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ビーツ殺人事件からのピンク甲子園

年が明けてめでたいので、
色彩的に鮮やかなビーツを使った料理をすることにした。

ビーツ。
ビーツを知っている人なら、その言葉を聞いて、
鮮やかなピンクを思い浮かべるだろう。

だが、八百屋にいるビーツは文字通り芋っぽい。
その内側の鮮やかさを想像させないほど、地味な色、
何なら根も生え、土すらもついている。

漂う下町のビーツ感。

「私脱いだらすごいんです。」ととても主張するように見えず、
八百屋では地味な存在のビーツ。
まさかあのロシア料理ボルシチの主人公には見えないから不思議。
かぼちゃやトマト、さつまいもといった明るい色彩の野菜に目移りしてしまう。

だが、いざまな板の前にビーツと向いあい、皮をむき始めると、
鮮やかすぎるピンクにが現れる。
まるで、メガネをかけていてもっさりしていた少女が
眼鏡を外した途端、輝き始めるような。

そんなシンデレラストーリならかわいいものだが、
ビーツを切れば切るほど、まな板の上が、殺人現場と化してしまう。
もし今我が家に誰かが来たら、あらぬ疑いをかけられ
逮捕されてしまうかもしれない。
血の海のようなまな板に転がるビーツ。まな板のビーツとはよく言ったものだ。
ビーツは飲む血液と言われているが、これは野菜ではなく、
血の塊ではと恐ろしい想像を巡らせてしまう。

もしビーツをカットしている間に指を切ってしまった場合、
気づかず、うっかり自分の血液をスープにしてしまいそうだ。
危ない、危ない。

謎の罪悪感と恐怖を感じながら、
買ってきたビーツ2個、いやビーツ夫妻を殺害したところで、
証拠を隠滅すべき、まな板、包丁、手を念入りに洗う。

おっと、棚にあったスパイスを取り出そうとした瞬間に悲劇は起きた。

棚からスパイスのガラス瓶が落下。固まる私。
それは、おしゃれだからと大事にしまっていたハワイ産のピンクソルトだった。

依然、殺人現場のような天板にピンクソルトが落下し、ピンクの上にピンクがのっかる。
鮮やかな色彩で芸術家のパレットのような天板。
扉を開け放って調理していたため、ありとあらゆる部屋にピンクソルトが散らばる。
キッチン、リビング、洗面所、果てはトイレ。
こちらは、絵画から飛び出し、現在アートと化す我が家。

そして、いきなり、ハワイ感を出し始める我が家。
だが、床に飛び散ったピンクソルトは使えず、
甲子園に散った高校球児のように床に飛び散った我が青春のかけら、
ピンクソルトを悲しみとともに拾う。

少しだけ割れた瓶に残ったピンクソルトを大事に退避させる。

殺人現場からハワイ、そして甲子園と移り変わった我が家。
床には、血液とピンクソルト、ガラスの破片、
そして私の砕けっちた心の破片が落ちている。

桃色吐息がもれるばかり。
いや、青息吐息に間違いない。

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