編集者・アートプロデューサー後藤繁雄の一日一微発見

アートプロデュース、編集、大学教授などをやっています。著書「現代写真」(リトルモア)「…

編集者・アートプロデューサー後藤繁雄の一日一微発見

アートプロデュース、編集、大学教授などをやっています。著書「現代写真」(リトルモア)「アートの秘密を説きあかす」(光村推古書院) 「超写真論 篠山紀信写真力の秘密」(小学館)「現代写真アート原論」(フィルムアート社)など。オンラインコミュニティ「A&E(アートと編集)も主宰。

マガジン

  • アート思考・後藤繁雄の一日一微発見

    「一日一微発見」というのは、僕が師匠だと思っている文化人類学者、故・岩田慶治が日々やっていたこと。 僕はそこからヒントをもらって、もう15年ぐらい前だけど、ネットで日々連載していたことがある。 それを復活させてみよう。 僕の断片的思考訓練である。 長い文章も書きますが、散文的にキーワードのみの文章もあります。週に2回程度更新しています。 僕は、たくさん本も出していますが、プロフィールはこちらをご覧ください。 https://www.gotonewdirection.com/profile

  • 目は旅をする・後藤繁雄による写真集セレクション

    ヴィジュアルの旅は、大きな快楽を、与えてくれるし、時には長編小説以上に、人生についてのヒントを与えてくれます。 このマガジン「目は旅をする」は、長く写真家たちと仕事をして、写真を愛してきた僕が、トータルで150冊を厳選して、ご紹介するとっておきの写真への旅ガイドです。 タイトルは、敬愛する編集者ダイアナ・ブリーランドの「 The eye has to travel」にインスパイアされつけました。

  • 後藤繁雄のYouTubeまとめ

    You Tube更新情報・編集後記・テキストデータなどをまとめます

  • 僕たちは編集しながら生きている

    この時代をサヴァイヴするための「生活編集術」と「編集生活術」。編集という技術はもう編集者だけのものではない時代になりました。 アートやDJやデザインも、もちろん映画や小説だって編集力が不可欠です。 ユニークな編集のワークショップであるスーパースクールのノウハウをここに公開します。 さあ、あなたも新しい「編集術」を身に付けよう! 2004年に出版された編集者・後藤繁雄が主宰する「スーパースクール」の本をもとに再構成したマガジンです。 情報やツールの多い現代で、なにを選ぶか。 それが「生活編集術」です。 自己再編・自己編集・「なりたい自分になる」ためのヒントがここにあります。

  • 後藤繁雄の一日一微発見からのお知らせ

    「一日一微発見」というのは、僕が師匠だと思っている文化人類学者、故・岩田慶治が日々やっていたこと。 僕はそこからヒントをもらって、もう15年ぐらい前だけど、ネットで日々連載していたことがある。 それを復活させてみよう。 僕の断片的思考訓練である。 スーパースクールのオンラインサロン内で公開していたものを 中心に、「今」のものや、昔書いたものも、このマガジンにまとめていきます。 週一回の投稿で、1~3記事ずつ投稿します。マガジンの内容は有料版に移行しました。無料で読める記事もあります。

最近の記事

鉄斎の絵を迷子にならずどう旅するか?京都近代美術館にて/一日一微発見443

僕は子どもの頃、阪急宝塚線の蛍池に住んでいたので、うちの父親が初詣につれて行くのは、西宮近くの門戸厄神(東光寺)と宝塚近くの清荒神(清澄寺)の2ヶ所だった。 それはうちの本家が甲東園にあったことも関係していたと思うが、京阪神の商人たちがこぞって参拝する霊地だった。 そして清荒神には、鉄斎の絵のコレクションがあって公開していた(正式に美術館になるのは1975年である)。 当然ながらこちらは子ども故に、鉄斎のなんたるかなんぞはわかるはずもない。 しかし鬱蒼とした森の中に鎮座し

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    • 「野草」であることの戦略・横浜トリエンナーレをめぐって/一日一微発見442

      「革命」や「前衛」が失効してしまった今だからこそ、やはり「アート」と「政治」について考えなければならないなと、横浜トリエンナーレの会場を歩きながら思っていた。 リウ・ディンとキャロル・インホワ・ルーの2人がディレクターをつとめる横浜トリエンナーレは「野草:ここで生きている」というタイトルのもとに93組のアーティストたちが集められている。野心的なキュレーションだ。 とりわけ美術館入り口のフリーゾーンは、アナーキーな雰囲気があり、よい出だしだ(ヨアル・ナンゴやピッパ・ガーナー

