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北尾修一「いつもよりも具体的な本づくりの話を。」

・本書は、編集者で、出版社(百万年書房)の代表である著者が、(基本的に)編集経験がない読者を想定し、著者のこれまでの経験から実践的な本づくりのノウハウをお伝えした1冊。

・著者が考える「本」とは、「ひとつのテーマで、文章・絵・写真などをまとめたもの」である。
・ざっくりした言い方になるが、カラーページがない文字メインの本なら、全部で数十万円でつくることができる(2022年8月現在)。たまに「あなたの自伝を本にします」「御社の本をつくります」みたいな広告がある自費出版があるが、著者はおすすめしていない。本書を読んで、自分で本づくりを覚えた方が賢明であるからだ。

・著者が「本づくりに必要な能力とは何か?」を熟考したが、「能力は特に必要なし」という結論に落ち着いたそう。
(強いて言えば、日本語が理解できるくらいである)
・本づくりは料理と似ており、同じ著者の企画でも、誰が編集するかによってまったく違う本ができあがる。そして、Aさんが編集した本とBさんが編集した本があったとして、どちらが正解みたいなこともない。「どちらがより売れたか」で本の内容の本質的な優劣とは関係ない。
・1万部売れた本よりも100万部売れた本の方が偉いわけではないし、その逆もない。本の価値を決めるのは、つくり手ではなく一人ひとりの読者の側である。1冊の本の持つ価値は、読者それぞれによってまったく違う。それが本というものの根源的な性格である。
・どうしてもほしい本は高くても買うし、必要ない本は10円でも買わない。本とは、もともとそういうものなのだ。

・本づくりは、自称コミュ障の人でもできる。本をつくるにあたって最小限の人づきあいは必要だが、テレビやラジオのように大人数のスタッフとつきあう必要はない。著者も、編集者も、みんな基本的には世の中でうまくやれない人たちである。周囲の違和感や、発信したいことを抱えつつ、うまくそれを話せない人が集まるのが本づくりの世界なのだ。

・本をつくることは、コミュニケーションとは違う行為だ、ということを本書で強調している。SNSに書き込むことと、本をつくることはどちらも言葉を発信する行為であるが、本というメディアには読み手との(即時的な)双方向性はない。つまり、書いてすぐに「いいね」がつくことはなく、仲間もフォロワー数も増えない。本をつくるのに時間と手間とお金がかかる。しかも、一度発信した言葉を引っ込めることは容易ではない。
・しかし、逆説的に聞こえるかもしれないが、そこが本の良いところでもある。本をつくるにあたって、まずは、自分には特別な才能は何もない、と思うこと。と同時に、本づくりは誰でもできる、と思い込むこと、これが最初に必要なマインドセットである。

・本書では、「ストレッチ(準備体操)」「さて、どんな本をつくろうか」「企画を立てる」「著者と会う」「構成を決める」「原稿の完成」「お金の計算」「本をデザインする」「ラストスパート」「つくった本を育てる」「ストレッチ(整理体操)」という章で構成されており、「本づくりに必要な能力とは何か」「本をつくるにあたり、ベストセラーは目指さないこと」「つくってはいけない本はあるのか」「自分がつくる本の成功とは何か?」「本の完成後、どのようにして本を伝えるか」など、本づくりのノウハウが余すことなく紹介されている。また、本が発売された後の本の広め方や、本の発売後に発生したトラブルの事例(売れすぎた自費出版本・裁判所から訴訟が届いた場合の対策など)や、さまざまな編集者(さおだけ屋はなぜ潰れないのか?やわけあって絶滅しました」の本を作られた編集者など)のエピソードも収録されている。

この本を読むと、いつも読んでいる本の視点が変わります!よく本を読まれている方に、これから本づくりに関わりたい方にオススメの1冊です。

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