「受け」の方が嬉しいし、恵まれてしまう

夜遅くに.Qです。ぼくのいる学部のぼくのいる学年は周囲から「枯れた学年」と呼ばれていて、新入生からも「なんで先輩らの学年ってそんな暗いんすか?」などと訊かれてしまったほどなんですけど、その枯れてるっていうのの最大の要因として、恋愛沙汰が全く起きないことがあります。で、なんでそんなに枯れてんのかってとある先輩がうちの学年の男子の話を女子の何人かに振ったところ、口を揃えて「〇〇はカタブツだし」「〇〇は女の子に興味なさそうだよね」などに交じって、「.Qちゃんは女の子扱いで……」って言われたらしいです。

いよいよ去勢した方がいいのかもしれない。


ざっくり4000字くらいあります。


なりきり時代の話

なりきりチャットというワードが刺さるオタクも少なくはないと思うのだけれど、僕の場合はTwitterでキャラクターなりきりアカウントを運営していた。中学生のころだから、もう六年とか前になる。2000フォロワーくらいまで伸びたから、当時のその界隈としてはそこそこ人気者の類であったと思う。東方Projectのキャラクターで、もちろん、女の子だった。これがぼくの女の子としての振る舞いの原点だったかもしれない。

ここではいわゆる「一般アカウント(キャラクターのなりきりではないアカウント)」に対してアイドル的な対応をして、一般アカウントにとって「そのキャラクター」と認識された状態でコミュニケートするというサービス業(生主とかVtuberに近いような気もする)という行為のほかに、キャラクター同士での交流を行うという行為も存在する。

まって気持ち悪いっていうのはまだ待って。

キャラクター同士の交流ってのは、TLをにぎやかすという意味もあったし、自分たちの娯楽でもあった。なりきりチャット的側面だ。キャラクターを演じた状態でのコミュニケートを楽しむ。

で、ぼくのいたところでは、もっぱら「百合営業」だった。百合がメインジャンルになる界隈だったし。ここで、キャラによって……あるいは中の人の性質によって、攻めになったり、受けになったりするわけだ。

百合に攻めとか受けってあるの? 竿ないのに?            ――腐女子の友人より引用

「女の子が堂々と竿とか言うなよ」って言った。


そこでは、ぼくはめっぽうド受けだった。ここでいう攻め受けっていうのは絡むときの立場の話であって、必ずしも性接触における男役と女役を意味しない。ただ大体、こう、追いかけられる側で、求愛される側で、ストーキング(そういうキャラ付けだ)される側だった。

でも、相手によっては、「攻め」を担うこともあった。多くの場合男子が攻め女子が受けだろうから、なりきりチャットでもやってないと両方を日常的に切り替えて生活することってあんまりないんじゃないかと思う。

可愛い可愛いって言われすぎると本当に女の子なんじゃないかって脳がバグってきちゃって、手術受けたりする。でもそういう風になった人で、あんまり幸せになった人はいない。  ――とあるVtuberより引用

脳がバグるのでお勧めはしません。


求めるか、求められるか。愛するか、愛されるか。

受けっていうのは、相手から求められる役割だ。それが満更でもないのか、相思相愛なのか、はたまたはた迷惑(ゲシュタルト崩壊)なのか、それは問わないのだけれど、とにかく求められる役割ってことになる。だいたい、現実世界では女子の役割だ。

あとBLにおいては、ヤンキーの役割だ。

逆に言うと、攻めっていうのは、相手を求める役割だ。それが満更でもないのか、相思相愛なのか、はたまたはた迷惑(ゲシュタルト崩壊)なのか、それは問わないのだけれど、とにかく求める役割ってことになる。こっちは男子の役割だ。

当然のことなのだけれど、告白する方しか振られ得ない。そう考えると、リスクを負うのは、常に攻めである。それに、攻めの目線からすると、相手が自分のことを好きなのかどうか、確かめられないのである。少なくともアプローチをしている段階では。

逆に、受けは待っていればいい。可愛いそぶりをして相手を誑かせば、あとは相手がリスクを負って自分を愛してくれる相手からの愛を先に感じられるのも、受けである。そしてえてして、愛情を大きく表現するのは、攻めのほうになる。

BLなどを嗜む人ならあるあるだと思うのだけれど、相思相愛だとしても攻めは自分からの片思いだと思っていたり、あるいは受けは満更でもなくてもクールに気取っていたりする。

恋人的スキンシップをとることができることは攻めも受けも同じなのに、受けはそれを求めることなく、「巻き込まれただけなので私ははしたない子じゃありませんよ」な顔をしていることができる。これがはっきりいって、メチャクチャ特権だと思う。

