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【短歌一首】 吾よりも墓誌知る石屋の語り聴く土の冷たき花曇りの午後


吾よりも
墓誌知る石屋の
語り聴く
土の冷たき
花曇りの午後

短歌はレジリエンス。

先日、久しぶりに墓参りに行ってきました。
自分が幼い頃に祖父母が契約した木々に囲まれた小高い丘の霊園の中の小さな一画。 子どもの頃は大家族だったので、お彼岸にはよく祖父母や兄妹や親戚など多人数で墓参り来てました。 私はほとんど遠足気分でついてきて、秋には兄妹や親戚の子供たちとバッタやコオロギをとったり、霊園中を探検したりして遊んでいました。また、霊園の休憩所で祖母の作ったおにぎりを食べるのをいつも楽しみにしていました。

それから何十年も時が過ぎて、いつも間にかほとんどの人達がいなくなり、あの頃おまけのように参加していた私が今や墓守りとなっています。 霊園のそばには多くの石屋さんがあり、この日もお供えする花を買い水を入れるバケツと柄杓を借りるために、祖父母の代からお世話になっている石屋さんに行きました。 この石屋さんには、毎回、亡くなった人の戒名を墓誌に彫ってもらうこともお願いしています。 

墓参りを済ませて石屋さんに戻ってきてから、しばらくの間、石屋さんと話をしていると、祖父母の代、その前の代までさかのぼって、私の先祖や親族に関することをよく知っているのでとても驚きました。私が知らないような祖父母の話や、私が生まれる前にすでに他界していた父の弟や姉の話もよく知っているのです。(子どもの頃、墓誌に何人か全く知らない人達の名前が刻まれているな、と思っていました。)

今の石屋さんが何代目かは知りませんが、そのように長く大切に顧客との関係を築いているのでしょう。 まるでタイムスリップしたような気持ちで、小一時間ほど話に聞き入ってしまいました。

とても新しい発見のあった、花曇りの午後でした。
もう少し墓参りに来る回数を増やそうと思います。

猫間英介

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