘の中で完全に覚醒させた「奇跡」を持つ最強の男でした。
それはヒカリが喉から手が出る程に欲しかったものであったに違いなく、「想いの強さを力として変換し、その変換した力で勝率0%をひっくり返して100%に繋げる」ことこそヒカリが持ちたくても持ち得なかった大輔自身の個性なのです。
だって兄の太一の「勇気」、ヤマトの「友情」、そしてタケルの「希望」にヒカリ自身の「ヒカリ」と無印組がやっと開花させた個性である紋章を大輔は複数、しかも無意識のうちにサラッと使いこなしてみせているのですから。

そんな大輔に対してヒカリはある種の憧れと同時に嫉妬・羨望も持ったでしょうし、もしかするとそれ故に自分が「光」しか使えないことが余計に彼女をちっぽけな存在だと思わせてしまったのかもしれないのです。
そう考えると大輔ってタケルに嫉妬して噛み付くシーンが前半では目立ちますが、実際は逆でタケルとヒカリの方こそ大輔にクソデカ感情抱えていて、でもそれを素直に受け止められないだけなんじゃないの?と思ってしまいます。

(3)25年後のヒカリの結末について

さて、そんなタケル以上にめんどくさくて私自身も全く理解できない突然変異の天使の片割れである八神ヒカリですが、最後に考えたいのは彼女の25年後の結末です。
ヒカリは「幼稚園の先生」として子持ちになっていましたが、この最終回で当時は色々と言われ憶測が飛び交っていましたが、個人的にはどっちも独身貴族で子供は養子ではないかと思います。
あと個人的には外交官となった太一はお見合い婚じゃないかなあと思っているんですが、何故かって彼らは幼少期〜少年期にかけてトラウマを抱えるような出来事が起こっているからなんですよ。
特にタケルとヒカリはそれが強くて、ヒカリの場合もまたタケルと同じように2つのトラウマがあって、1つが光ヶ丘テロ事件の犯人であること、そしてもう1つがお台場霧事件でウィザーモンを目の前で殺されたことです。

まず1つ目に関しては上記の大輔や京関連とも繋がりますが、ヒカリはずっと自分が光ヶ丘テロ事件の犯人であることを兄の太一以外の誰にもずっと言えないままであり、その兄が21話でヒカリの手を一度離してしまいました。
ここでヒカリは「お兄ちゃんは私の手を離してしまった」となってしまうのですが、そこに追い打ちをかけるようにお台場霧事件では目の前でウィザーモンを失ってしまうという最大級のトラウマを抱えることになります。
タケルが13話のエンジェモンVSデビモンで「ウィルス種=闇=悪」の価値観が形成され拗らせてしまったのと同じように、ヒカリもまたヴァンデモンにウィザーモンを殺されたことでその価値観が形成され拗らせてしまったのでしょう。
だからヒカリの心の針はおそらくこのウィザーモンの死を持って完全に止まってしまい、タケル同様にそこから抜け出せなくなってしまったことになりますので、史実であればエンジェウーモンへの初進化は暗黒進化だと思われます。

更にダークマスターズ編の45話ではホメオタシスに頭乗っ取られらた(実質の洗脳)せいで肝心の選ばれし子供の使命がわからないまま、お兄ちゃんについてくしかなく高熱がぶり返してしまい再び足を引っ張ってしまうのです。
だから「02」スタートの時点でヤマト共々いつ闇落ちしてデジモンカイザーもしくはデジモンクイーンになってもおかしくない要素を抱えていたのですが、その上で完全なトドメになったのが13話のダゴモンの海でした。
あそこで同じ闇を嫌悪するタケルに「いつまで太一さんに頼っているんだ!」とあらぬ追い討ちをかけらてしまい余計に彼女の中で「闇への嫌悪」を募らせてしまい、誰もメンタルケアをしてくれません。
しかもあそこで初潮らしきものを迎えつつあり闇の眷属に花嫁にされかけ、京とのジョグレス回でもデーモン回でも再度海に呼ばれ、挙げ句の果てに終盤のラスボスがトラウマの元凶たるヴァンデモンという最悪の流れです。

以上のことからタケルとヒカリは形は違えどそれぞれに「結婚」というものに対して夢を見れなくなっているのではないでしょうか、でも自分のような子供をもう生み出したくないという思いから「幼稚園の先生」というお仕事を選んだのかもしれません。
だから彼女の将来の夢が大輔たち02組と違っているのは「贖罪」の意識がそこにあって、そりゃあこれで結婚してお母さんになりたいと思えないでしょうし、息子の姿も彼女と似ても似つかない養子になるはずです。
タケルの場合も両親が離婚した時点で既に家庭が崩壊した経験から「自分が結婚しても幸せな家庭が築けず壊れてしまうのではないか?」という思いが少なからずあったでしょうし、小説家を目指す時点でおそらくまともな結婚生活にはならないでしょう。
天使コンビはまずもって無印の段階から「結婚」という選択肢が発生しないようなフラグを散々に立てられているわけです、だから2人とも片親で嫡子ではなく養子というのが25年後の結末の意味するところではないか思われます。

なので大輔ファンとしては「良かったね、ヒカリと結婚なんてしなくて」と思っていまいます(笑)
だってあんなのと結婚したら大輔に負担かかりすぎてまともな家庭なんか築ける気がしないもの。

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