昔のお店

商店街の包丁店アトツギとして

キャッシュレス、とか、もはや体験がメインに、とかいろいろなお店の未来が語られていて、自分もそういうことに思いを馳せるのは大好きだ。

でも、世の中にあるほとんどの商店(チェーン店とかじゃなく、商号でくくったとき)は、そういうことを考えずにやっていると思う。大阪中心部で長くやっている商店街のお店のアトツギとして、そういう古くて泥臭い現実から出発して、一歩ずつ #お店の未来  に近づけていくまでをnoteにしたい。

10年間、WEB広告(純広告と言われる、Yahoo!TOPの右側に出てくるあれとか)を売っていた。露出量とかサイズにもよるが、1週間1000万円とか平気でする。テレビ広告の予算から比べるとおまけみたいなものだが、多くの自分の提案先のクライアントにはそんな予算なかった。

それを売ってた営業マンとしては、お客さんのキャンペーン予算に対して、なんでそこに広告を出す意義があるのか、出してどうなるかに意味づけをしないといけない。

マーケティングファネルを考えて、潜在層を顕在層に引き上げるには、、、クリック率が0.08%で、10,000誘導のうち何人が検討して、獲得単価いくら想定でとか考えて提案していた。まあ、今考えたら広告枠屋さんなんだからそこまで求められてなかったな。と思う。とにかく新しいメディアとか枠の情報をばらまいた方が良かった。

なぜ、広告を出す意義やファネルを考えなくてよいか。だって、クライアント側の方が圧倒的にデータをもっているから。顧客が好きなもの、滞在時間、どんな商材が売れてて、どんな層に刺さっているか。どのメディアと親和性が高いとか。担当者(今の僕)はそのデータと向き合って毎日考えてる。そこに広告枠屋が考える仮説をぶち当てるのは、断る理由をたくさん献上しているのと同じだったな。と、今になって思う。

成功体験の積み上げ

購買ファネルやカスタマージャーニーのことなんて多分、世の中の商店はほとんど考えていない。そんなこと言ったら怒られるかも知れないけど。でもそんなことより実感と実績の方が大事

人通りの多い道にお店を出して、買ってもらえれば万歳。買われなければ商品が悪い。みたいな感じ。少なくともうちのお店は、知識が豊富で実直な店員さんと、立地のおかげでなんとかやっていけている。でも、「顧客分析」「ヒアリング」「商品分析」「マーケティング」どれも、やってない。

いや、多分父親に聞いたら、「おれは客のこと知っている」「何が売れているかもわかってる」「広告も出している」と言う。でも、体系的、定量的、定性的に丁寧に収集して、分析して、店員や職人含めたアクションに起こす仕組みを作ってはいない。

父親は比較的新しいもの好きで、PCもPC98からもっていたり、「ホームページあったらカタログいらなくね?」とインターネットのドメインも90年代からもっていたり、新しい考え方には割と寛容なほうだった。でも、経営判断の元になる情報は極めてアナログなもの。これは想像だけど、全国の商店もそうだと思う。なぜなら、なくてもやっていけた。時代に関わらず、成功体験の積み上げ以上に頼りになる行動指針はない。

老舗商店にあるもの

職人がもってきた包丁を並べて、売れたらもう一回注文する。それを繰り返していたら、包丁の種類が2000以上になった。そう。売れない商品を排除する仕組みがない。もってきたものを並べて、なくなったら再発注する。極端な話、3本しか仕入れなかった包丁の最後の一本が売れたのが5年後だとしても、また発注する。じゃあ種類は減りようがない。増えていくだけ。小売店をやっている人からしたら「ありえない」と思われるかも知れないが、今日本中で2000種以上手に取って自分に合う包丁を買えるのはうちだけになった。

うちは確かに商品力はあると思う。地元の料理人の間ではありがたいことに名前が通っている。地元で美味しいお店に出会えたなぁ、と思って職業柄料理人の手元を見ると1/3くらいはうちの包丁だったりする。ありがたい。

包丁という商品自体にも魅力がある。日々の料理で、スパっと切れるってすごい気持ち良い。「毎日使うアナログな道具」で、「品質でQOLと効率を上げられる商材」ってもうそんな残ってないが、包丁はそうだと思う。

作られ方も魅力的。あり得ないくらい丁寧で非効率な作業でもって、信じられない美しい作品を仕上げてもってきてくれる。

それで美味しい料理を作るこれまた愚直な職人さんがいて、その職人が使って研ぐことでより包丁は美しくなっていく。

たまらん。

でも、すごい一部の職人に頼ってるだけ。その職人達はもう60オーバー、70オーバー、80オーバーもいる。当然、引退していく。お客様も年々高齢化していくし、インターネットでの販売も増えてきた。さあ、#お店の未来 とは。

だからこそやれることはめっちゃある

ずっとエクセルパワポとコミュニケーションだけで広告枠を売ってきた身からすると、商店は定性定量関わらず有益なデータの山だ。お客さんが、お店や商品を良くするためのヒントをもって足を運んできてくださる。

それを血肉にできるかがものすごい勝負の分かれ目になるんじゃないかと思っている。まあ当然アトツギとしての摩擦やハードルはあるんだけれど。

お店の未来も、良い購入体験と良い絆をお客さんにもたらすものでなくてはいけない。アトツギとしての泥臭い摩擦やハードルに対してのアクションと考察が、自分自身への推進力になればと思い、少しずつnoteに投稿していこうと思う。

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