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阿賀町でのかき氷販売についての考察


8月1日に阿賀町の直売所でかき氷の販売を行い、生徒の感想文を頂いたので遅くなりましたが記事にしたいと思います。

まずはコロナ禍の中、小さな地域での活動という意味で今回活動許可をいただけたのは地域に所属する皆様のおかげであり、コロナ禍においても地域教育の場の提供を頂き無事に現在に至っていることは、今後に向け大きな意義があると思っています。
正に、地域の賜物であります。

時系列的な話をしつつ、今回の話を最後に振り返り所感を述べたいと思います。


水の話

今回阿賀黎明学舎と共に、地域性の在るかき氷作りの準備として半年ほど前に一度私自身が阿賀町の酒蔵麒麟山酒造さんにご挨拶し、生徒とかき氷販売をする際に水の提供をお願いできないかをお伝えしておりました。
あとは阿賀黎明学舎さんに地元の繋がりで話を進めてもらい、今回のために麒麟山酒造さんの仕込み水のペットボトルを提供して頂きました。

そして、地域を知る、地域の水についての理解を深めるために、生徒は麒麟山酒造さんから「阿賀町の水」についての話を聞かせてもらいました。
地元の人が、地元の水が何故良いかを知るために必要な要素です。
豊富な水、自然、良い水を残すために自然環境保護にも努めている麒麟山酒造さん。
大人からしても学ぶ要素が多かったのが収穫。

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かき氷シロップづくり

試作するために買い出し。
事前にこういうシロップが良いなぁというものを頭に描いてもらう。

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買い出し、試作開始。
各々実験のようにかき氷を試作する。
完全アドバイスよりも、自分たちである程度考えてもらったほうが良いなぁと思い、専門的な味についてはちょっと避けてみた。
それをしてしまうと意図から外れるから。
自分たちの納得いくものを、限られた時間の中で創出してもらいたい。

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宣伝と販売に向けた準備


今回の販売については、コロナ禍でもあるためあまり大きな宣伝は難しいところがある。
あくまでも地域の中の小さな催し物として、地元民向けという名目。
私もfacebookでチラッと出したけど、来てくださいとは言わなかった。
販売については割とテクニカルな部分もあり、複雑で面倒にならないよう価格とサイズを指定。
一杯すべて試食用サイズで300円、原価100円以内。あとは好きにしてもらってOK。

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試作後、宣伝に向けたチラシ作りを行う。年々クオリティが上がっているチラシ。
このチラシをコメリ前や、朝の人が多いときにかき氷販売する直売所で生徒が配る。

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販売日当日

前日は大雨の影響で川の増水で避難警報などがあったにもかかわらず、無事に晴れる。生徒の日頃の行いが出たのだと思う。
8/1、今年初めての夏日という感じ。

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担当の丹羽さんによる朝の全体ミーティング。

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まだ朝なので余裕がある生徒。

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直売所入口のレイアウト。生徒が何度も変更を重ねてこの形に落ち着く。

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当日までに何度か試作をしたらしい。シロップの仕込み風景。

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徐々にお客さんが集まり始める。

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本日のお品書き。一見するとどんな味かわからないシロップも、自分で名前をつけてとお願いしたのでそれぞれに個性がある。
どんなシロップか、生徒がきちんと伝えます。

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去年からかき氷を作っているE氏のかき氷作り講座。
私からの指導ではなくて、出来る人から初めての人に指導を行う。

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大量注文もありピークを向かえる。E氏から教わりかき氷を作る後輩S女史。

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去年のレガッタ大会に比べて、しかもコロナだから全然売れないだろうなぁって思っていたら結構売れた。

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今回は大きなイベントではないので売るだけではなくコミュニケーションを主軸にしようと考えていた。そこで生徒と買い物客の方とコミュニケーションが取れるアイテムを作ってくださいという黎明学舎に無茶振りと紆余曲折を経た結果、こういうものを用意。

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これが意外と生徒にとっては取っ掛かりになったようで、普段おとなしいTさんが凄く積極的に話しかけていったのは、個人的には大きなサプライズだった。

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普段接する機会のない地元民同士の一つのコミュニケーションのきっかけになったようで、会話の入口となるツールを試せてよかった。いつの間にかゆるキャラまで生まれている!!楽しんで頂けて何よりです。

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販売結果


今回は合計68杯を、阿賀町の中でも特に奥という立地の直売所で売ったのは凄い。
去年のレガッタ大会で沢山の人が来た中で106杯だったことを考えると、想定以上に売れた訳で、生徒も驚いたけれど、かき氷屋の私が一番驚いている。来て頂いた多くの皆様ありがとうございます。

