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映画レポ|『スタンド・バイ・ミー』500本近く観てきた私の一番好きな映画

私はこれまで500本近く映画を観てきたが、『スタンド・バイ・ミー』以上に好きな作品はないと言えるほど最も心に残っている映画だ。

言わずと知れた、スティーブン・キング原作の名作映画である。今回はそんな魅力を私の考察も踏まえて紹介しようと思う。

※考察は全て私個人の意見です

■あらすじ

1959年の夏、オレゴン州の田舎町。12歳の少年4人は、性格も個性も異なっていたが仲良しで、いつも一緒に遊んでいた。そんなある日、行方不明の少年の死体が線路上に放置されているとの噂を聞きつけた彼らは、死体探しの旅に出かける。途中で喧嘩をしながらも、少年たちは助け合いながら、鉄道の線路に沿って冒険のような旅を続ける。

https://g.co/kgs/VbbmRD

■作者から離れると映画はどんどんマイルドになる

私はこの作品が好きなあまり、原作(日本語訳のもの)、映画(字幕)、映画(吹替)を全て観た。英語がわからず真の原作まで辿り着けていないのが歯がゆいところではあるが、おかげでひとつ気づいた点がある。

それは、原作>映画(字幕)>映画(吹替)と、どんどんマイルドなテイストになっていくのだ。

例として、ラストに描かれる少年たちが大人になった後の語りに焦点を当ててみる。最も顕著なのがテディだ。

原作→車にはねられ事故死
映画(字幕)→刑務所を出所後日雇い暮らし
映画(吹替)→刑務所を出所後なんらかの仕事に就く
※吹替はDVD版を参照

映画上で、大人になった後死ぬのはクリスのみである。それが原作だとゴーディ以外の全員が死亡してしまう。さすがはスティーブン・キング、容赦がない。

字幕版でクリスのみが死ぬという設定になること自体は“クリスの死を際立たせる”という意図が推測されるためなんとなく理解できるのだが、ではなぜ吹替版だとさらにマイルドになってしまうのか。

それは、日本では『スタンド・バイ・ミー』を家族で観れる少年たちの冒険映画として売り出したことが要因だと私は考えている。理由として、吹替版の声優は土井美加、高山みなみなど、子ども向けのアニメでもお馴染みな人気声優が起用されている。
結果として、テディの結末もマイルドに変更されたのではないかと考えている。

また、エンディング直前にゴーディが書き記す言葉もそれぞれニュアンスが異なるため、ぜひ見比べてみてほしい。

■ぴったりハマったクリス役が切ない

上記でも挙げた通り、映画で最終的に死んでしまうのはリヴァー・フェニックス演じるクリスのみ。悲しいことだが、現実世界でもリヴァー・フェニックスは若くしてこの世を去ってしまった。

映画では最後、ゴーディが小説にこう書き記す。

「あの12歳のときのような友達はもうできない。」

私たちの人生は、いつ、どこで、どんなことでもできる自由なものに見えて、実はもう二度とできないことで溢れているのかもしれない。私はそんな当たり前の事実にハッとさせられたのだ。

大人になったリヴァー・フェニックスを見てみたかった。クリスの笑顔がどうしても彼そのものと重なって、悲しくて、切なくて、仕方がなくなる。

■原作者、スティーブン・キングが意図するものとは

ここからは、私が勝手に抱いた問いに勝手に考察して答えていく

スティーブン・キングと言えば、『ミザリー』や『it〜それが見えたら終わり』などの、いわゆる“ホラー作品”の書き手という印象が強い。

では『スタンド・バイ・ミー』もホラーなのかというと、映画だけを観た限りでは少年たちの“ロードムービー”的な印象が強く、ホラー要素はほとんど感じない仕上がりとなっている。ここに、原作者・スティーブン・キングの意図が反映されているのか私は疑問に感じた。

まず『スタンド・バイ・ミー』の原作だが、原題は『恐怖の四季』シリーズの“秋”の物語が元となっている。そして、そのタイトルは『THE BODY』。和訳すると“死体”だ。タイトルだけを見れば、完全にホラー作品にみえる。

ただ、スティーブン・キングは本作について“自身の実体験をもとに話を書いた”と語っている。兄を亡くし、親友を線路で亡くし、父親が嫌いだったという作家スティーブン・キング。彼の体験は、まさしく『スタンド・バイ・ミー』の主人公・ゴーディと重なる。書き手の意図を予測するならば、他のホラー作品とは少し異なる、“思い入れのある作品”と言えるのではないだろうか。

また、『スタンド・バイ・ミー』の監督を務めたのはロブ・ライナー。『最高の人生の見つけ方』などハートフルな作品をはじめ、同じくスティーブン・キング原作の『ミザリー』も手掛ける。見せ方の幅が広い監督だと考えれば、『スタンド・バイ・ミー』をホラー作品としなかったのは意図的だと言えるだろう。

結論。最初に挙げた問いに答えると、監督、ロブ・ライナーが今作を単なる“死体探し”の物語にするのではなく少年たちの冒険に焦点を当てたのは、原作者、スティーブン・キングの他作品とは異なる思い入れの意図を汲んだからではないかと私は勝手に思っている。

■最後に

少年たちの冒険物語としてのおもしろさもあり、置かれた環境から抗えない独特のやるせなさもある『スタンド・バイ・ミー』。
観終わった後、名作が名作たる所以はあるものだなと納得したのを覚えている。

私はこの先の人生で、あとどのくらいの人に出会い、別れるのだろう。もう二度と会わないであろうかつての友人たちを思い出す。

ただ、友人としてともに過ごし、楽しかった日々は確かにあったのだ。大切なことは、そこに気づき、大事に想う気持ちなのかもしれない。

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