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遠い日

寒い時に限って、何故か冷たいものが食べたくなる。
箱でアイスを買うには多いから単品で。

普段食べないものだから、いざ買おうと思うと、何を買えばいいか悩む。

甘ったるい気分ではなかったから、
さっぱりいきたくてソーダ味のアイスにした。

そういえば祖父が好きな味だった。

幼少期の半分を、祖父の家で過ごした。
私がいない時、おやつが当たらないからと、
私がきた時にはアイスが食べれると言っていたのは、今思い出してみても可愛い。

たまに買い忘れで一つしかないアイスを、同じ大きさに、綺麗に割ることができる祖父をすごいと思っていた。
「しょーもないことは得意さ」
くだらないことが好きなのは、血筋かもしれない。

私が大きくなるにつれて、祖父の家に行くことが少なくなっていった。

たまに会うたびに、細く、小さくなっていく姿には、見るたびに驚かされた。

病気のため、アイスが食べられなったと、しょんぼりしていた。

たまに会っても、
「最後に一緒にアイス食べたの、いつだっけ?」
から、帰る時には
「次は一緒にアイス食べよーね」
が挨拶がわりになった。

まあ、叶わなかった。
無理だと、心に何処かでわかっていたから、
まあ、大丈夫だった。

アイスを一緒に食べた思い出を、思い出そうとできるからきっとこれで良かったのかもしれない。

買って少し時間が経った、緩くなったアイスを割ってみた。

祖父のようには、綺麗に割れなかった。
一口で食べたもんだから、頭痛がした。

いつかまた、この思い出を誰かと分け合えたらいいな。

なんて思った時には頭痛は消えた。
残りはゆっくり、いただいた。

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