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その日の振り返り。

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そして打ち上げ。労働の対価はこの活動の大事なプロセス。

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後日更に振り返り~生徒の感想~

その日の振り返りが2行程度で終わったので、非常にもったいないなと思い担当の丹羽さんに、マンツーマンで生徒から感想を引き出してくださいとお願いしましたら、以下の感想を返答いただきました。結構長いです。

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【Y氏】
かき氷イベント、誘われていたけど、最初は、どうしよう?っていう感じだった。どうせ親に相談したら行けっていわれるし、まあ行くか、くらいで直前に参加を決めた。
そういう消極的な参加だったけど、結果やってみたら楽しくてやってよかった。
今まで、文化祭など含めてこういう屋台やお店をやったことがなかったので、初めは緊張した。会計の役割だったけど、何人かお客さんが来るうちに緊張が取れていった。お客さんとのやり取りも会計作業も含め、楽しかった。色んな人が買ってくれるという状態が嬉しかった。
今後も、気分がのればかき氷イベントある時に参加したいと思う。使う食材今はまだ思いつかないけど、自分のおばあちゃんが作ってる野菜でなにかシロップにしてみてもいいのかも。

打ち上げのたこ焼きが美味しかった。
自分で稼いだお金を使って打ち上げをする、っていうのが、お金稼いだ実感がここちよかった。
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【S氏】

今回のかき氷を手伝うことになったのは偶然。Eくんがシロップ試作会に向けて準備しているところにたまたま居合わせたのがきっかけ。Eくんがレシピで悩んでるのをみていて、「どうせやるならちゃんとやろうぜ!」って思って、色々アドバイスをした。そこから、当日も一緒に手伝う流れになった。

販売の当日は、がっつりスタッフというわけではなかったから、少し外の人目線でもみていた。みんなの動きで改善できるところもあったと思う。せっかくお客さんが多く来ても、上手く接客したり声掛けできてない場面もあったから、品物渡す時に、「お待たせしました」とか声かけたり、野菜見てるお客さんに話しかけに行ったりするといいと思う。自分はもともと人前に出るの嫌いじゃなくて、そういう時に声かけるので、みていてもったいなく感じた。接客するときは、まず世間話からスタートするのがいいと思う。

参加して、大変だったけど楽しかった。町の食材や町の店で、自分たちが役に立てることがあるって実感できた。季節的にもぴったりの企画だったのでそれも良かった。
町の人と触れ合えたのが良かった。かき氷5個も6個も買う人がいて、それだけ興味を持ってもらえたことが嬉しい。

Eくんが、忙しい中テキパキ動いていたのが印象的だった。他のスタッフと連携して、しっかり全体を仕切っている様子や、注文に合わせて的確に動く様子がいつもと違っていてすごいなと感じた。

今後なにかイベントやるなら、レストランみたいにたくさんのメニューを提供する店をやってみたい。
最近自分でも、お店でご飯など頼むときに、お店ごとのサービスに注目することが増えた。鮎の塩焼き頼んだ時に漬物がついてきたのが嬉しかったので、ちょっとしたおまけがついてくるようなしかけができるとお客さんに喜ばれると思う。

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【I氏】

直売所に事前打ち合わせに行った時、お客さんに高齢の人が多いと聞いていたので、若い人が来るとは思っていなかった。実際にやってみて、30代以下の人もちゃんと来てくれるんだってことを学べた。

前回、かき氷販売に関わったときは、他人が作ったものを売るだけだったけど、今回は自分で作ってシロップをかけたかき氷が売れたという違いがあった。
「自分がつくったものを食べてもらえる」ことが嬉しい気持ちになるので、自然とお客さんに「ありがとうございます」が言えた。
実際に作る側に回ったからこそ、その気持を知ることができた。

直売所のお客さんに呼び込みでこえかけするのは、相手が迷惑するかもって思って上手く声掛けできなかった。誰か協力者がいてくれたら、もうちょっとうまくできるかもって思った。

打ち上げが楽しかった。それは、自分が売って嬉しかったというよりも、チームのみんなが頑張って、売れて、結果みんなが喜んでいるというその状態が自分にも伝わってきて嬉しかったからこそ、楽しめたと思う。

今後なにかイベントするなら、「ご飯 ✕ なにか」をやりたい。
阿賀町では美味しい米が当たり前だけど、そのごはんの美味しさを阿賀町の外の人にしってほしいから。 えごまとか、古代米とか使ってみるのもよさそう。