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      • junaidaの新作アートブック『 LITTLE LIGHT』呪力の結晶だ/一日一微発見441

        junaidaの詩画等集『ともしび』の絵だけをフィーチャーした限定出版の大判のアートブック『 LITTLE LIGHT』を現在、制作している。 6月頃にはお目にかけられるだろう。 その制作過程で、あらためて彼の「絵の力」に圧倒され、考えさせられた。 彼とは知りあってもう15年ぐらいたつ。その間に、彼の絵をめぐる状況は一変した。 だが、僕にとっては、彼の絵は変わらない。 しかし彼の作品は「初期」には、「イラスト」としてあつかわれがちだったし、そして、ある時には「絵本作家」

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        • クリストファー・ノーランの「オッペンハイマー」は賞賛に値するか?/一日一微発見440

          僕は今でこそ「アート」の人だと皆思っているが、基本的に編集者だし、広告やキャンペーンのプランニングやクリエイティブディレクターとしての仕事をしてきた。その中でも「音楽」との仕事は大きい。 とりわけ「HIROSHIMA1987-1997」というチャリティコンサートのヴィジュアルワークに10年間にわたって参加したことは大きな体験だった。 それは多くのミュージシャンが出演し、コンサートの売り上げを原爆被災者の特別養護老人ホームの建設に寄附するというものだった。当時僕は、ロックアー

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          佐藤ヒデキ『OSAKA 大阪残景』/目は旅をする085(都市と写真)

          佐藤ヒデキ『OSAKA 大阪残景』 (アートビートパブリッシャーズ刊行) この写真集『OSAKA 大阪残景』は、1989年から90年代初めにかけて写真家・佐藤ヒデキ(1953年生まれ)が撮影した大阪の環状線の内側の街の風景をフィルムで撮影した195点の写真から51点をセレクトし構成した。 企画・編集・発行はワタクシ後藤繁雄(1954年生まれ)が行った。写真は「アカ」「アオ」「キイロ」の3冊に分冊され、収録された写真は3冊全て違う。「信号機の3つの色」に分けた意図は、別に無

          佐藤ヒデキ『OSAKA 大阪残景』/目は旅をする085(都市と写真)

          春の嵐の翌朝に/一日一微発見439

          僕らが棲む、仮の家は窓が大きい。 居住空間は、可能な限り小さくコンパクトにして、逆に外景をたくさんとり入れたかったからである。 だから外のデッキも部屋という考えだし、 浜名湖に面した前の庭、バラや樹木が並ぶ塀沿いのサイドの庭も居住空間。外に食事のテーブルを置くことを前提に考えた。 そして去年から格闘している裏に続く野原のような場所、そこに野趣あふれるボーダーガーデンをどうやってつくれるか最近の僕の課題である。意図して、野辺の花や雑草っぽい場所を作ること。 さて、この数日は

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          ザネレ・ムホリ「Zanele Muholi」/目は旅をする084(私と他者)

          ザネレ・ムホリ「Zanele Muholi」(Tate刊) コンテンポラリーアート、そしてコンテンポラリーフォトを考える時に、それらがたどって来た非対称的(アシンメトリー)な歴史(美術史/写真史)をリシンクすることは、避けて通れない必須課題であり、作業である。 西洋の白人男性、それもストレートの性意識の眼差しによって、多くの表現がうみだされ、文脈化、ひいては歴史化、価値の制度化、権力化が行われてきた。近代国家の多くが、奴隷制や植民地支配による搾取で成り立ってきたのだ。

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          ゴダールの遺作『奇妙な戦争』は、最高のコラージュである/一日一微発見438

          2022年にゴーダールが「自死」して、もはや生々しくゴダールを経験することなどないかもしれないと思っていたが、こうやって「新作」の上映場所を求めて銀座を歩くことがあるとは、なんと僥倖だろうか。 とわいえ、平日の寒のもどりの月曜日の夕方(一日二回上映)ということもあり、たどりついてチケットカウンターで、「座席指定」してみたら、30分前だったが、僕以外の客は1人だった。受付嬢は、クスクス笑った。 ミニシアターではない。外はコロナあけの人々で、けっこうごったがえしているというの

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          展覧会「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」は何を自問する?/一日一微発見437

          国立西洋美館65年目にして初めての「現代美術」展を見に行く。 最初に感想めいたものを言うならば、よくできたキュレーションであり、しっかりとした見ごたえがある。しかし同時に多くの「現代美術家」をまきこみながらも、あたりまえの自問自答におちいっている展覧会ではないか。 問題設定がどうなのか、という根本的な疑問を感じた。 キュレーションの意図は明解である。 「中世から二十世紀前半までの西洋美術のみを収蔵/保存/展示している国立西洋美術館には、いわゆる「現代美術」は存在しません。

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          日本画家・福田平八郎の誰も語らない「別次元の絵画」について/一日一微発見436

