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【フェアウエル】正解はきっと一つじゃない

ちょっと前に映画好きの間で面白い!と話題になっていた『フェアウエル』。なんと今、Amazonプライムで観ることができます。

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中国系アメリカ人のルル・ワン氏が、脚本・監督を手掛けた作品で、彼女のの体験を元につくられています。
当時無名だったルル・ワン監督。ラジオ番組「This American Life」で語ったエピソードが注目され、映画化が決まりました。

■ログライン
人生の壁にぶち当たり中のビリーが、余命宣告された祖母への“嘘”と葛藤しながらも、共に過ごすことで静かに受け入れていく。 

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■あらすじ
ビリーは、NYで家族と暮らしている。物書きになる夢を叶えるため奮闘しているが、グッゲンハイム奨励金の選外通知を受け落胆していた。

そんなある日、両親が甥(ビリーのいとこ)の結婚式のため「長春」に帰郷すると言う。しかしそれは、余命宣告されたナイナイ(ビリーの祖母)に病気を悟らせず、親族が最後に会うためにでっちあげられた“嘘”だった。
祖母と仲が良いビリーはもちろん行きたい。しかし、彼女によってバレることを心配した両親は、NYに留まるよう言い聞かせる。

言いつけに背きビリーは、長春に向かう。
「事実を伝えない」と約束し、参加することを許されたが、真実を伝えるべきだと訴える自分(個人)と、悲しませたくないと反対する家族(集団)の間で何度も葛藤する。
考え方の違いに触れ、対峙しながら、ナイナイや親族と生活をともにすることで、少しずつ受け入れて行く。

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■面白かったポイント
国民性の違い

嘘のきっかけにもなる「余命間近の親族に真実を伝えるか、伝えないか」。
西洋では「個人の命はその人そのもの」、東洋では「個人の命が全体(家族・社会)の一部」とされ、異なる視点(死生観の相違)が鮮明にあぶり出されています。

例えば、結婚式の準備の一コマ。
「結婚式の準備はナイナイに相当なストレスがかかり、安静にして欲しい」と心配するビリーに対して、母親は「人に指示することができて楽しそう」と言います。

中国では「ガンで亡くなる人は恐怖に殺され」、アメリカでは「本人に伝えることで、準備ができる」と考えられている。どっちも相手を思っての行動ですが、始まりは一緒でどちらもナイナイへの深い愛情から。
日本人はどう考えるのかな(「本人に選ばせる」が多いのかな)、世代によっても異なるかも、なんて思ったりしています。

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この映画が動くきっかけとなる“嘘”。
でもこの“嘘”がバレることは重要ではないと、最後まで観て気づきました。

これまで「真実を伝えるのが本人のため」だと、わたしは疑っていませんでした。でもそれは必ずしも「正しいこと」ではないのかなと。

自分は健康だと思うことで、ストレスなく楽しく生きることができる。
タイムリミットを知ることで、準備ができる。
前者を信じ込ることで長生きすることができるかもしれないし、後者では心残りだったことに向き合う勇気がでるかもしれない。

どっちが正解かなんてわからないけど、どちらも優しい想いから生まれたもの。もしいつか自分にその選択が迫られた時、その核だけは見失わないように大事にしたいと思います。

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