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【S女史】

最初の方は、怖い気持ちがあった。だんだん慣れてきて、午前のお客さんたくさん来たくらいからは、慣れてきたし楽しくもなった。

やるまでは、ほんとに人くるのかな?と思っていたので、実際たくさんの人がきてくれたことに純粋におどろいた。

やっていって、Eくんがいつもより優しかったことに驚いた。二人で一緒に氷削りとかやって、Eくんが途中で氷出したり、器出したりも横で手伝ってくれた。

色々、かき氷の準備や途中の掃除、最後の片付けや声掛けなど、周りの人に褒めてはもらったけど、正直自分ではどうだったか覚えてない。感想を求められても、困る感じ。

打ち上げをみんなでやって、楽しかった。

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【T女史】

試作のとき、素人が味をすごく良くするのは難しいけど、見た目なら頑張ったらクオリティーの高い物が作れると考えた。それに、お客さんが選ぶときに味の想像は難しいけど、見た目は写真があれば一見して商品の雰囲気が伝わる。そこで、今回のシロップ開発では、味が普通でも見た目がいいものを作りたいっていうテーマでプラネタリウムシロップを開発した。
だから、見た目だけじゃなく、味でも評価してもらえたというのは意外だったけど、嬉しい結果だった。5杯売れるかな?って思ってたけど、10杯以上売れて、これも意外な嬉しさだった。

接客は、ちょっとずつ慣れていったと思う。野菜のアンケートがあったから、話しかける心理的ハードルが下がった。声かけてみて、お客さんがちゃんと応対してくれた!って言う経験をしたおかげで、その次が話しかけやすくなった。

今後もし何かイベントやるなら、どうせやるんだったら売れるものやりたい!って気持ちがあるから、やる季節に合わせて人気あるものをやりたい。
秋冬にやるなら、おでんがやってみたい。
また夏にやるなら、ジュースやカラフルわらび餅サイダーがやりたい。

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【E氏】

今回は自分が責任者で、作る作業に追われてしまい、目標にしていた水準の接客対応はできなかった。作る工程を全部出来る人が自分しかいなかったので、交代できず接客にまわれなかった。過去のかき氷では、自分とIくん二人が全工程やれたので、休憩の交代などがしやすかったという差があった。
次回やるなら、当日売り始める前に、他の生徒と一通りシロップ作り方も含めてきちんと共有してから始めたい。今回の、接客を大事にするという目標に、S女史さんの明るさが合っていてよかった。

一番経験値のある自分が、「引っ張らなきゃ」っていう責任感をもって当日は取り組んだ。だから、今までと違って周りの状況とかもよくみえた。
店に活気がでたのはS女史さんの呼びかけや接客のおかげだし、Tさんがお客さんをよんできてくれたのも助かった。
午前バリバリやったので午後は少し疲れてしまっていたけど、朝からS女史さんがとなりで自分のやり方を見ながら学んでくれたおかげで、助かった。午後は、自分の作業をS女史さんがやってくれるようになった。
今回の、接客を大事にするという目標に、S女史さんの明るさが合っていてよかった。
自分がビラを配った相手が来てくれて嬉しかった。ビラ配り行った時は憂鬱だったけど、結果やってよかったなと思う。ただ、ビラ配りや打ち合わせなど、準備段階でもっと多くの人に参加してほしかったなとは感じる。

準備から打ち上げまで、Sくんがいてくれてほんとに助かった。
シロップ試作、ビラ配り、当日の作業と、前向きに協力してくれてめちゃくちゃ助かったし、お客さんへ話しかけたりもしてくれて盛り上げてもらった。このイベントがあったおかげで、Sくんの新たな一面を知れた!
打ち上げのたこ焼きもカリカリに焼くの上手くてSに楽しませてもらった。

午前は生姜が売れて午後はプラネタリウムが売れて、全然売れ筋が変わったのが発見。何が起こるかは、やってみないとわからないと感じた。

次回やるなら、お菓子系がやりたい。自分もテンション上がるし、お菓子ならより多くの生徒が前向きに参加してくれると思う。

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個人的感想と考察

生徒の感想を読んで、
正直言うと、私は生徒の振り返りでここまで生徒の言葉を引き出せない。
内側にいる普段から関係性と関わりがある人だからできるもので、生徒の実感を伴う本質を見事に言語化されている。外部の人間の出来ることの限界でもある。
その点で、担当の丹羽さんの引き出す力がとても強く、上記の感想は全て生徒自身の血肉となった言葉を的確に引き出せたもののように感じる。内側と外側の人間の使い分けが機能したように感じる。
生徒の意見から次に活きるものがいくつか見えてきたのでありがたい。