          福田平八郎の没後50年の大回顧展が大阪中之島美術館で開催されたので見に行った。 17年前には、京都の近代美術館で回顧展を見たのだが、今回はさらに新しい発見や、感じるものが沢山ありうれしかった。 平八郎は1892年に生まれ1974年に82才でなくなった。大分生まれだが、彼は京都市立芸大で日本画の先生もしていたこともあるし、残された文章やインタビュー(河北倫行によるものなど)を読んでも、ああ、感覚やリズム、時間が京都の人、京都画壇の人だったのだなあと思う。 小野竹喬は1889

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          マティスからケリーへ「ひらべったさ」の快楽/一日一微発見435

          まあ今から書くのは乱暴な論かもしれないし、思いつきの域を出ないかもしれないが、書いておきたい。 先日、新美術館にマティスの「自由なフォルム」展を見に行った。ちょっと前に行った上野の都美館でのマティス展より、出品作や構成よりもはるかによくて気持ちがよくなる展覧会だった。 今回の展覧会が前回のポンピドー所蔵展とちがうのは、いわゆる「洋画」や「デッサン」時代のマティス重視ではなく「切り絵」とヴァンスの礼拝堂のカタチと光に重心をおいているところだろう。 執拗にデッサンをくり返し

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          中平卓馬が今つきつけてくること/一日一微発見434

          中平卓馬の20年ぶりの大回顧展『火一氾濫』は、中平の写真とテキストが発表された当時の雑誌を徹底して集め展示するというキュレーションにより、実に見ごたえがあり、かつ、時代の文脈で写真を考えるすぐれた「写真展」である。 中平にとっての写真は、単なる「写真作品」ではない。彼の写真は、近代化の中で自からを含む風景のコンフォルミズムや制度化に対する不快、反抗、闘いの作業の産物であった。 今回の展示で強く思ったのは、やはり、中平の「写真」は、中平の個人に帰して考えてはダメだということ

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          旅と文のこと。『坂本図書』にみちびかれて石川淳へ/一日一微発見433

          坂本龍一さんの『坂本図書』は、不思議な導きがある本で、まとめて読んだあとも、ふと気になってひろい読みしてしまう。それは「書評集」とか、目的があって書かれた(語られた)のではなくて、日々の坂本さんの「精神の運動」が、本や映画の話を通して記述されたフラグメントだからである。 一本づつの原稿のならびは、偶発的なものであり、断続的で、ワープがある。 今日もひろい読みのために本を開けた。 最初から二番目に収録されているエッセイがジャック・デリダの『法の力』だ。これは2018年のトラン

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          サム・フォールズ『THE ONE THING THAT MADE US BEAUTIFUL』/目は旅をする083(ニューネイチャー)

          サム・フォールズ『THE ONE THING THAT MADE US BEAUTIFUL』 (G/P+abp刊) 彼は野外で、感光溶剤を染み込ませた布のキャンバスを野っ原に広げて、その上に、植物の花や葉、茎や蔓を配置して、長い特には、1年間も放置したままにする。大型の日光写真と言っても良いだろう。最近では、布の上に置いた植物の上から顔料をちらし、それが幾層にもなった美しいレイヤーからなる「絵画」や、陶板にも発展させているが、基本的には写真の考えの発展形態と言ってもよい。

          サム・フォールズ『THE ONE THING THAT MADE US BEAUTIFUL』/目は旅をする083(ニューネイチャー)

          ル=グインの「ストーリーテリング」は僕の大きな宿題/一日一微発見432

          アート思考について避けて通れないのは、「ストーリーテリング」のことだ。「物語」「ナラティブ」とも言う。 「物語」は今や、コンテンポラリーアートにおいて重要なメソッドになったが、「物語」は相変わらず「文学」が専売特許みたいな顔をしていて、アートは分が悪い。 それは勿論、グリーンバーグ流のフォルマリズム至上主義からすれば、ストーリーテリングという手法が有効になるなんて、許せないことだったろう。崇高を目指す純粋芸術からすれば「物語」は、俗っぽいものとして扱われる。 しかし、スト

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          オノ・ヨーコを目撃しなくてはならない/一日一微発見431

          ロンドンのTate Modernで、オノヨーコの包括的な展覧会「MUSIC OF THE MIND」が始まった(9月1日まで)。 もちろん現場にはまだ行けてはいない。 だが、ネットでその詳細(約200点の作品が集められているという)を知るにつれ、そして、この 戦争と分断の状況の真っ只中において開催されることを考えると、目撃しなくてはならないという気持ちがつのる。 彼女はもう 91才だし、この展覧会が生前最後のメッセージとなるかもしれない。 展示作品は1960年代のフルクサ

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