ステイクホルダー・アプローチ

ステイクホルダーとは、組織の決定、政策、および運営に影響を及ぼし、あるいは、組織からの影響を受けることになる人々や集団として定義されている (Freeman 1984)。例えば、従業員、サプライヤー、顧客、株主、コミュニティなどが代表的なステイクホルダーとしてあげられる。そして、企業はこうしたステイクホルダーとの関係を構築しながら事業を行っている。

ステイクホルダーの定義において注目すべきことは、株主もまたステイクホルダーの一員とされている点である。すなわち、企業は株主の利益も考慮すべきであることがステイクホルダー・アプローチでは示唆されている。一方、株主は様々なステイクホルダーのうちの一つの集団でしかなく、企業は株主の利益だけはなく、他のステイクホルダーの利益を考慮した経営をしなければならない、とステイクホルダー・アプローチは主張する。企業はステイクホルダー間の利害を調整し、各ステイクホルダーがそれぞれより多くの価値を獲得できるように経営されなければならない、と主張するのである (Freeman et al. 2010)。

企業は多くのステイクホルダーとの関係によって埋め込まれた存在である。例えば、製品やサービスを提供する上では従業員が欠かせない存在であるほか、製造や製品の輸送等には配送を請け負う業者や他のサプライヤー企業等が企業と関係を持つことになる。もちろん、製品やサービスを享受する顧客も重要なステイクホルダーである。企業が経営を行うということは、こうした様々なステイクホルダーと良好な関係を築き、すべてのステイクホルダーが何らかの恩恵を享受することが求められるのである。

一方、こうした様々なステイクホルダーをよりよくマネジメントするためのフレームワークがいくつか提示されている。例えば、Clarkson (1995) は一次ステイクホルダー (Primary Stakeholders) 二次ステイクホルダー (Secondary Stakeholders) という分類を提案している。前者は、その継続的な参画なしに、企業が存続することができないステイクホルダーを意味し、従業員や顧客、株主などを具体例として挙げている。一方、後者は企業に影響を及ぼす、もしくは企業から影響を受けるステイクホルダーであるが、企業と取引に従事しておらず、生存にとって本質的ではないステイクホルダー、として定義されている。Waddock et al. (2002) は二次ステイクホルダーとしてNGOやその他のアクティビスト、コミュニティ、そして政府をあげている。もちろん企業にとってそのステイクホルダーが一次なのか二次なのかは変わる可能性がある。例えば、中国でビジネスを行う企業にとって、中国政府は生存に大きく関わるという点で一次ステイクホルダーに分類されるかもしれない。しかし、この一次ステイクホルダーと二次ステイクホルダーという分類は、企業がどのようにステイクホルダーを優先順位付けするのかを考慮する上で有効であると言える。

References

Clarkson, M. B. E. (1995). A stakeholder framework for analyzing and evaluating corporate social performance. Academy of Management Review, 20(1), 92-117, doi:10.5465/amr.1995.9503271994.
Freeman, R. E. (1984). Strategic management: A stakeholder approach (Pitman series in business and public policy). Boston: Pitman.
Freeman, R. E., Harrison, J. S., Wicks, A. C., Parmar, B. L., and de Colle, S. (2010). Stakeholder theory: The state of the art. Cambridge: Cambridge University Press.
Waddock, S. A., Bodwell, C., and Graves, S. B. (2002). Responsibility: The new business imperative. Academy of Management Executive, 16(2), 132-148, doi:10.5465/ame.2002.7173581.

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