触れ合ったときに実感できる愛の量っていうのは、同じ行為でも受けの方が多いんじゃないかな。だからこそ女子は愛に依存し男子は愛に飢えるんだと思う。日本の音韻は「愛飢え男」から始まりますしね。

愛する人間は愛情を表出しなければならないが、愛される人間は愛情を表出しなくてもよいのである。転じて、恥ずかしいことをしなくていいってことでもある。それで、相手からの愛を一身に受けることができるのだ。


Twitterでなりきりすんのが既に恥ずかしいとか言うな。その技は俺に効く。


高木さんの話

男子は古来から攻めってことになってきた。「〇〇は俺の嫁www」だ。綾波レイも中野梓もルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールも、彼女らは求められる性だった。

でも気付いちゃったんだと思う。受けの魅力に。受けとして、相手から愛されるほうが、(相手とのふれあいが満更でもない場合低リスク高リターンであることに。

攻めをするのは大変だ自分から主導しなきゃいけない。この主導が相手にとって嬉しいのかどうかわからない不安を常に抱えていなければならない。対して受けは、相手が自分に対してアプローチしてきているのがわかるわけだ。安心感が攻めとは段違いだ。

「自分が主導して相手を動かす」征服欲に魅力を感じていなければ、攻めなんて実は貧乏籤なのだ。SMにおいてはSがMをもてなすのだという概念があるけれど、攻めがその関係性を征服しているように見えて、実は受けの方がよほど守られているし、臆病だし、いいとこを持ってっている


注釈

これは、(結果的に)お互いに満更でもなかった場合の話だ。「興味のない人から向けられる好意ほど気持ち悪いものってないでしょう」という有名な画像があるけれど、アレは男からしても受けに回ってしまえば実感できる。

いや実感できるよマジ。口を開けばセクハラしてきたりフォローして一日でDMに告白してきたりオフパコ希望してきたり。こっちは男なんだけど。被害者ぶりたくはないけれど(求められる側ってそういうものだし)、ヘタクソな男に言い寄られるのはやはりストレスになるものである。男子諸君は見識を広げるために美少女のふりをしてみてもいいかもしれない。求める者と求められる者で、世界は全く違って見える。

現実の女性よりはだいぶ許容範囲が広いだろうけれど、やっぱり、自分にとって嬉しくない人から好意を示され、付きまとわれるのは、かなりしんどい。受けにはそのリスクが付きまとう。

だが少女漫画を見ればわかることで、高木さんを読めばわかることだが、相手はキモオタじゃなくてイケメンや美少女だ。自分にとって気に入った人から求められるとか愛されるということは、きっと愛するよりも麻薬的なのだと思う。だからこそ創作物はそういう方向に発展してきた。男性向けは求める方向が多かったけれども、だんだん、求められる方が発展してきた。


ただ、これは個人的な感覚にはなるけれども、ぶっちゃけそれらを総合しても、受けのほうがメチャクチャ楽しいし、満たされるし、依存しそうになる。

っていうか、する。中学の時、そのせいで一日中Twitterをしていた。昼起きてTwitterして朝になって寝るって生活だった。やばい。

偏差値が15下がった。 ――中学時代の.Qのテストより引用
Twitterやめたら偏差値が15上がった。 ――中学時代の.Qのテストより引用

みんな、Twitterはやめような。


攻めを「引き受ける」ということ

だから、恋愛において、支配しているように見える攻めになることっていうのは得なことじゃないし、むしろそういう役割を奪い取るのではなく引き受けるものなんだとおもう。それこそが甲斐性なんじゃないか。

Sも一緒だ。相手を虐めているように見えて、相手が求めていることをよく見定めなくてはならない。Sは奪い取るものではなく引き受けるものなのかもしれない。ぼくはSMには詳しくないけど。

だから、男女平等みたいな意識が敷衍すれば、男子も「じゃあ俺も受けで」ってなるのは自明のことで、実際、そうなってきている。ある意味でこの流れは男性解放であるような気がする。

男子も女子も受けがいいってことになると、どっちも積極的にいかず、はしたない子じゃありませんよって澄まし顔のまま未婚化が進むことになる。誰かが攻めを、かっこいい役を、愛する役を、引き受けなくてはならないのだから。ある意味、これまでの男性は尊敬に値すると思う。前時代的な男性を演じきったかつての男性たちは、そいつらを引き受けさせられていた。

今もその流れはあるけれど、かなり薄まってきたし、社会から男子への要求は残れど男子自体の欲求はそうじゃなくなった。

でも、逆に、女子が攻めを担うことがどんどん増えていくのであれば、それはむしろ喜ばしいことであるような気もする。高木さんからのオファー、お待ちしております。


高木さんはお前を選ばねえよ

確かに。


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