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ゴダールの遺作『奇妙な戦争』は、最高のコラージュである/一日一微発見438

2022年にゴーダールが「自死」して、もはや生々しくゴダールを経験することなどないかもしれないと思っていたが、こうやって「新作」の上映場所を求めて銀座を歩くことがあるとは、なんと僥倖だろうか。

とわいえ、平日の寒のもどりの月曜日の夕方(一日二回上映)ということもあり、たどりついてチケットカウンターで、「座席指定」してみたら、30分前だったが、僕以外の客は1人だった。受付嬢は、クスクス笑った。

ミニシアターではない。外はコロナあけの人々で、けっこうごったがえしているというのに、資本主義は性懲りもなく、延命ところか増殖しているというのに、銀座の和光裏の映画館は、びっくりするほどガランとしていた。

旧共産国の地方の映画館より、わびしいかもしれない。いや、だからこそ、この事態は「ゴダールらしい」と思えてくる。

ここに来る前に、あるアートの審査会があり、キュレーターたちと談笑することがあったのだが、コロナあけで世界中の現代美術館はコンテンツに関係なく、来客数が倍ぐらい増えているのだという。それは現代美術館 が、2人で適当に話しながら恋人同士が歩きまわれる「デートスポット」として「発見された」からだという話であった。
それに加えて、映画はもはやネットで見るものだし、見ながら話せないから人は映画館に行かなくなったという所感もつけ加えられていた。

なるほど。ましてやゴタールの新作『奇妙な戦争』は、たった20分しかないものだし、そんなものにお金をはらって見に行く人は、ちょっとした変わり者にはちがいない。

時間があったから、先に映画パンフを買って「予習」することにする。なにせ、スケジュールが急にあいたし、偶然ひらめいたので来たのだ。

エンタメでもない映画が、ゴダールというカリスマ晩画監督の遺光だけで、映画館がカラッポであっても上映できるのは、それこそ、なんとも「奇妙な戦争」状態だろうか。

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