足りないものは欲しいもの? | 500文字のエッセイ
気がつけばいつも、足りないものばかり数えている。あの人の持ってるアレがたりない、この人の持ってるコレが足りない。
その度に、足りない自分を小さく見積もって大きくなった他人のかげに押しつぶされそうになっている。
押しつぶされそうになる心を支えようと、足りないものを必死で集めようとする。でも、そうして集めたアレコレは、本当に欲しかったものなのだろうか。
足りないアレコレを集めようとふるまえば、たしかに押しつぶされそうな苦しさからは少しのあいだ逃げられる。
けれどそれは、枯れそうになる花に無理やり水を大量に注ぎ込むような、カンカン照りの大地に野放しにするような、優しさを装った苦しみだ。
枯れそうな花があるならば、遠慮なく根付くための土を用意してやるのが先決だ。足りないものが足りないままでのびのびとゆける、心をそだてるということだ。
早く答えを出すことが良しとされる現代において、そんな回りくどいことは評価されないかもしれない。
そうして否定されてきた人々は、気がつけばいつでも自分の中の足りないものばかりを数えて、その虚しさを埋めるようになにかをむさぼり続けなければ満足できなくなってしまう。
そしていつか、人知れず枯れてしまうのだ。
今日の文字数:510文字
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