ちなみに活動を通して、体験したことを言語化をせずに次に進むと結局何を自分で成し得たか、どんな気持ちだったかを考えずに生きてしまうのでその経験から知識へと変化しない。知識を次の機会に使いこなせないのである。
言語化せずに理解できてしまう人は言語化の先にある抽象概念化という頭の中の負荷強めな想像力で対応できる人も中には居ますけど、大半の人は言語化するところから始めます。


生徒とのやりとりについて、
いつもどおり、明確な意図を持って活動に取り組む大人を一つ見てもらうためにフランクに、おっさんとして若い人と関わる感じで進行。
しかし、今回実ははじめましての方で、これは久し振りに地雷を踏んでしまうのではないかとちょっと後ろに下がった人も居た。外部の人間の難しさは、その人の持つ繊細さやトラウマなどに引っかからないようにと細心の注意を払うのであるが、極稀に、この人は、この話は深く関わってはいけない?という疑問を持ってしまう生徒もいます。
グイグイいける生徒とそうじゃない人の見極めはいつだって難しく、特に新しく出会う多感な時期の人には注意を余計に払ってしまう。
そこで、生徒の間で扱いに差が出ると思われてしまうことも、あるかも知れないので個人的には注意したい。

かき氷販売について、
三回経験した生徒の成長と、初参加の生徒への支援が能動的に機能したことは、生徒の様々な郊外での活動の経験値の高さから来ているのがわかる。

すべての生徒が確実な保証をもった学びを受けるというのはとても難しい。内面の変化を部外者が察することは非常に難しいという意味もある。
その中で、当人にとって一つでも意義のあるものが感想から見受けられたので、今回もやってよかったという結論でまとめたいと思う。
今回の活動で一緒に行った運営の阿賀黎明学舎とは、時間の都合や活動の展望のやりとりで色々と課題はあったが、きっと内部で今回の課題から次に改善し解決できるだろうと思う。

社会活動の意義について、

このかき氷活動は全てにおいて、社会活動の入口で万能ではない。
この経験を通じて次に繋がること、自分でなにかしたいこと、何かの必要性を見いだせることを望んでの活動になります。

だから生徒の実態と在り方に応じてかき氷活動のボリュームを増やすこともできますし、このまま同じことを来年も出来るし減らすことも可能。
生徒がやりたいという想いが飛び火して次の別の活動にシフトしても良い。
感想から分かる通り若者の「実は出来ること」を表現する機会である。
そしてその活動は出来るという事実を地域社会によって確認される機会
なんだなぁ、と個人的にこの活動の意義を思う。
そして「真正の学び」に近づけ社会の一部分を垣間見る機会を大切にして更に進めていきたい。

例えばPBL(問題解決学習)や社会課題の解決を目指す授業の展開などもありますが、そこについては割と思うところがあり、社会課題解決の前にもっと知るべきことがあるのではないかなと思っています。
とある大学の先生から、私が上記のような疑問を呈しましたら以下の回答を頂きました。

大学のPBLって、どうしようもないグループワークから始まります。はたから見ると、「サザエさん」の家族会議。誰も成長しないし、誰も各自で新しいデータを集めたりしません。誰も情報を集めてこないで、それまでの経験だけで話し合いをします。「解決しなくていい」という前提を、カリキュラムを組む教員から暗に示されているからです。このカリキュラムが、いわゆる「ぼくのかんがえたきゅうきょくのカリキュラム」であるためです。どうも、大学の教育プログラムを考える層は、反証可能でない理想論だけでカリキュラムを組み立てる傾向があります。そして、彼らが評価者を兼ねるので、お手盛り状態が続きます。今回、動画制作をした学生たちには、「脱サザエさん」のポリシーを強く伝えました。

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最後に、

阿賀町でかき氷活動に関わって頂いたすべての関係者の皆様、保護者、企業様、販売所の皆様、そして買い求めに来て頂いた皆様に感謝致します。
コロナ禍の中、地域教育が円滑にそして全員無事に行われ、それぞれの生徒にとって小さな変化やドラマが生まれたことをここに記し残します。
そして、この活動が今後も積み重なっていけることを切に願いながら社会教育の活動を続けていきたいと思っております。
そして社会(教育)の在り方こそ、顔の見える関係性の中で地域全体で考えられればいいなと思います。
それは一人でも弱っている人を慮れる社会になることが私個人としての願いです。

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なお、今回も氷屋としては全く儲かりませんでした。

けど、幸せになった人が一人でも増えたと思っているので、満足しています。



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